Culture:チェスが今、クールになった理由

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Deep Dive: New Cool

これからのクール

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Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週金曜夕方の「Deep Dive」では、今、そしてこれから世界で起きるビジネス変革の背景にあるカルチャーを深掘りします。ネットフリックス(Netflix)のシリーズ『クイーンズ・ギャンビット』のおかげで、チェスが再びクールに。ストリーミングサービスは、売り上げを牽引するプラットフォームになりつつあるのでしょうか? 英語版はこちら(参考)。

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大ヒットしたNetflixのシリーズ『クイーンズ・ギャンビット』のおかげで、チェスが再びクールなゲームと認識されるようになっています。チェスの小売業やアプリメーカーがそのトレンドの恩恵を受ける一方、他のブランドは、ストリーミングサービス自体が売り上げを牽引する力を持っていることに注目していることでしょう。

PLAYING CHESS IS BOOMING

チェスがブームに

市場調査会社NPDによると、長い歴史を持つこのボードゲームの売上高は、ドラマがNetflixで10月23日に公開されて以来、125%増加しました。玩具会社の一つであるゴリアテ・ゲームズ(Goliath Games)は、チェスの売り上げが昨年の同時期と比べて1,000%以上増加していると、米メディア『NPR』に語りました。また、Chess.comのiPhoneアプリはこれまでは無名だったのにも関わらず、直近でダウンロード数は急きょチャートのトップに躍り出るほどになりました。

Netflixは旧来の広告モデルを採用せず、今後も導入しないことにこだわっていますが、マーケティング業界は、サブスクリプション以外の別の収益源が必要であると判断した場合、同社に大きなチャンスがあると見ています。

Netflixは、すでにブランドパートナーシップや消費者向けの製品を通じて広告主と提携していますが(『ストレンジャー・シングス 未知の世界 3』では、コカ・コーラとの契約で1985年に発売された「New Coke」をリバイバルさせました)、そうした稀なケースでも、お金のやり取りは発生させていません。

とはいえ、マーケティング業界は、デジタル・プロダクトプレイスメントや一時停止広告(Pause Ad)といった革新的な広告フォーマットは、いずれ無視できないレベルのチャンスを提供するとみています。それも、Netflixがユーザーに約束していた広告のないエンターテイメント体験を反故にしない形を保ったままで。

たとえば、『クイーンズ・ギャンビット』が、あるチェス企業によって「スポンサード」されていた場合、登場キャラクターが特定のブランドの駒を独占的に使用していた場合を想像してみれば、わかりやすいのではないでしょうか。

GREAT STORIES

ドラマの魅力

PHOTO VIA NETFLIX
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1983年に発表されたウォルター・テヴィス(Walter Tevis)の同名小説を基にした『クイーンズ・ギャンビット』は、米・ケンタッキー出身の孤児でチェスの天才、ベス・ハーモン(Beth Harmon)を主人公にした物語です。男性優位のチェス界において、彼女が依存症に苦しみながらも華やかなスターへの道を切り開いていくストーリーになっています。

ニールセン(Nielsen)によると、『クイーンズ・ギャンビット』は公開翌週に、(新シリーズと『The Office』のような古いもの両方が含まれているリストの中で)世界で最も視聴されたストリーミング番組となりました。批評家たちは、今年最高のショーの一つだと言っています。

確かに『クイーンズ・ギャンビット』は、思いがけない奇跡を引き起こし、チェスの売り上げを押し上げました。まず、このドラマは本当に素晴らしい(そうでなければ、チェスが売れることにもならなかったでしょう)。また、誰もが知っているゲームであるにもかかわらず、実際にプレイできる人は少ないし、かつうまくプレイできる人もさらに少ないことも相まって、消費者の好奇心とのギャップを生み出し、より多くの売り上げにつながった可能性があります。

そして、消費者がパンデミックの影響で家に閉じこもり、家で楽しめる新しいカタチの娯楽を模索している最中だったという「絶好のタイミング」にも恵まれました。

HOW TO DEAL WITH Brands

ブランドの扱い方

チェスがNetflixの影響を大いに受けているのは明らかですが、別の作品でも同じような事例があります。NPDによると、2020年3月にNetflixで公開された『バービー・ドリームハウス・アドベンチャーズ』のシーズン2と、2020年9月に公開された映画『バービー・プリンセス・アドベンチャー』の人気による後押しで、Netflix上で公開されている全てのバービー作品の視聴時間数が増えているという調査結果が出ています。合わせて、おもちゃの売り上げも伸びているといいます。

こういった成功例は、パンデミックではない通常時に、他の類の商品でもうまくいくという保証はありません。とはいえNetflixは、全世界に抱える約2億人の加入者を武器に、ブランド企業がオリジナル作品上での露出を増やしたいと思ったときに高いフィーを取ることだって可能です。そして、広告主は、(シリーズへの露出が)売り上げ増につながるチャンスがあることが証明されたので、ブランド広告をNetflixに受けいれてもらおうと働きかけることになるでしょう。

人気ドラマの『ストレンジャー・シングス』がリーボック(Reebok)提供で届けられたり、一時停止時にキャデラック(Cadillac)の広告が表示されるような状況を想像してみてください。次に、Netflixオリジナル作品の影響で、ある商品の売り上げが急増するような事態が発生すれば、Netflix自身もその儲けの一部を得るべきだと感じるかもしれません。


This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

REUTERS/Hannibal Hanschke/File Photo
REUTERS/Hannibal Hanschke/File Photo
  1. テキサスへ旅立つ。シリコンバレーはもはや、「過去のもの」になっているのかもしれません。コロナウイルス規制をめぐってカリフォルニア州当局者と揉めていた、テスラ(Tesla)のイーロン・マスク(Elon Musk)がいよいよカリフォルニアからテキサスへ向かいました。同社はすでに、オースティンに新しい工場を建設する計画を発表しています。
  2. 悪質なAIボットがTelegramに。ディープフェイクの技術を使って、女性の写真から衣服を取り除くアプリ「DeepNude」。この悪質なアプリを使って作成された画像が今、Telegram上で多く見つかっており、ここでは10万4,000人以上の女性のフェイクヌードが存在しています。同システムでは、リクエストに応じてヌードを生成するAIボットが中心となって、毎日何万人もの加入者に新しい画像を送信しているといいます。
  3. クリスマスといえば…。Rolling Stone』の最新「Top 100 Songs」の上位には、クリスマスソングが並びました。マライア・キャリー(Mariah Carey)の名曲「All I Want for Christmas Is You」が、2,200万以上のストリーミングで1位に。2位は、ブレンダ・リー(Brenda Lee)の 「Rockin’ Around the Christmas Tree」(1,890万回)、3位はボビー・ヘルムズ(Bobby Helms)の 「Jingle Bell Rock」(1,800万回)が続いています。
  4. 「超高級」ヴィラの実態とは? 富裕層が過ごすヴィラでは、豪華な敷地、プライベートシェフ、超高級な食事を楽しむことができます。アイコン・プライベート・コレクション(Icon Private Collection)では、ユーザーは1泊1万ポンド(約140万円)からの予算でヴィラを検索することが可能。ウルトラ・ヴィラ(UltraVilla)は、セント・マーチン島から南アフリカのワインの街としても知られるフランシュフックまで、さまざまなラインアップを用意しています。

(翻訳・編集:福津くるみ)


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