Deep Dive: Next Startups
次のスタートアップ
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Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週月曜夕方のニュースレターでは、世界のスタートアップ動向をお伝えしています。今週は、ここ数カ月のうちにIPOも控えている「Robinhood」(ロビンフッド)をはじめとする株取引アプリの世界を見ていきましょう。
株式市場で一儲けすることを夢見ているとしても、それはあなただけではありません。
株やオプション、ETFなどの証券を「プロではない人」が売買するリテールトレードが、いまブームになっています。その顕著な例が、今年の1月〜2月初旬にかけて1,000万ダウンロードを超えた最大級のリテールトレーディングアプリ「ロビンフッド」(Robinhood)でしょう。この熱気は、ゲームストップの取引騒動で頂点に達し、メディアを賑わし、また大金を動かすことになりました。
これらリテールトレードの世界を、いくつかのチャートで紐解いていきます。
このニュースレターに掲載したすべてのデータは、Quartz編集部が制作したスライドにまとめられています。PDF、PPTでそれぞれダウンロードできます(英語版、PCのみ)。
The stock market surge
急騰する株式市場
新型コロナウイルスのパンデミックによる経済停滞と株式市場の急騰で、2020年には過去に例のない個人投資ブームが起きました。
米国では数百万人(若者、女性、非白人が多いことも特徴です)が「株アプリ」をダウンロードしてアカウントを開設し、投資デビューを果たしています。ただ、新たな個人投資家たちは株で一儲けできるという事実だけでなく、大金をつぎ込むなら注意したほうがいいということも学んだようです。
A glossary of the ecosystem
投資の世界の用語集
株式投資のエコシステムは複雑で混乱することもあるかもしれません。知っておくべき用語をまとめました(参照元:株式投資を始めるには:初心者向けガイド)
- 有価証券:資金調達の手段として用いられる金融商品で、公的および私的な市場で取引することが可能
- 株式市場:株式の売買や新規株の公開が行われる市場や取引所の総称
- 機関投資家:一定の規模で金融商品を売買する事業体。一般的には個人投資家の依頼を受けて取引を行う
- 証券取引所:有価証券、コモディティ、デリバティブ、その他の金融商品などが取引される市場
- ショートセル:株式などの金融商品の価格下落を見越した投資戦略
- 株式資本(エクイティ):法的実体(企業、パートナーシップ、信託)の所有権
- 株式:企業の所有権を表す有価証券
- デイトレーダー:5営業日より短い期間で4件以上の取引をする個人投資家。常に25,000ドル(約270万円)以上の証拠金を維持している必要がある
- オプション:株式などの原資産の価格に基づいた金融派生商品のひとつ
Who are the new traders?
新たな個人投資家たち
株式市場はかつて、富裕層によって支配されていました。証券口座を開くには一定額を入金する必要があり、手数料もかかるため、資産に余裕がなければ株式投資はできなかったのです。
しかし、2019年以降は大手ネット証券会社が相次いで手数料廃止に動き、誰もが個人で株の売買をするようになりました。新時代の個人投資家たちは年齢が若く、男性や白人の割合が低いのも特徴です。
What’s driving the new traders?
投資ブームの理由
個人投資を始める人が増えている背景には複数の要因があります。
個人的要因
- 📱 スマートフォンへのアクセス
- 💰 新型コロナの給付金
- 🕑 パンデミックで自由時間が増える
- 🏦 貯蓄の増加
社会的要因
- 📈 高いリターン
- 🎢 市場の乱高下
- 💣 特定の金融商品で取引手数料が廃止される
- 🤏 ミニ株(単元未満株)投資の広がり
It’s not just the US
ブームは米国のみならず
個人投資家の急増は米国だけの傾向ではありません。アジア各国の証券取引所も記録的な活況を呈しており、韓国取引所では個人のトレーダーが重要な位置を占めているほか、香港でも株取引の増加に伴い印紙税が引き上げられました。
株への投資は他の地域でも拡大しています。ゲームストップ株を巡る仕手戦が繰り広げられていた時期には、英国の証券取引アプリ「Freetrade」では1日当たりの新規登録件数が通常の3,000件から3万件に増加しました。
@me
ソーシャルで乱高下
アマチュアのトレーダーが銘柄を選ぶとき、インターネットは大きな役割を果たします。個人投資家たちは「Twitter」や「Reddit」、「Discord」といったSNSプラットフォームで情報交換しており、企業の業績に基づいた合理的な売買をする一方で、ときには数を頼みに自分たちの力を誇示しようとすることもあります。
昨年末から今年1月下旬にかけて起きたゲームストック株の暴騰騒ぎでは、「Reddit」のユーザーたちが結束して同社の株価を1,700%も吊り上げました。
traditionalists vs hobbyists
プロ対アマチュアの歴史
