Society:ゲームは次世代のプラットフォーム

REUTERS/PHIL NOBLE

Deep Dive: New Consumer Society

あたらしい消費社会

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Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週木曜夕方の「Deep Dive」のテーマは、「あたらしい消費のかたち」。ソーシャルメディアが支配するアテンションエコノミーを一変させる可能性は「ゲーム」にあるようです。ティーンに大人気のゲームプラットフォームを提供する「ロブロックス(Roblox)」にフォーカスします。英語版はこちら(参考)。

REUTERS/PHIL NOBLE
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ティーンや、その前の世代トゥイーンと一緒に住んでいるのでもなければ、「ロブロックス(Roblox)」の名前に聞き覚えはないでしょう。ひょっとしたら、彼らと一緒に暮らしていたとしても、知らないかもしれません。

ロブロックスが提供しているのは、ユーザーがゲームを手軽に開発できる仕組みと開発されたゲームを遊べるプラットフォーム。この無料プラットフォームでは、毎日3,100万人以上のユーザーが1,200万点にもおよぶゲーム(ロブロックス用語では「experiences」)を利用していて、同社が計画しているIPOに向けた規制当局への提出書類によると、2020年1〜9月の9カ月間、ユーザーは合計時間にして222億時間、1人あたり平均で1日2.6時間を費やしたと述べられています。

あなたがもし親の立場だったら心配になるのかも。でも、ポテンシャルを見出す投資家ならば、とてもワクワクする話題でしょう。

What is Roblox?

ロブロックスとは?

ロブロックスの仕組みを説明しましょう。プレイヤーはアバターを作成し、それを使ってさまざまなゲームにアクセスします。アバターはパーソナライズされており、外見のカスタマイズオプションは無制限(わたしの10歳になる娘の場合、ライフルを掲げながらアイスキャンディーを食べている姿が好きなようです)。

いくつもあるゲームの基本的な構造は共通していて、プレイヤーはヴァーチャルな世界でアバターを操作し、謎を解いたりホテルを建てたりエイリアンを倒したり。成績はバッジで授与され、ホームページにはゲームの記録が残っていきます。ちなみに、ロブロックスのプラットフォームで最も人気のあるゲームには、デジタルペットを飼ったり、バーチャルコミュニティを構築したり、ピザレストランを経営したりするものがあります

ロブロックスを動かしているのは、ゲームをつくる「開発者」です。

開発者には、ロブロックスのプレミアム会員からの収益がシェアされています。購読者は毎月20ドル(約2,050円)までさまざまな特典を受けることができるものの、ほとんどの開発者は、「ロバックス(robux)」と呼ばれるゲーム内通貨を使い、ゲーム内のアップグレードに課金してもらうことでしか収益化することができません。サイト上でゲームを開発している約700万人の開発者のうち、2020年9月30日までの12カ月間で収益を上げたのは、100万人にも達していません(うち3人は1,000万ドル以上を稼いでいます)。

一方で、開発者はその「知名度」を使ってオフサイトでお金を稼ぐことができます。たとえば、人気の開発者のひとりであるNightbarbieのファンは、4万5,000人(2021年1月7日現在)のフォロワーがいるストリーミングプラットフォームのTwitchで、彼女がゲームを構築していく様子を見ることができます。

PHOTO VIA NIGHTBARBIE ON TWITCH
PHOTO VIA NIGHTBARBIE ON TWITCH

ロブロックスにはライブチャット機能もあるのですが、おそらくこれが保護者にとって最も気になるポイントでしょう。12歳以下のプレイヤーのチャットはフィルタリングされ、不適切な言葉はハッシュタグに置き換えられます。人間のモデレーターがもちろんいますが、何百万ものゲームがあると、彼らがどこにでもいるわけではありません。

同社の16年の歴史において、若いプレイヤーが大人向けのゲームに誘われるなどの不適切な行動が話題になったことがあります。また、現実でのパートナーを見つけるために、ロブロックスを使用するプレイヤーのアクティブなコミュニティもあると考えられています。

ロブロックスは怖いものではありませんが、やはり心配なのは、盗まれたクレジットカード番号を使ってロバックスを購入し、第三者のサイトでデジタル通貨を安く売るという詐欺です。同社のIPOにおける目論見書によると、2021年9月30日までの9カ月間に同サイトで購入した商品の5%を、課金に異議を唱えるプレイヤーに返金しなければならなかったといいます。

最低限、ロブロックスはこういったリスクを理解していて、目論見書の中では次のように注意を促しています。「当社のビジネスモデルの成功は、子どもたちに安全なオンライン環境を提供できるかどうかにかかっており、安全な環境を提供し続けることができなければ、当社のビジネスは劇的に悪化するでしょう」

