Deep Dive: New Cool
これからのクール
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Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週金曜夕方の「Deep Dive」では、今、そしてこれから世界で起きるビジネス変革の背景にあるカルチャーを深掘りします。今日は、リモートワーカーの新たな必須アイテム「リングライト」をめぐるあれこれをお届けします。英語版はこちら(参考)。
「リングライト」とは、ポートレイト写真やYouTubeのメイクアップハウツー動画などの撮影でよく使用されるドーナツ型のライトのことですが、今、リモートワーカーにとって重要なアイテムになっています。もっとも、エルゴノミクスチェア、PC用マイク、またはプリンターのような他の「WFH投資」と比べると、リングライトは購入するまでもない、ちょっと無駄な投資に思えてしまう人もいるでしょう。
でも、そんなことありません。ライターのアマンダ・マル(Amanda Mull)が『The Atlantic』で主張しているように、「よい照明はプロフェッショナルの証」なのです。
「パンデミックの影響で、同居している家族やルームメイトから離れ、地下室やアパートの隅っこで作業をしてきたあらゆる職業の人たちは、この1年でさまざまな『写真入門講座』のようなシチュエーションにふれ、重要なことを学ぶことになりました。それは、常に自然光に頼れるわけではないということ。人びとがZoom上においてその多くの時間を過ごすなか、『プロフェッショナリズム』とは、その空間を最大限にコントロールすることを意味するのです」
it’s time to get a ring light
ライトを買うべき理由
優れた照明という「美徳」は、科学的にも裏づけられています。たとえば、『Journal of Neuroscience』に掲載された2001年の研究は、照度の低い画像を見ることでメラトニンの分泌が誘導され、眠気や退屈感が引き起こされることが指摘されています(Zoom疲れに関連する事例)。
モニターに映る画像の色相や色温度も重要です。リングライトのモデルの多くは、それらをボタン操作ひとつで調整できるため、プレゼンターを務める際にはライトの暖かさを調整することで、ミーティング全体のトーンを整えることも可能です。
リングライトはそもそも1950年代、歯科医が患者の口の中を覗き込むために使用されていました。それが今や、よりよいビデオ会議を実現するためのDIYソリューションになっています。見苦しくキツめな影を落としがちなデスクライトとは異なり、顔全体をソフトで均一な光で照らすリングライトは、聴衆の注目度を高めるのに役立ちます。
ビューティハウツー動画用の「ディーバ・リングライト」(200ドル)から、プロの写真家も好んで使う300ドルのモデルまで、オプションもさまざま。Zoom通話であれば、標準的な20ドルのデスクトップ用リングライトで十分ですし、丸い形が好みではないという向きには、長方形のライトもあります。
The dread of “ring light” eyes
映り込むリングライト
人びとが「スプレッツァトゥーラ(sprezzatura; イタリア語で「楽にまとめられているように見える」という意味)追い求めるあまり、一部の懐疑的な人たちのなかには「リングライトアイ」への恐怖も生まれています。
リングライトを使用している人の瞳孔に反射して見える白い光(キャッチライト)は、多くのファッショニスタが好むところです。しかし、パンデミックの影響で当たり前になったリモートワークにおいて、大半の人は「力の抜けた感じ」で働いています(下半身は、ズボンを履いていない人が多い)。そうした人たちからは、恐れられるアイテムになっているのです。リングライトを使ったときに醸し出される「頑張っている感」ゆえに、同僚の目にリングライトを見つけてしまうことで、ある意味の気まずさが生まれてしまうかもしれません。
また、リングライトの反射は、メガネをかけている人にとってはとくに厄介。映画監督であり、バーチャル授業でリングライトを使用している大学教授のアイダ・アニータ・デル・ムンド(Ida Anita del Mundo)は、最適な角度を見つけるためにライトの配置をさまざま試してみることを勧めています。「頭を少し下に傾けることで、メガネに反射しないようにしています」と彼女は説明。「また、三脚を目の高さよりも高くして、リングライトを少し下に傾けてみるのもいいでしょう」
些細なことと思われるかもしれませんが、よい照明を使うことはプレゼンターと視聴者の双方にとって大きな違いをもたらす、とデル・ムンドは説明します。「教師やプレゼンターとしては、視聴者に自分の表情がはっきりと伝われば、よりエンゲージメントは高まります。プレゼンターの姿が明確に照らされていなかったりきれいにフレーミングされていなかったりすると、(笑えることもありますが)観ている側は気が散ってしかたありません」と彼女は言います。
