Deep Dive: Crossing the borders
グローバル経済の地政学
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グローバル経済のなかで重要度をいや増すインド太平洋地域。その覇権争いに、ようやくブレグジットに最終的なけりを付けた英国が加わろうとしています。毎週水曜夕方のニュースレター「Deep Dive」では、国境を越えて動き続けているビジネスの変化を追います(英語版はこちら)。
かつて、自分は「米国史上初の太平洋出身の大統領」だと発言したバラク・オバマ元大統領。彼はその在任期間(2008〜16年)を通じ、アジアに主導的に関わっていく政策を取りました。一方、フランスは2018年に「パリ・デリー・キャンベラ枢軸(Paris-Delhi-Canberra axis)」を提唱したほか、昨年にはドイツがインド太平洋での独自戦略を打ち出しています。
各国のこうした動きは、ここ数年で世界経済と政治の中心がどれだけ東に向かってシフトしたかを示唆するものです。
昨年末、ようやくブレグジット(Brexit、EU離脱)に最終的なけりを付けた英国がこの争いに加わろうとしています。かつて植民地として支配した国々が点在するインド太平洋地域と深いつながりを構築し、「グローバルな英国」への転換を図ろうとしているのです。
debate on “Global Britain”
言及回数と「重要度」
英議会下院では1月11日、ブレグジット後の外交政策を巡る討議が行われました。英国は1973年の欧州連合(EU、当時は欧州諸共同体)加盟以来で初めて、独立した外交戦略の策定に取り組んでいます。
下院での議論は政府や議員たちが優先課題とみなすものを示唆しており、英国がこの先10年間にどの国や地域との関係強化を望んでいるか理解することができます。英国はEU離脱で生じた貿易と外交の穴を埋めていかなければならないのです。
まず、政治家たちの最大の関心事は北アイルランド、スコットランド、ウェールズ、イングランドの4地域で構成される自らの連合王国でした。具体的には、3時間半の討議で英国を示す単語(「United Kingdom」「UK」「Britain」「British」および各地域の自治政府を表す言葉など)が470回登場しています。興味深いのは、言及回数が2番目に多かったのはEUとその加盟国だという事実でしょう。ブレグジット後の方向性を話し合う場で、EUという言葉が75回使われたのです(こちらで地図を拡大して見られます)。
国ごとに見ると、上位10カ国のうち8カ国はインド太平洋に位置する国々です(ただ、「インド太平洋」に含まれる地域の範囲について共通の定義がないということは指摘しておくべきでしょう。この記事では米国もインド太平洋に含めています)。
議会での議論は、英国がインド太平洋地域での役割を拡大している現状を反映したものでした。英海軍は2年前から東シナ海での活動を強化しており、今年は空母「クイーン・エリザベス」を派遣する予定で、米軍や日本の自衛隊と合同演習も計画されています。これは香港で起きた中国政府による公民権の侵害を受けた動きですが、英国は一連の問題を巡り、EUではなく米国やオーストラリア、カナダなどインド太平洋諸国と共同声明を出しています。
英国は今年、先進7カ国首脳会議(G7サミット)の議長国を務めますが、インドとオーストラリア、韓国を招待することを明らかにしています。一方、COVID-19の感染拡大のために中止されましたが、ボリス・ジョンソン首相は今年最初の外遊先にインドを選んでいました。
こうしたことを踏まえると、政治的な方向転換を試みる為政者たちにとって、下院での議論はまさに時宜を得たものだったと言えるでしょう。EUと別の道を進むことになったいま、政府は安全保障、国防戦略、国際開発政策などについて大規模な見直しを行なっており、英国がどこまで影響力を拡大すべきかが話し合われるはずです。
What to watch for
アフリカ、成長の流儀
アフリカのスタートアップ業界では、多くの創業者たちが「最大多数の生活を向上できるよう、より広範でベーシックな問題を解決する」ことを目指しています。それゆえ、彼らはインフラ構築(サプライチェーンやフィンテック・プラットフォーム)や現地のナレッジ活用に重点を置いていますが、その視座は、いわゆるシリコンバレー型の資金調達モデルが目指すものとは大きく異なります。現在、ラゴス(ナイジェリア)やナイロビ(ケニア)、ケープタウン(南ア)といったアフリカのトップテックハブにシリコンバレーからの投資が集中していますが、そのなかで問題視されているミスマッチは、まさにその差異によるものだといえるでしょう。東アフリカのベンチャー・アドバイザリー企業Kinyungu Venturesが発表した新しいホワイトペーパー「Chasing Outliers」はそうしたコンフリクトを指摘するとともに、新たなルール設計の必要性を示唆しています。
(翻訳:岡千尋、編集:年吉聡太)
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