歴史を遡ると、債権の取引は商人たちが商品を売買するために集まる空間で行われていました。これがやがて、企業が起債をしたりブローカーが取引の仲介をしたりする場へと変化していったのです。
1611年:アムステルダムに世界初の近代的な証券取引所が開設される。上場企業第1号はオランダ東インド会社
1700年代:ニューヨークで株式仲買人のグループが「すずかけ協定」(Buttonwood Agreement)を結び、定期的に株や債権の取引を行うようになる。これがニューヨーク証券取引所に発展
1896年:ダウ平均株価が始まる
1923年:スタンダード・スタティスティクス・ビューローが初の株式指数を発表
1941年:ヘンリー・ヴァーナム・プアー(Henry Barnum Poor)が創業したプアーズ出版がスタンダード・スタティスティクスと合併し、格付け機関スタンダード&プアーズ(S&P)が誕生する
1971年:世界初の電子取引所となるNASDAQが取引開始
2008年:住宅向けサブプライム・ローンの不良債権化に端を発する株価の暴落
ジョージア州アトランタ在住の36歳のトレーダー、ノア・ウィリアムズ(Noah Williams)は、「個人投資家はこれまでの常識の枠には収まらないというのが、今回わかったもっとも重要なことだと思います。テスラの現在の時価総額を支えているのは人々の信頼だけなのです」と語っています。
Gamifying trading
ゲーム感覚ゆえのリスク
投資アプリの「Robinhood」は取引手数料を無料にすることで人気を集めました。ユーザー数は2020年時点で1,300万人に上りますが、株式投資をゲーム化したという批判も浴びています。登録すると上場株が無料でもらえるといった特典や、頻繁なプッシュ通知、取引が成立すると画面にアニメーションの紙吹雪が舞うといった手法で、取引をけしかけているというのです。
実際にお金を使っているのだとわかってはいても、誘惑に負けないようにするのは容易ではありません。6カ月で1万2,700回の取引を行ったユーザーもいます。ロビンフッドは「紙吹雪」については機能を廃止することを決めました。
More money, more problems
金が増え、問題も増える
何も知らない素人が、いきなり株式投資の世界に飛び込むのは危険な行為です。2020年7月には、ロビンフッドユーザーで当時20歳だったアレックス・カーンズ(Alex Kearns)がオプション取引で70万ドル(約7,600万円)の損失を出したと勘違いし、自殺するという事件が起きました。
ロビンフッドはこれを受け、オプション取引のガイドの提供やユーザーインターフェースの改善に取り組む方針を明らかにしています。
A need for guardrails
防御壁の必要性
ゲームストップやAMCエンターテインメント、ブラックベリーなどの株価が急騰したことを受け、金融当局は警戒感を強めており、ソーシャルメディアだけでなく株取引アプリ(ロビンフッドのほか「TDアメリトレード」など)にも監視の目を光らせるようになりました。
カリフォルニア州選出(民主党)の下院議員ブラッド・シャーマン(Brad Sherman)、は、次のように語っています。
「特定の企業の株式を買うのは業績がいいからという理由であってほしいと考えています。株式市場は、企業が雇用を創出するために必要な資金を調達できる場所でなければなりません。しかし、社会的意義が見出せない超高速取引のようなものが横行し、そのために膨大な量の知的資源が消費されています。これにどのような意味があるのか、わたしには理解できません」
Bubbling over
これはバブルなのか
個人投資家からデイトレーダーまで、株に投資している人たちは「乱高下する株式市場はバブルなのか」と自問すべきでしょう。バブルは崩壊して初めてバブルだったとわかるため、崩壊前に予測するのは困難です。ただし、企業の評価がいかに「破壊的」であるかに左右される、市場関係者の憶測、ナスダック100指数は過去2年で倍になっているなど、バブルの兆候は揃っています。
一方で、連邦準備制度理事会(ERB)は利上げを否定しているほか、企業は実際に利益を挙げており、株式市場は過大評価されているわけではないという見方もあります。
Cloumn: What to watch for
IPOも民主化する
本文で言及したオンライン取引アプリの筆頭「ロビンフッド」を運営するRobinhood Marketsは、20日(現地時間)、同社ブログで「IPO Access」という新たなサービスを立ち上げることを明らかにしています。
一般投資家が新規公開株をIPO価格で購入できるという新たなプラットフォームの計画そのものは、すでに3月にもロイターが報じていました。また、関係者によると、注目されている同社のIPOについても、自社株の一部をこのプラットフォームでの販売用に確保する予定もあるようです。IPO Accessは、今後数週間のうちに全ユーザーに対して順次提供される予定です。
(翻訳:岡千尋・編集:年吉聡太)
🚀 月曜夕方にお届けしている久保田雅也さん(WiLパートナー)の次回コラムは、6月7日配信を予定しています。
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