Deep Dive: New Cool
これからのクール
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Quartz読者のみなさん、こんにちは。「いま最もクールな配信プラットフォーム」といえば名の挙がる「Twitch」。10年足らずでトップの座に上り詰めた歴史、成長する数字、用語集をお届けします。英語版はこちら(参考)。
ここ最近、ネットフリックスやディズニーをはじめとする多くのメディアコングロマリットが業界の覇権を争い、「ストリーミング戦争」は激しさを増してきました。しかしいま、この戦いには決定的な勝者がいます。
アマゾンが所有するプラットフォーム「Twitch」では、ビデオゲームをプレイしている数多くのゲーマーがライヴ配信しています。Twitchは、この分野では誰もが認めるトップの座に君臨。全ビデオゲームストリーミングの91% をホストしており、YouTubeやFacebookといった競合を凌駕しています。
いまやスタートから10年足らずでインターネット上で最も人気のあるプラットフォームのひとつとなったTwitch。その1日あたりの視聴者数は、常時200万人を超えています。
Twitchは、「Netflix」と同様にパンデミックの影響を受けました。家に閉じこもった世界中の消費者のための「エンタテインメントの発信地」となったのです。現在では月間700万人のストリーマーがプレイ動画を配信していますが、これはパンデミックが始まる前に比べると、約2倍の数になっています(なお、アマゾンはTwitchの収益を公表していません)。
ビデオゲームのストリーミングは、リアリティTVや映画、ポッドキャストの流れを汲んでいるといえますが、インタラクティブかつ台本のない、混沌としたメディアです。有名人がファンの目の前に直接登場し、ユーザーとの関係性をつくり出すTwitchは、多くのGen Zにとって映画館のようなものですが、彼らにとってのアイドルはレオナルド・ディカプリオやブラッド・ピットといったセレブリティではありません。自宅でドリトスを食べながら「コール オブ デューティ」や「フォートナイト」をプレイしている様子をライヴ配信している、そんな普通の10代や20代の若者が「アイドル」なのです。
ストリーミングの人気はさらに高まることでしょう。Twitch(とアマゾン)は、ネットフリックスおよびテレビ業界に打ち勝つためにしてきたように、続々と登場する新しい「敵」をかわしていかなければなりません。しかし、いまのところTwitchは成長を続けるエンタテインメントの一角をほぼ独占しており、その名前を耳にする機会も増えてきています。
We’re all gamers now
人類総ゲーマー時代
パンデミックが多くの企業に与えた影響はネガティブなものでしたが、Twitchにとっては違いました。2020年は、外出できずにいる消費者がなにかしらの「家でやるべきこと」を求めたおかげで、事実上全視聴者数とのエンゲージメント指標が急上昇しました。2020年前半にはプロスポーツの多くは放映すらされませんでしたが、一方、Twitchはこれまで以上に力を発揮していたのです。
Twitchの台頭は、世界中でビデオゲームの利用がより一般的に急増していることと一致しています。8月の米国のゲーム売上は2019年の同月比で37%増加し、ゲームディベロッパーは2020年に記録的な数字の利益を報告。モバイルゲームの売上は一部の国で50%も増加しました。人気のあるゲームはさらに人気が高まり、一方で無名だったゲームがほぼ一夜にして有名になっています。
Twitchは、ユーザーが新しいゲームを知り、お気に入りのストリーマーや業界の最新動向を把握し、グローバルなコミュニティに参加するための「ワンストップショップ」であり、あらゆる活動の中心となる「ハブ」です。視聴者の約3分の2は、米国以外の国に住んでいるほか、Twitchのチャンネルの半分近くは、英語以外の言語で話すストリーマーによって配信されています。
By the digits
数字で見るTwitch
🤓 19億時間:2020年12月のTwitchでの視聴時間
📺 2,670万時間:Twitchの視聴者が過去30日間に、人気ストリーマーFélix “xQc” Lengyelのチャンネルを視聴した時間数
💰 9億7,000万ドル(約1,017億円):2014年のアマゾンによる買収金額
✍️ 150億ドル(約1.57兆円):Twitchの現在の市場価値
🙄 1,670万人:プラットフォーム上で最もフォロワー数の多いストリーマー、Tyler “Ninja” Blevinsのフォロワー数
Brief history
Twitchの歩み
2011年:ライヴ放送プラットフォーム「Justin.tv」が、サイトで最も人気のあったゲームチャンネルを「TwitchTV」として独立させる。その後、放送局が広告収入を共有できるパートナープログラムを開始
2012年:TwitchTVがベンチャーキャピタルから1,500万ドル(約15.7億円)を調達。CBS Interactiveに広告とスポンサーシップを販売する権利を与える契約を結ぶ