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What She Said

子どもが言うには…

娘は、ロブロックスが好きな理由をこのように説明しています。

「ゲームの種類が豊富で、カスタマイズオプションがあるから。それと、多くの才能ある人びとがロブロックスで創作できることがとてもクール……基本的なデザインから、3Dで細かくつくられたアイテム、そして大規模なゲームまで!」

ちなみに、これがライフルを背負った彼女のアバターです。

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Roblox by the numbers

数字で知る会社

🏢16:ロブロックスの創業年数。同社は2004年、デイビット・バシュッキ(David Baszucki)とエリック・キャセル(Erik Cassel)によって設立。以前は、物理のシミュレーションソフト「Interactive Physics」を開発

👩‍💻 830:2020年9月現在のロブロックスの正社員

🎮 1億5千万人:2020年7月時点のロブロックスの月間ユーザー数

💰 5億8,900万ドル(約607億円):2020年9月30日までの、ロブロックスの2020年における収益

😇 0ドル:2020年のロブロックスの利益(同社は9月30日までに2億300万ドルの損失を計上)

🧐 40億ドル:2020年2月の資金調達ラウンドに基づく、ロブロックスの評価額

🤑 2億5,000万ドル(約258億円):2020年にロブロックスの開発者が稼いだ推定金額

The opportunity

今後の展望

ロブロックスには、明るい未来を語る「数字」があります。それはユーザーの半数以上が13歳以下で、プレイヤーの44%が女性であること、そしてユーザーが1日に費やす2.6時間は、TikTokに費やす時間の2倍以上ということです。

もし、ロブロックスがこうしたトゥイーンやティーンのエンゲージメントとロイヤリティを保ち続けることができれば、ニューヨーク大学(NYU)教授のスコット・ギャロウェイ(Scott Galloway)が自身のMediumで書いているように、Facebookの支配的地位に勝負を挑み、子どものアテンションエコノミーを一変させる可能性があります。

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ロブロックスには、旧来のプレイヤーからの関心の高まりと、海外展開、とくにテンセント(Tencent)と提携している中国での成長が期待されます。また、市場機会を分析して売り込むことで、その巨大なオーディエンスを収益化することも想定しています。現在、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)、マーベル(Marvel)、WWEなどがロブロックスでコンテンツを制作しています。

この急速な成長と魅力的なユーザーベースにより、投資家は2020年末までにIPOを行うと予想していましたが、同社はIPO市場の不確実性を理由に2021年までに延期しました。2020年12月初めには、エアービーアンドビー(Airbnb)とドアダッシュ(Doordash)のIPOが取引初日に大暴騰し、投機的な投資家には巨額の利益をもたらしましたが、それは必ずしも会社や創業者、従業員の利益につながったわけではありません。ロブロックスは、株式を公開するときが来たら、きちんと利益を得たいと思っているようです。


This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

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Image: VIA TWITTER / @SAMBRASLOW
  1. それでもマスクをしない。COVID-19感染が日々拡大し続けるなか、反マスクで「自由」を主張する抗議者たちの活動が目立っています。ロサンゼルスでは、ビバリーヒルズにあるスーパーマーケットのラルフ(Ralph)やウェストフィールド・センチュリー・シティ・モール(Westfield Century City Mall)に現れ、マスクをした来店客や従業員に嫌がらせをしました
  2. 成長するストリーミングサービス。ネットフリックス(Netflix)のほかに、ディズニー・プラス(Disnery Plus)やHBOマックス(HBO MAX)などが参入したストリーミングサービスは成長し続けています。『Wall Street Journal』によると、2020年、業界全体は前年比50%の伸びに。現在、米国におけるストリーミングサービスへの加入数(世帯平均)は、2019年の2.7から3.1に伸びているようです。
  3. 新しい音声ツールの拡大を目指す。ツイッターは、ポッドキャストアプリ「Breaker」の買収を発表しました。この買収により、Breakerのチームはツイッターに参加し、新しいオーディオベースのネットワーキングプロジェクト「Twitter Spaces」に取り組むといいます。なお、Breakerのサービス自体は、2021年1月15日に終了する予定です。
  4. 変わる映画業界。サンディエゴ州立大学のCenter for the Study for the Study of Women in Television and Filmが実施した新しい調査によると、2020年に女性が監督を務めた映画の数が「記録的な数」になったことが明らかになりました。報告書によると、興行収入上位100作品のうち、女性監督による作品数は16%に上昇。2019年は12%、2018年はわずか4%でした。

(翻訳・編集:福津くるみ)


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