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Tuesday: Asian Explosion
爆発するアジア
11月3日に迫った米大統領選挙の投開票。インドにルーツをもつ民主党の副大統領候補の存在はもとより、米国で存在感を高めるインド系移民の現在からインド市場への影響まで、Quartz Indiaのレポートをお届けします。
今年8月。上院議員のカマラ・ハリス(Kamala Harris)がジョー・バイデンの“伴走者”に選ばれ、米国のインド系アメリカ人コミュニティは一躍脚光を浴びることになりました。同時に、彼女の出自にも注目が集まりました。
彼女の母親、シャーマラ・ゴパラン(Shyamala Gopalan)はインド・チェンナイ生まれの生物学者で、父親ドナルド・ハリス(Donald Harris)はジャマイカ出まれの経済学者。両親が離婚した後、母親は彼女と妹を黒人教会のメンバーとして育てると同時に、彼女をヒンドゥー教の寺院にも連れて行ったといいます。
インド系アメリカ人が米国の全人口に占める割合は、わずか1.5%に過ぎません。が、同国の政治に与える彼らの影響は不釣り合いなほど大きいといえます。インド系アメリカ人は、アメリカの移民グループの中で最も裕福で、最も教育を受けたグループのひとつなのです。
Presence in American politics
インド移民の存在感
インド系アメリカ人の人口は、約400万人(2015年時点)。米国で最も急速に成長している移民グループのひとつであり、移民グループとしては、メキシコ系に次いで2番目に大きな存在です。
転換点は、55年前にありました。1965年の「移民国籍法」が成立するまで、移民制限は非常に厳しく、インド系アメリカ人の数はわずかだったのです。ところが、同法では「高度な技能をもつ労働者」が優先されたため、アジアからの移民が劇的に増加しました。移民の第一波は、医師や教育者、管理職など専門職に就く中流階級が主でした。
歴史を遡ると、アジア系アメリカ人として初めて米国下院議員に当選したのは、1957年のダリップ・シン・ソーンド(Dalip Singh Saund)。南カリフォルニア選挙区出身で、帰化したインド系アメリカ人である彼は、1962年、脳卒中で倒れて再出馬がかなわなくなるまで、2期の当選を果たしました。
2人目のインド系アメリカ人議員誕生までは、しばらくの年月を要しました。2005年、インド系アメリカ人であるピユシュ・“ボビー”・ジンダル(Piyush “Bobby” Jindal)が下院議員に選出(2008年にルイジアナ州知事に就任)。2011年には、プラミラ・ジャヤパール(Pramila Jayapal)がインド系アメリカ人初の女性下院議員になり、現在のところ、上院のカマラ・ハリスを含む5人のインド系アメリカ人議員が数えられます。
先述したとおり、インド系アメリカ人は、高収入で教育を受けた移民グループであるともいえます。ゆえに、政治キャンペーンにおいて、彼らは潜在的な寄付者として非常に魅力的な存在となります。今回の選挙シーズンでも、彼らの財力は重要視されており、共和党、民主党ともに、特に選挙戦が激化している地域で、彼らに助力を仰ごうと熱心です。
Leaning Democratic
民主党寄りに
裕福なインド系アメリカ人は、共和党に投票する傾向があるといわれてきました。実際、2020年2月、ドナルド・トランプがインドを訪問した際には、インド首相のナレンドラ・モディの出身州であるグジャラート州でも大歓迎を受けています。
共和党は、ロナルド・レーガン大統領の時代(任期:1981〜1989)から、多様な政治的傾向をもつ人々を受け入れようと、「大きなテント(Big Tent)」戦略を試みてきました。このアプローチは、(少なくとも表向きは)これまで疎外されてきたコミュニティ──ヒスパニックのほか、発展途上国の人々を含む有色人種の移民グループ──に対して、共和党の魅力を広げるべく設計されていました。前述したボビー・ジンダルをはじめ、米国連大使を務めサウスカロライナ州知事ともなったニッキー・ランダワ・ヘイリー(Nikki Randhawa Haley)らを、共和党候補としてフックアップしてきたのです。
もっとも、その試みも、特にトランプの下においては機能しているといえません。今、インド系アメリカ人の大多数の間では、民主党支持の傾向が強くみられます。
2012年にPew Research Centerが行った調査によると、インド系アメリカ人の65%が民主党員であるか、民主党支持の傾向をもっているという結果が出ています。さらに最近、2020年に政治学者のカーティック・ラマクリシュナン(Karthick Ramakrishnan)が行った調査によると、インド系アメリカ人の54%が民主党候補であるバイデンを支持しており、共和党の現職、トランプを支持するのは29%だとされています。
インド系アメリカ人の民主党支持率が圧倒的に高いのには、いくつかの理由が考えられます。過去数十年の間、民主党は移民やマイノリティをより迎え入れてきました。加えて、多くのインド系アメリカ人の政治傾向は、よりリベラル寄りです。実際、先の大統領選ではインド系アメリカ人コミュニティの84%もの人が、バラク・オバマに投票しているのです。
