Future of Work:終焉? デリバリーブーム

The pandemic was a boon for delivery jobs.

Deep Dive: Future of Work

「働く」の未来図

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ワクチン接種が急速に進む米国では、経済の「開放」が進んでいます。そんななか、米国労働統計局が発表した4月の雇用統計によると、デリバリーの仕事のブームがダウントレンドにあることがわかりました。

Amazon and Target packages in the back of a delivery truck
The pandemic was a boon for delivery jobs.
Image: Reuters/Jeenah Moon

米国では、4月、宅配便・メッセンジャーとして働くワーカーの数が、前月比7%減の100万9,000人となりました。このデータは、アマゾンやフェデックス、DHLなどの企業での配達に従事する人を対象としたものです。

新型コロナウイルスのパンデミックで文字通り「止まった」世界では誰もが家に閉じこもることを余儀なくされ、オンライン小売業者、オンライン食料品店、そして配送業者の需要が急増しました。2020年3月、アマゾンは米国で10万人の労働者を雇用。米国やカナダ、ヨーロッパの労働者の給料を引き上げることを発表し、雇用を拡大しました。「Grubhub」や「DoorDash」などのデリバリーフードアプリへの需要も急増しました。

しかしいま、その需要は薄れつつあるのかもしれません。

What’s happening

配達員に起きたこと

先日発表されたこの数字について、求人クチコミサイト「Glassdoor」のシニアエコノミスト、ダニエル・ツァオ(Daniel Zhao)は、次のように述べています。

「ここまで顕著な減少は驚きです。もっとも月次データは変動しやすいため、決定的な傾向として見るべきではないかもしれません。米国労働統計局(BLS)のデータはサンプル数が少なく、宅配業者のような小規模な業界では特に変動しやすいと言えます」

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UberのCEO、ダラ・コスロシャヒ(Dara Khosrowshahi)は先週の決算説明会で、「ドライバーが食べ物を運ぶ量は減り、人を運ぶ量が増えている」と述べています。Uberのようなギグエコノミー企業は、健康上のリスクもあってドライバー不足に直面しています。そうしたなかでの、この状況。フードデリバリーの配達員がドライバーになる流れは、業界の転換を示唆しているのかもしれません。

前出のアナリスト、Glassdoorのツァオは、ギグエコノミーを推進するのは「需要のある産業に対して自分のスキルを簡単にシフトできる柔軟なワーカー」であると語っています。彼は、苦境に立たされたレストランの従業員が、自らのスキルを活かしてEC取引や倉庫業の仕事をGlassdoorで検索していたことを例に挙げています。「景気が回復すれば、これらの配達員はパンデミック前の業界に戻るかもしれません」(ツァオ)

パンデミック関連の規制が解除されつつあるなか、レジャー・ホスピタリティ分野では雇用が33万1,000人増加しています。その増加分のうち半分以上は、飲食・サービス業に従事するワーカーで、人びとが再び外出するようになっていることを示唆しています。

「経済が開放されるにつれて、みなパンデミック以前の行動に戻っているのかもしれません。公衆衛生の状況が改善するにつれ、より多くの人びとが配達の習慣を店頭での買い物に切り替えているのかもしれません」(ツァオ)

never ending boom

デリバリーは終わらない

一方で、デリバリーブームはこれからも続くという見立てもあります。パンデミックの最中の昨年10月、デロイトが行ったフードデリバリーに関する調査(PDF)では、消費者の4分の1近くが「デリバリーの増加は恒久的なものになる」と考えていることがわかりました(主な理由として挙げられていたのは「利便性が高い」こと)。また、デリバリー分野の成長は、何もパンデミック以降に始まったわけではないともいえます。

Uberは先週5日(現地時間)の決算説明会において、デリバリー事業が牽引した「総予約件数」が過去最高になったことを報告しました。

同社の第1四半期の総売上高は、前年同期比24%増の195億ドル。モビリティ事業(ライドハイリングサービス)による売上高が38%減(68億ドル)であったにもかかわらず、です。

急増したのは「UberEats」を中心としたデリバリー事業でした。第1四半期の予約件数は166%増で、売上は125億ドルに達しました。収益は17億ドルで、モビリティ事業と比較すると約2倍に及びます。

An Uber Eats courier wearing a protective face mask.
Delivery remains at a high.
Image: REUTERS/Eva Plevier

Uberの最高財務責任者(CFO)のネルソン・チャイ(Nelson Chai)は、「都市での活動が再開されても、当社のデリバリー事業が継続して利用されているという心強い兆候が見られます」と述べています。

その例としてチャイが挙げるのは、オーストラリアのシドニーです。国内最多の人口を誇るシドニーでは、2カ月以上前に食事が完全に再開されましたが、乗車率がパンデミック前のレベルに戻った後も、デリバリーの予約数は移動率を上回っています。同じようなことが他の地域でも起きているかもしれません。ニューヨーク市が一部再開されたことで、デリバリーの需要も引き続き拡大しているとチャイは言います。

the growth

デリバリーの成長

CEOのコスロシャヒは、パンデミック以前から、UberをAmazonのようなマーケットプレイスとして捉えていると語っていました。デリバリーへの積極的な進出は、彼のビジョンを実現するためのアクションだったといえるでしょう。 2019年、ウーバーはオンライン食料品サービスを展開するCornershopの株式の過半数を取得し、ラテンアメリカでのオンライン食料品通販を拡大しました。パンデミック以降には配送会社Postmates、アルコール配達会社Drizlyを買収し、雇用を拡大。さらに先週には、コンビニエンスストア関連事業を専門とするGoPuffとの提携を発表しています。

しかし、フードデリバリー・プラットフォームが急成長してきた過程で、規制面での懸念高まっています。昨夏のUberとGrubhubの取引は(最終的には不成立に終わりましたが)、独占禁止法上の懸念が指摘されていました。ジャージーシティやロサンゼルスなど、米国の各都市では、この手のアプリが請求できる手数料に上限を設けています。また、ニューヨーク市長の最有力候補であるアンドリュー・ヤン(Andrew Yang)は、フードデリバリー・プラットフォームの手数料に恒久的な上限を設けることを公約しています

この点について、コスロシャヒは決算報告の場で、同社がデリバリー事業を拡大するにあたっては「建設的な対話」を行う準備ができていると述べています。

Uberは、そのモビリティ事業において豊富な経験と地方政府・規制当局との関係を築いてきました。「わたしたちは対話を歓迎する」。彼はそう語っています。

(翻訳・編集:年吉聡太)


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