Startup:失速無縁の美容業界まとめ

Startup:失速無縁の美容業界まとめ

Deep Dive: Next Startups

次のスタートアップ

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Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週月曜夕方のニュースレターでは、世界のスタートアップ動向をお伝えしています。今週は、パンデミック下でも成長止まらぬビューティ業界の「内幕」を見ていきましょう。

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Image: DESIGN: QUARTZ/NOAH EMRICH. PHOTOS: UNSPLASH/CUROLOGY,LIZ BREYGEL

パンデミックで外出の機会は減りましたが、美しくいたいという人びとの気持ちは変わらないようです。ビューティ業界は他の小売と比べて大きく持ち直しており、コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーはこれを「驚くほどの回復力」と表現しています。

ビューティ製品は、いつの時代にも求められてきました(見た目をよくしたいという欲望は不変です)。そして、コスメブランドはソーシャルメディアを使いこなし、消費意欲の旺盛なZ世代、ミレニアル世代の関心を集めることに成功しています。

パンデミックでこの傾向が加速したのは確かですが、ビューティ業界の快進撃は新型コロナウイルスが感染拡大する前から続いていました。

このニュースレターに掲載したすべてのデータは、Quartz編集部が制作したスライドにまとめられています。PDFPPTでそれぞれダウンロードできます(英語版、PCのみ)。

By Digit

数字で見る「期待感」

  • 5,320億ドル(58兆2,700億円):2019年の世界の化粧品市場の規模
  • 850億ドル(9兆3,100億円):最大手4社(ロレアル、エスティ・ローダー、ユニリーバ、P&G)の2019年の売上高の合計
  • 40%:化粧品市場におけるスキンケア製品の割合
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Beauty’s Glow Up

成長を支えるもの

化粧品のなかでも特に勢いがあるのがスキンケア製品で、口紅やファンデーション、カラーコスメと比べて大きく伸びています。

市場調査会社NPDによると、米国では2019年の販売高は前年比5%拡大しました。レビューサイト「インフルエンスター」(Influenster)でも同じ傾向を確認できます。例えば、口紅の売り上げが40%落ち込んだのに対してリップケア製品は18%増えているのです。

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一方、消費者が新製品について知りたいとき、ソーシャルメディアを使う傾向はさらに強まっています。Z世代とミレニアル世代の心をつかむために、企業はインフルエンサーを活用したマーケティングへのシフトを加速させています。「Business Insider」によれば、インフルエンサーマーケティングの市場規模は2022年までに150億ドル(約1,640億円)に達する見通しです。

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ソーシャルメディアを中心にD2C(消費者直販)ブランドの台頭も顕著です。人気モデルのカイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)がプロデュースする「カイリー・コスメティクス」(Kylie Cosmetics)は、数百万人に上るInstagramのフォロワーのおかげで大きな成功を収め、立ち上げから18カ月の売上高は4億2,000万ドル(約460億円)に達しました

また、「メイクしながらスキンケア」を謳う「グロッシアー」(Glossier)が化粧品業界の“ユニコーン”になり得たのはオンラインコミュニティに支えられた部分が大きく、ネット上のファンは製品開発でも重要な役割を果たしています。

Glossierの主要な出資者には世界有数のVCが名を連ねます(セコイア・キャピタル、インデックス・ベンチャーズ、スパーク・キャピタル、スライブ・キャピタル、etc……)。創業者のエミリー・ワイス(Emilly Weiss)はわずか6年で、自身の美容ブログ「Into the Gloss」を巨大なD2Cコスメブランドに育て上げました。2019年にはニューヨークに初の路面店をオープンしています。ちなみに、同ブログのユニーク訪問者は月間200万人を誇ります。

Amazon enters the chat

あたらしい業界地図

美は国境を越えます。世界に広がる韓国のポップカルチャーを追い風に、誰もが韓国人スターの陶器のような肌を手に入れたいと望むようになりました。

韓国コスメは「しわを防いで肌に張りを与える」「紫外線から肌を守る」といった特定の効果を売りにした機能性化粧品が有名です。同国のスキンケア産業の規模は今年にも120億ドル(約1兆3,200億円)に達する見通しで、その後も2025年までは年間4.6%の成長が見込まれています。

これには大手も注目しており、2019年にはエスティ・ローダー(Estée Lauder)が同国のコスメブランド「ドクター・ジャルト」(Dr. Jart+)を11億ドル(約1,206億円)で買収して話題になりました。エスティ・ローダーがアジアのブランドを取得するのはこれが初めてです。

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化粧品業界では昔から買収が頻繁に行われており(世界には有名化粧品ブランドが180以上ありますが、そのすべてをわずか7社のコングロマリットが保有しています)、大手メーカーは買収によって収益を拡大し、生き残ってきました。

