[qz-japan-author usernames=”atimsitqz”]
Tuesday: Asian Explosion
爆発するアジア
今朝のDaily Briefでもお伝えした通り、米国では「COVID-19対策チーム」が発表されました。バイデン初手のチーム編成に名前を連ねたのは、オバマケアを推進したインド系アメリカ人でした。 ※AMメールでの予告と異なる内容でお送りします。
選挙での勝利が告げられてから最初の営業日となった9日(現地時間)。早くもこの日、“次期”政権は、前任者よりも多様性があることを証明したかっこうです。
ジョー・バイデン次期大統領が立ち上げたCOVID-19タスクフォース。その要職に、公衆衛生局元長官のヴィヴェック・マーシー(Vivek Murthy)が就くことが明らかになりました。
マーシーにとっては、トランプ政権から辞任を求められた2017年以来の、政策の主流への返り咲きを意味します。
The great Indian American dream
インド系米国人の夢
タスクフォースのメンバーに選ばれた人びとを挙げてみましょう。
- デビッド・ケスラー(David Kessler)共同議長、元FDAコミッショナー
- マルセラ・ヌニェス・スミス(Marcella Nunez-Smith)エール大学健康公平性研究担当副学部長、共同議長
- ヴィヴェク・マーシー(Vivek Murthy)共同代表、元外科医長
- ルチアナ・ボリオ(Luciana Borio)元FDAコミッショナー補佐官
- リック・ブライト(Rick Bright)元BARDAディレクター
- ジーク・エマニュエル(Zeke Emanuel)オバマ前政権の医療政策アドバイザー
- アトゥル・ガワンデ(Atul Gawande)ブリガム・アンド・ウィメンズ病院外科教授
- セリーヌ・ガウンダー(Celine Gounder)ニューヨーク大学グロスマン医学部助教授
- ジュリー・モリタ博士(Dr. Julie Morita)元シカゴ公衆衛生委員
- マイケル・オスターホルム(Michael Osterholm)ミネソタ大学感染症研究・政策センター長
- ロイス・ペース(Loyce Pace)グローバル・ヘルス・カウンシルのエグゼクティブ・ディレクター
- ロバート・ロドリゲス博士(Dr. Robert Rodriguez)UCSF救急医学教授
- エリック・グースビー(Eric Goosby)元ライアン・ホワイトケア法ディレクター
なかでもマーシーの医療政策への復帰は、2014年、当時副大統領だったバイデンが主宰した式典において第19代公衆衛生局長官に任命されたときを彷彿とさせます。
当時37歳だったマーシーは、“偉大なるインド系アメリカ人”の夢を象徴するような存在でした。
A humble, farming family in India
インドの農家から
マーシーのルーツを辿れば、インド南部カルナータカ州のマンダヤ地区にあるハレギア(Hallegere)という村にまで遡ります。医師だった彼の父親は農民の家で生まれ育ち、英国で数年間過ごしたのち、米国に移住しました。
2015年4月に開催された公衆衛生局長官の任命式において、マーシーは、その出自と今の自分とがいかにつながっているか、次のように語っています。
「わたしの家族が、先祖代々生きてきた村から離れるとは誰も思いもしなかったはずです。父はインドの田舎の農家の息子で、彼も、そして私も、農民として生きていくはずだったのです。しかし、祖父は息子に教育を受けさせようと──たとえそれで借金を背負うことになったとしても──、意志を貫きました。それがなければ、わたしたちがあの村を出て世界に出て行くことは一切なかったでしょう」
また、当時のバイデンは、次のように述べています。
「これは、この国がかくも“例外的”な国であることを示す一例といえるでしょう。インドの農家の孫が、米国大統領から直々に、この国および世界中の人々の健康と福祉を守ることを託される──なんとも素晴らしことです」
英国で生まれたマーシーは、父ハレギア(Hallegere)、母マイトリエ(Myetraie)、そして妹の(のちに医師に)ラシュミ(Rashmi)の3人とともに米・フロリダ州マイアミで育ちました。ハーバード大学を卒業し、イェール大学医学部で医学博士号を、イェール大学経営大学院で医療政策のMBAを取得しています。
The affordable healthcare man
オバマケアの体現者