The TED take
ツールを駆使する
TEDのテレビ部門の責任者であるジュリエット・ブレイク(Juliet Blake)は、よい照明は敬意を表現する方法だと主張しています。「わたしが自分の顔を照明で照らしているのは、虚栄心のためではなく、人びとへの敬意を示すためです。自分のベストを尽くそうとするのが礼儀だと思います」とブレイクは言います。パンデミック初期のころ、TEDは毎年恒例のカンファレンスに取り組むスタッフに、リングライトとマイクを発送しました。社内での電話会議では、カメラの電源を入れて顔を照らすことを選ぶ同僚たちに、ブレイクはしばしば励ましの言葉をかけていたといいます。
ブレイクによると、多くのトップビジネスリーダーは、パンデミック以前から自宅の一部を即席のビデオ出演のために割り当てていたとブレイクは言います。「ビル・ゲイツ(Bill Gates)やアル・ゴア(Al Gore)の自宅設備は素晴らしいものがあります。彼らは自宅にスタジオを持っていて、カメラ映りを見ればその違いは明らかです」と彼女は言います。
ブレイクは、今年TEDが開催したバーチャルカンファレンスで100人近くのスピーカーを撮影してきました。そのなかでも特に科学者たちは、バーチャルなプラットフォーム上で自分たちの研究を発表する際に斬新な手法での発表を楽しんで考えている傾向があったと指摘します。ベルギーのアニメーション会社Studio Blikkの協力を得て、気候変動の背後にある科学を紹介したスウェーデンの気候学者、ヨハン・ロックストローム(Johan Rockström)の場合もそうでした。「科学者の多くは、クリエイティブに考える機会を得られるバーチャルな世界を楽しんでいます」と、ブレイクは言います。
映画『マダム・マロリーと魔法のスパイス』の制作に関わったこともあるブレイクは、バーチャルコミュニケーションの創造的な体験を推奨するひとり。「Zoomに飽き飽きしている人も多いですが、わたしはそんなことはありません」と言う彼女は、バーチャル背景を選択し、光の位置を特定の方法で配置することで、プロとしてどのように見られたいかを恣意的に決められるのだと説明します。「わたしたちは皆、ソーシャルメディアでオンライン上のペルソナを作成していますが、今はホームオフィスでも同じことをしています」。彼女は、充実したZoomのセットアップは、通常の電話と比較して、より有意義なビジネス会話を促進することができると考えています。
メリットがある一方で、Tiktokクリエイターやゲーマーらが愛用し、メイクアップのハウツー動画やファッション撮影現場で使われているこの「アクセサリー」を、真面目に仕事をしている人たちが公然と支持するのは難しいかもしれません。それでも、クリスマスシーズンも近いので、リモートワーカーへのプレゼントを探しているなら、リングライトをプレゼントすれば、彼らがそのエゴを解放する手伝いができるかもしれません。ブレイクは「よい照明は、恥ずかしいものではありません。それは必要不可欠なものなのです」と断言しています。
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- あの超大物の娘がモデルデビュー。故スティーブ・ジョブス(Steve Jobs)の娘の1人(末っ子)であるイヴ(Eve)が、コスメブランドのグロッシアー(Glossier)のホリデーキャンペーンに登場しました。現在、スタンフォード大学の学生だという彼女は、キャンペーン写真で泡風呂でリラックスしてる姿を見せています。
- IPO間近か? リセールプラットフォームを展開するストックX(StockX)は、タイガー・グローバル(Tiger Global)が主導するシリーズEで2億7,500万ドル(約285億円)を調達したことを発表。これにより、同社の評価額は28億ドル(約2,900億円)になりました。この資金は、グローバル展開と製品開発の加速化、StockXのカテゴリー拡大のために使用する意向だといいます。
- 歯の矯正がパンデミックでホットなトレンドに。マスクで口もとが隠れることで、むしろ気にならないのでは?と思われがちですが、それは違うようです。パンデミックでは「家を出ない、外食をしない、オフィスに行かない」という常に歯を磨ける環境にいること、そしてZoomが普及したことでより「歯」を見つめ直すきっかけになっているといいます。
- 「ロックダウン・ロンリネス」からの拒絶。英国の740万人は、「ロックダウン・ロンリネス(ロックダウンによる孤独)」が彼らの幸福に影響を与えていると答えています。心理学者のマリサ・フランコ(Marisa Franco)は「私たちは、寂しいときに人を批判しやすくなる」と話し、悪循環に繋がると分析。とくに、ルールの解釈や遵守の仕方が異なる友人とのあいだでは、不快な思いをさせたりすることなく、どのように拒絶せずに対処すればいいのでしょうか?
(翻訳・編集:福津くるみ)
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