セフォラ(Sephora)やアルタ(Ulta)といった化粧品小売チェーンは、「ジ・オーディナリー」(The Ordinary)や「ジュビアズ・プレイス」(Juvia’s Place)などのD2Cブランドの製品を扱うことで、業界の変化から収益を得ようとしています。

小売業界の巨人アマゾンも化粧品業界に参入しています。2019年には独自のコスメブランド「ファインド」(Find)を立ち上げたほか、米国のアマゾンでは独立系の中小ブランドを扱うカテゴリー「インディー・ビューティー」(Indie Beauty)を刷新しました。また、レディー・ガガ監修のコスメブランド「ハウス・ラボラトリーズ」(Haus Laboratories)と独占販売契約を結んでいます。

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アマゾンの化粧品分野への参入は妥当な戦略だといえます。パンデミックでオンラインショッピングへのシフトが進むなか、実店舗を持たないという同社唯一の弱点はそれほど不利には働かないでしょう。また、アマゾンでの美容広告収入は2020年第1四半期だけで44%拡大しました。

Clean beauty’s arrival

「クリーン」の呼び声

今後に目を向けると、製品を物理的に試すことが難しくなるなかで、テクノロジーの重要性が増していくはずです。ロレアル(L’Oréal)が2018年に傘下に収めたモディフェイス(ModiFace)はバーチャルメイクで業界をリードしており、顧客には有名コスメブランド55社が名を連ねるほか、最近ではグーグルが同社のサービスの利用を開始すると明らかにしました。

自身の健康やウェルネスに関心の高い消費者は、着るものだけでなく肌につけるものについても、より多くを求めるようになっています。

身体だけでなく環境にも害のない成分を使ったクリーンビューティ(clean beauty)製品が初めて登場したのは、2010年のことです。数年後にはターゲット(Target)やウォルマート(Walmart)、セフォラ(Sephora)といった小売店が、独自に取扱商品のクリーンビューティ指定を始めました。

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この動きには大手メーカーも注目しており、2015年にはユニリーバ(Unilever)がクリーンビューティブランドの「レン」(Ren)を5億ドル(約548億円)で取得したほか、2019年には資生堂が「ドランク・エレファント」(Drunk Elephant)を8億4,500万ドル(約926億円)で買収しています。


Cloumn: What to watch for

美のオーダーメイド

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Image: REUTERS / KIM KYUNG-HOON

パンデミックを背景にコスメ産業でもさらなるデジタル化が進んでいます。拡張現実(AR)をはじめとするテクノロジーのおかげで、消費者は実際に肌に直接つけなくても、最新の化粧品やスキンケア製品を試すことができるのです。

ロレアルが2016年に買収したモディフェイス(ModiFace)はバーチャルメイク大手で、同社の顧客には有名コスメブランド55社が名を連ねます。一方で技術はさらに進化しており、2019年のデジタル技術見本市「CES」では、顔の形に合わせた3Dプリントのフェイスマスクや、肌のpH度を測定できるウェアラブルなどのガジェットも登場しました。

P&Gベンチャーの「Opte Skin」は、LED光線を照射することで目に見えないシミや色素沈着などを検出できる小型サイズの美容機器。

ニュートロジーナ(Newtrogena)の「マスクID」では、専用アプリから顔の写真を送ると骨格や肌の問題を分析し、顔の形に合わせたフェイスマスクにパーツごとに必要な成分を注入した自分だけのシートマスクを作ることができる。

ラロッシュポゼ(La Roche-Posay)の「マイ・スキン・トラックUV(My Skin Tack UV)」はウェアラブルの紫外線計測センサーで、紫外線の強さや大気汚染の度合いなど、肌に影響を及ぼす外的要因を計測してくれる。

美容業界ではパーソナライゼーションが進んでおり、5,320億ドル(約58兆3,000億円)に上る市場で各社が競争を繰り広げています。こうした顧客のスキンケアのニーズに細かく対応した製品は、「オーダーメイドの美」と呼ばれています。

なかでも注目のブランドは「プルーブン」(Proven)です。2020年5月に起業家がベンチャー投資家を相手にピッチトークを繰り広げるテレビ番組「シャーク・タンク」(Shark Tank)に登場した同ブランドは、肌質や生活環境、遺伝要因などを総合的に調べ、顧客に最適なスキンケアを提供することを目指しています。売上高はすでに3億ドル(約328億8,400万円)を超え、立ち上げからわずか1年で黒字化する見通しです。

(翻訳:岡千尋・編集:年吉聡太)


🚀 月曜夕方にお届けしている久保田雅也さん(WiLパートナー)の次回コラムは、4月19日配信を予定しています。

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