オバマ政権下では、アフォーダブルケア法(Patient Protection and Affordable Care Act、通称「オバマケア」)を声高に支持していたマーシーですが、トランプ政権下では弱体化をやむなくされました。彼は、適正価格の医療の意義について、自らの経験を踏まえて広く語ってきました。
「貧困であること。それは実に、子どもたちの5人に1人に影響を与えていますが、“健康な人”と“そうでない人”を決定する上で大きな要因となります。わたしたちが暮らすこの偉大な国、わたしの両親が海を渡り国境を越えてやってきたこの国では、それは受け入れられていいはずがない」
マーシーは、2015年4月の式典の中では次のようにも語っています。
「こうした現実は、わたしたち皆を害しえるものです。経済や教育システム、労働生産性、さらに国家安全保障さえも脅かしています。正義から離れ、道徳的な宇宙の弧を曲げてさえいます。要は、健康の公平性とはすなわち、市民権の問題なのです」
ただし、2014年、任命される前のマーシーは、上院において、全米ライフル協会からの猛烈な反対を受けていました。それは、マーシーが銃による暴力を「公衆衛生上の脅威」と見なしていたからです。
公衆衛生局長官としての務めた約3年の間、彼はジカウイルスとエボラウイルスの抑制に取り組む米国のイニシアチブに取り組みました。また、妹とともに、インドと米国においてP2PのHIV教育プログラム「ビジョンズ(Visions)」を共同設立しています。
2017年、その在職期間が突然終了したあとには、社会的不況の危険性および人同士のつながりの重要性をテーマに『Together』という本を執筆しています。
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- カマラ・ハリスの勝利に感化される。男性支配に苦しむインド政界の女性たちは、米国副大統領に初めて女性が就任するニュースを歓迎しています。インドでは1966年に初めて女性が首相に就任しましたが、実際に政治の世界で活躍することは困難です。ボリウッド女優出身の政治家ウルミラ・マトンドカーは、米国が世界で「最も人種差別的」かつ「ミソジニー的」な側面を見せていた時期にこの選挙結果が出たことが重要だと語ります。
- 現代自動車、無人航空機を商用化へ。次世代の成長分野に位置付けられる“空のモビリティ”。韓国では、垂直離着陸方式の中型貨物を運ぶ無人航空システム(UAS)の実用化に向け、国内企業から開発参加の応募を受け付けています。来年前半にもコンセプトを発表する予定で、同システムのノウハウを蓄積し、「空飛ぶタクシー」などアーバン・エア・モビリティ(UAM)市場を積極的にリードしたい姿勢がうかがえます。
- ポルノサイト接続停止で国民激怒。タイのデジタル経済社会大臣は、違法なポルノサイト閲覧を取り締まろうと、すべてのプロバイダーと携帯電話事業者に対し「Pornhub」へのアクセスをブロックするよう命令。しかし翌日、彼は賞賛を受ける代わりに、人びとの権利を侵害したとして批判を受けました。一方、この問題を政治に結びつけるべきではないという声も。ちなみにPornhubがブロックされた直後から、規制をすり抜けてアクセスする方法がSNSで広まっています。
- 米次期政権が直面する、インドネシアをめぐる中国の影。新型コロナのワクチンや経済的支援によって、東南アジアとの結びつきを強力なものとした中国。先月、マイク・ポンペオ米国務長官は東南アジアを歴訪し、中国を牽制する姿勢をアピールしましたが、米国は7月と8月にインドネシア領内に哨戒機P8を着陸させ給油する許可をインドネシアに何度も拒否され失敗に終わっています。バイデンが次期大統領に決まり、米国の外交政策の趣旨と内容の両方に変化をもたらす可能性はあるものの、見通しは不透明のまま。中国の息のかかったインドネシアを見極め、ジョコ・ウィドド大統領にとって内政の利益になるアプローチを米国は模索しなければなりません。
(翻訳・編集:鳥山愛恵、年吉聡太)
👤 アカウントページで登録メールアドレスを変更いただいても、ニュースレターのお届け先は変更されません。メールアドレス変更の際にはアカウントページで設定後、こちらのアドレスまでご連絡ください。
🎧 Podcastも、どうぞチェックを。Spotify|Apple
📨 Twitter、Facebookでも最新ニュースをお届け。
👇 のボタンから、このニュースレターをTwitter、Facebookでシェアできます。ニュースレターの転送もご自由に(転送された方へ! 登録はこちらからどうぞ)。