2013年:さらに2,000万ドル(約20.9億円)を調達。100人目の従業員を雇い、収益性が向上。月間視聴者は約4,500万人に。ミュージシャンのライヴパフォーマンスなど、ゲーム以外のコンテンツにも進出。TwitchはCBS Interactiveを使わず、社内に広告営業チームを設立
2014年:Justin.tvが閉鎖され、親会社がTwitch Interactiveに改名、事業をTwitchのみに特化する。グーグルは独占禁止法上の懸念を理由に、Twitch Interactiveを10億ドル(約1,048億円)で買収する契約を取り下げる。数カ月後、アマゾンがTwitchを9億7,000万ドル(約1,017億円)で買収
2015年:Twitchの月間視聴者数は1億人を超え、公式ストリーミングパートナーは1万1,000社を超える。ファンがお気に入りのストリーマーに直接会える、年に一度のイベント「TwitchC-ON」がサンフランシスコで初開催
2016年:ユーザーがアイテム課金に使える仮想通貨「ビッツ(bits)」を導入。また、Amazon Primeアカウントと連携し、視聴者向けに独占的な機能を提供するサービス「Twitch Prime」を開始
2017年:ゲーム以外のコンテンツをさらに拡大、ストリーマーの日常を放送する「IRL(現実世界)」のチャンネルを追加。米プロスポーツリーグと提携してプライム会員にゲームをストリーミング配信する
2018年:パートナーストリーマー数は 2万7,000人以上に。一方、中国ではブロックされる
2019年:人気ストリーマーが続々登場する競合サービスへ流れないようにするため、複数年の独占契約を結ぶことを開始
2020年:Twitch Primeを「Prime Gaming」に改名。競合のマイクロソフト「Mixer」が終了し、一部のストリーマーがTwitchに出戻り。デイリーユーザー数は2,700万人に達し、毎月600万人のクリエイターがストリーミングを行っている
Twitch for Dummies
Twitch用語集
💵 Bits:Twitch共通の仮想通貨のこと。お気に入りのストリーマーを応援するための「ビッツスタンプ」を購入するために使用
💰 Dono:視聴者からストリーマーへ、現金での寄付やチップ
👾 Emotes:ストリーマーが配信中に、視聴者がチャットボックスに送信するTwitch独自のスタンプ
🎁 Gifted sub:ストリーマーのチャンネルのサブスクリプションを購入してプレゼントできる
👀 Mod:ストリーマーがチャットを監視するために選ぶモデレーター
📹 Streamer:ゲームをプレイしている姿をライヴ配信する人のこと
🤬 Stream sniping:視聴者が配信を見ながらストリーマーと同じゲームに参加し、ストリーマーに対して煽ったり、倒したりする妨害行為
📺 Raid:ストリーマーが視聴者に別のチャンネルを新たに紹介すること
🧑💻 Ninja: Twitchで最も多くのユーザーに支持されているストリーマーで、最近は「ヴァロラント」をよくプレイしている
👩💻 Pokimane: Twitchで最も人気のあるストリーマーの1人であり、他数人のストリーマーと組んでいるコレクティブ「OfflineTV」のメンバー
🧑💻 Tfue: Twitchで2番目にフォロワー数が多いストリーマーで、よくプレイするのは「コール オブ デューティ」や「フォートナイト」。ニンジャとの確執で知られている
🧑💻 Shroud: Twitchで3番目にフォロワー数が多いストリーマーで、よくプレイするのはシューティングゲーム
🌏 ウェビナー第4回の申込み受付スタート
世界各地で活躍する日本人VCが現地の声で伝えるウェビナーシリーズ「Next Startup Guides」第4回の申込み受け付けを開始しました。今回はBEENEXTの佐藤輝英さんをゲストに迎え、インドにフォーカスします。開催は2月25日(木)。詳細およびお申込みはこちらからどうぞ。
COLUMN: What to watch for
約7億円を自腹
2月7日に開催された、NFLスーパーボール。スーパーボウルといえば、毎年話題となるのがハーフタイムショーですが、今年はザ・ウィークエンド(The Weekend)が登場し、ネット上では賛否両論が巻き起こったほか、あらたなミームも生まれています。『Dazed & Confused』では、2015年のシングル「Can’t Feel My Face」を披露した際に、金色の鏡張りの廊下があるエリアに入っていく彼の「自撮り」かのようなアングルや「不自然な動き」を紹介。「まるでFaceTimeしているときのアップ顔」「駅やクラブで迷ったときの動き」という声が上がっています。ほかにも、衣装が「スター・ウォーズのジャワやC-3PO」、覆面の姿が「ジェイソン(13日の金曜日)」などといったさまざまな声も。
ちなみに、今回のショーの制作費を、ザ・ウィークエンド自身が700万ドル(約7.3億円)を自腹で負担したことでも知られていて、配信される前からかなりの注目を集めていました。なお、今年のスーパーボウルの視聴者数は、NFLにとって数十年ぶりの低水準に落ち込んだとのこと。ただ、COVID-19の影響もあってか、ストリーミング配信は過去最多となったようです。
(翻訳・編集:福津くるみ)
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