ただし、同じ傾向が繰り返されるかどうかはまだわかりません。では、一方のインド株式市場には、どのような変化が予想されているのでしょうか。
Indian stock markets will be…
彼らには勝ちしかない
2016年11月9日、インドのベンチマーク指数「SENSEX」は、初値取引時間中に1,600ポイントも急落しました。この急落の背景には、当時の米大統領選におけるトランプの“驚きの勝利”があるのは間違いないでしょう。インドの投資家は、ヒラリー・クリントンの勝利を期待していたのです。
それでは、11月3日に行われる2020年の米大統領選挙では、どうでしょう。今回は、4年前との大きな違いとして、「結果がどうであれ、インド市場が勝利者として浮上する」と予想されています。
選挙の結果として想定される結果は、次の3つです。まず、民主党が両院を制してジョー・バイデンが勝利する。次に、現状維持(議会が分裂した状態でトランプ再選)、そして、民主党が下院、共和党が上院それぞれの議席を維持したままバイデンが勝利する、というものです。
UBSグローバルリサーチのアナリストは、現状維持だけでなく、残りの2つの結果においても、インドは利益を得ると予測しています。
- バイデンが両院を制して政権に就いたら:インドは「米国の貿易政策がより有利になる可能性がある」という恩恵を受けることになる。これによりインドの投資家は勢いづき、市場も押し上げられる可能性が高い。
- どちらが勝つかにかかわらず:米連邦準備制度理事会(FRB)の低金利政策は(特に短期的には)継続する。2022年、現在のFRB議長ジェローム・パウエル(Jerome Powell)の後任に就くのは、バイデンが勝利した場合はハト派の人物に。トランプが勝利した場合は、マイナス金利も視野に入れた議長が指名される可能性がある。インド市場にとっては、インドの株式や債券市場に安価な資本が継続的に流入することになるので、大きなプラスになる。
資産運用会社Invescoのストラテジスト、デビッド・チャオ(David Chao)は、「米国の大統領選挙は、アジア太平洋市場の資金流入にプラスの影響を与えるだろう」と述べています。
「選挙によるいったんの盛り上がりが終われば、投資家は、2021年に向けた経済の改善やCOVID-19ワクチンの可能性をはじめ、“経済の基礎的条件”に再びフォーカスすることになる。これにより、アジアにおける新興市場の株式は、年末に向けて現在の水準よりも強まると予想している」
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- デジタル人民元の合法化へ動き。中国人民銀行(PBOC)は新たな改正案でデジタル人民元を合法化し、それに対抗する者が発行するデジタル通貨(人民元基軸のステーブルコイン)の流通を禁止する方針を示しました。PBOCが「人民元を脅かす」と見ている他のデジタル通貨も含まれる可能性も指摘されています。PBOCデジタル通貨研究所のトップは、人民元の潜在的な問題を認めながら、中央銀行による監視の強化も必要になるとの見解を示しています。
- Amazonを超えたFlipkart。ヒンドゥー教の重要イベントが続くホリデーシーズンに突入したインド。Flipkart(フリップカート)とAmazon(アマゾン)は10月15日から、それぞれほぼ同時にホリデーシーズンの主力セールイベントである「Big BillionDays」と「GreatIndian Festival Sale」を開始。両者合わせてわずか4日間で35億ドル(約3,670億円)を売り上げました。Flipkartはアプリのダウンロード数を昨年より71%伸ばしています。
- ホテル購入にご執心。「アルコール王」の異名をもつチャルーン・シリワダナバクディ(Charoen Sirivadhanabhakdi)の財閥TCCグループは、傘下の不動産部門AssetWorld Corp Plc(AWC)を通じて、資金繰りに苦しむ“病んだ”ホテルの購入に勤しんでいます。AWCは2021年〜25年にかけて300億バーツ(約1,000億円)を投じる計画で、バンコクやプーケットなどで売りに出されている100以上のホテルから問い合わせがあったことを明かしました。
- “とんでもない”税金。Samsung Group(サムスン・グループ)創業者の三男だった李健熙(イ・ゴンヒ)会長の死後、動揺が広がります。韓国の相続税率は50%で、世界で最も高い税率の1つ。推定約210億ドル(約2兆1,900億円)の遺産にかかる相続税は法外なもので「非中核企業の一部の株式を売却せざるをえないのではないか」と専門家に指摘されています。ともあれ巨大企業の未来は、株価操作などの罪で起訴され裁判を待つ現在のボス、李在鎔(イ・ジェヨン)の手の内にあります。
(翻訳・編集:鳥山愛恵、年吉聡太)
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