Impact:フリマ市場はサステイナブル?

Impact:フリマ市場はサステイナブル?

Deep Dive: Impact Economy

始まっている未来

[qz-japan-author usernames=”Hyejune Park, Cosette Marie Joyner Armstrong”]

若者を中心に人気が高まる「再販」市場。消費者からするとムダな消費が抑えられているようにも思えますが……。毎週火曜の「Deep Dive」では気候変動を中心に、いま世界が直面しているビジネスの変化を捉えるトピックを深掘りしています(英語版はこちら)。

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Image: COURTESY OF THREDUP

古着がファッション業界を変えようとしています。最新の調査によると、中古衣料品市場は2019年の280億ドル(約2兆9,900億円)から2029年後には800億ドル(約8兆5,500)に拡大する見通しです。つまり今後10年間で3倍になるのです。米国のファッション産業全体の規模は3,790億ドル(約40兆5,100億円)に上りますが、衣料品の再販は2019年に従来のアパレル小売と比べて21倍のスピードで増加しました。

古着はファストファッションの優位を覆す可能性を秘めています。「H&M」や「ZARA」といったブランドに代表されるファストファッションは、低価格で商品寿命の短い衣服を大量販売するというビジネスモデルで2000年代初頭から業界を席巻してきました。ファストファッションは短いサイクルで衣料品を生産・販売し、消費者に必要以上にたくさんの服を買うように仕向けます。

ファストファッションの市場規模は向こう10年で20%拡大する見通しですが、中古衣料品市場はこの間に185%の成長が見込まれています。わたしたちは衣料品の消費動向と持続可能性を研究していますが、古着の人気拡大という傾向はファッション業界の再編と環境負荷の軽減につながると考えています。

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The next big thing

いいこと尽くし?

中古衣料品市場はリサイクルショップ再販プラットフォームというふたつのカテゴリーに分けることができますが、最近の古着ブームを支えているのは後者です。

古着というと、誰かが着古した汚れた衣服や、服を少しでも安く書いたい人だけが興味を示すものというようなイメージがあるかもしれません。ただ、最近は多くの消費者が古着を肯定的に捉えており、ものによっては新品よりも品質が優れていると考える人もいます。若年層を中心に、古着を買ってそれを再び売る「ファッション・フリッピング(fashion flipping)」も盛んです。

古着人気の高まりに加え、「Tradesy」や「Poshmark」といったピア・ツー・ピア(P2P)のデジタルプラットフォームの登場も手伝って、オンラインの古着販売はファッション業界における「ネクスト・ビッグ・シング」になりつつあります。

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普段着だけでなく高級品の中古市場も好調で、「TheRealReal」「Vestiaire Collective」といったサイトでは、ルイ・ヴィトン、シャネル、エルメスといったブランドの正規品が売買されています。高級ブランドの中古販売市場は2019年に20億ドル(約2,140億円)に達しました

新型コロナウイルスのパンデミックが続くなかで中古の衣料品が人気を集める理由のひとつは価格で、消費者は衣服など生活必需品ではないもののへの支出を減らす傾向があります。また、安価でもすぐにダメになってしまう服ではなく、高品質な製品が好まれるようになっています。つまり、経済の縮小と持続可能性に向けた意識の高まりという方程式がうまく機能することが証明されたわけです。

More mindful consumers?

消費者の意識変化

ファッション業界を巡っては以前から、発展途上国の縫製工場での劣悪な労働環境や環境汚染、売れ残った製品の大量廃棄などさまざまな問題が指摘されています。

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Image: GAZIPUR, BANGLADESH REUTERS/MOHAMMAD PONIR HOSSAIN

布地などの資源のリサイクル率は1%に満たず、アパレル産業全体の非効率によって生じる損失は年間5,000億ドル(約53兆6,600億円)に上るという試算もあります。

繊維産業の温室効果ガスの排出量は航空産業と海事産業の合計を上回るほか、世界の水質汚染の2割繊維や布地の加工過程で生じる廃水によるものです。

アパレル産業が環境に及ぼす影響への懸念は高まっており、企業に対して持続可能性に向けた取り組みを強化するよう求める動きも拡大しています。消費者にとっては、古着を選択することがファストファッションに対する異議申し立ての手段になるのかもしれません。

ファストファッションの登場によって衣料品の製品寿命は大幅に短くなりました(衣服1着が廃棄までに着用される回数は世界平均で過去15年間に36%減少しています)。しかし、再販されれば寿命は伸びていきます。また、ファストファッションの製品と違って高級ブランドは中古市場でも値崩れしません。つまり、安価な新品の代わりに価値の高い中古の衣料品を購入することは、理論的には環境に優しいはずです。

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Image: PARIS, 11/29/2019 REUTERS/GONZALO FUENTES

もっとも、中古市場が拡大したことで手頃な価格で衣料品を購入できる機会が増え、これがすでに過剰な消費をさらに助長しているという批判もあります。

Poshmarkのようなファッションアイテムに特化したフリマアプリの利用者を対象とした調査では、これを裏付ける結果が明らかになりました。調査の対象となった米国の若年層の女性たちは、こうしたフリマアプリを低価格な衣料品もしくは定価では買えない高額な商品を手に入れるための手段と捉えており、新たな消費モデルや過剰生産を食い止めるといったことには関心を示しませんでした

消費者の動機がなんであれ、衣料品の再利用の拡大はファッション業界の標準を変えていく上で大きな一歩となるでしょう。一方で、これが持続可能性という問題の解決に寄与するかは不透明です。


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Column: What to watch for

フェデックスの誓い

Low-carbon airplanes are running behind schedule.
Low-carbon airplanes are running behind schedule.
Image: ENG ZHOUFENG/SOUTHERN METROPOLIS DAILY VIA REUTERS

アマゾンやウォルマート、ゼネラルエレクトリックなど、いまや50を超える大企業がカーボンニュートラルになることを約束しています。今月3日、そのリストに米流通大手フェデックスが仲間入りしました。同社は、2040年に温室効果ガスの排出量をゼロにするという目標を掲げています。その目標達成のため、電気自動車の購入に20億ドル、イェール大学に気候変動対策の研究センターを設立するための資金1億ドルを用意すると宣言しています。

もっとも、同社が保有する679機の航空機の低炭素化については、解決案は持ち越されたままです。2019年、フェデックスの航空便による温室効果ガス排出量は石炭火力発電所3基分とほぼ同量で、同社のフットプリント全体の4分の3を占めていす。フェデックスは2009年以降、事業活動の炭素効率を40%改善したとしていますが、代替手段の発明はいまだ困難なまま。問題が解決されるまで、同社はオフセットに頼る考えです。

(翻訳:岡千尋、編集:年吉聡太)


🎧 Podcast最新エピソードのゲストは、世界8カ国を移動しながら都市・建築・まちづくりに関する活動を行う杉田真理子さん。多様な「都市」がもつ魅力と、トレンドとなりつつあるその価値とに迫ります。 AppleSpotify

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