Deep Dive: New Cool
これからのクール
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若者を中心に人気を集める「ミステリーボックス」。“何が入っているか分からない”といえば、日本では福袋やガチャガチャが思い浮かびますが、このモデルがいま、世界中で人気を集めているのはなぜなのでしょうか。
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箱の中身はなんだろう……。子どもでも大人でも、中身が分からない箱を開ける瞬間はとてもワクワクするもの。そんな気持ちをくすぐる「ミステリーボックス」(ブラインドボックス)と呼ばれるものがいま、ブームになっています。
ライフスタイル関連の商品が毎月配送されるキュレーションサービス「サブスクリプションボックス」のビジネスは、実に多彩。コスメやカミソリ、ミールボックス、サプリなど多様なジャンルに拡がっています。箱に入っているのは自分が希望するアイテムやテーマに沿った商品ですが、一方、ミステリーボックスには、何が入っているか本当に分かりません。
TOY STORY
おもちゃで大ヒット
ミステリーボックスはもともと、おもちゃ業界では何年も前からトレンドでした。いまミステリーボックスを販売するブランドは、TikTokやYouTubeといったソーシャルメディアを利用し、バイラルを起こしています。
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TikTokで人気を博すミステリーボックスを販売しているブランドのひとつが、ニュージーランドで創業し、現在は香港に本社を置くおもちゃブランドのズル(Zuru)。2019年4月から発売をスタートした「サプライズ・ミニ・トイ・ボックス」がTikTokで大きな注目を集め、「#minibrands」タグで10億回以上の再生回数を記録し、2020年に売上が前年比500%に急増しました。「5 SURPRISE」という商品は、300種類のなかから5つの小さいおもちゃがランダムに入れられていて、何が入っているか分からないようになっています。
同ブランドのグローバルマーケティングディレクターのヘンリー・ゴードン(Henry Gordon)は『ModernRetail』に対し、「人はミステリーが好きなのです」と、この人気についてコメントしています。
CHINA MAKES MONEY
中国では大成功
中国では、ここ数年で数十億ドル規模のビジネスに成長しているようです。例えば、北京を拠点にするアートトイメーカー、ポップマート(Pop Mart)は、フィギュアのミステリーボックスで大成功を収めました(目論見書によると、同社の2019年の収益が、前の年の3倍以上である16億8,000万元=約287億円に。また、2020年12月には、香港で上場を果たしました)。
創業者の王寧(Wang Ning)は、日本のガシャポンからヒントを得て展開を決めたといいます。
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1つ9ドル(約995円)程度で販売されているボックスは、同社の最も人気のある商品となっています。『Bloomberg』では、2019年の「独身の日」(11月11日)には9秒でミステリーボックスの人形5万5,000個が完売したと報じています。同社は2019年12月31日現在、114以上の小売店舗と825以上の自動販売機を運営。中国国内の57都市をはじめ、韓国、日本、シンガポール、米国など海外の21の国と地域に展開しています。
とくに、中国のミレニアル世代を中心に大ヒットしているという同社のミステリーボックス。Gen Zにも大人気で、アリババが出資するオンラインショッピングプラットフォーム「Tmall」(天猫)の2019年のレポートによると、1995年以降に生まれた消費者は、ラグジュアリーシューズやeスポーツより、ミステリートイ/ミステリーボックスにお金を費やしているといいます。
『Tech Buzz China』のアナリストであるルイ・マ(Rui Ma)によると、中国では食料品もミステリーボックスとして売られることがあるといいます。「シーフードの箱を買うと、確実に何かの魚が入っていますが、200分の1の確率でタラバガニが入っていることもあります」。また、彼女はゲームにおけるルートボックス(いわゆる“ガチャ”)と比較し、ミステリーボックス商品の増加は、小売業者が購買体験をゲーム化しようとしているひとつの方法であるとも指摘しています。
ただ、中国では動物までもブラインドボックスとして販売するという事態も発覚し、大問題になったばかりです。
Unboxing videos
フォロワー数を稼ぐ
この10年間で、購入した商品の梱包を解き箱から取り出す様子を撮影した「アンボックス・ビデオ」の人気が急上昇したことも、ミステリーボックスのブームに一役買っています。
初期のアンボックス・ビデオは、何かしらひとつのアイテムだけを取り上げるのが中心。例えば最近も、YouTuberたちがオンラインで購入した新しいプレイステーションの箱を開け、紹介していました。
最近では、ミステリーボックスを公開する動画がYouTubeやTikTokでトレンドになっています。例えば、360万人のフォロワーがいるcourtchaosは、ミステリーボックスを開封するインフルエンサーのような存在に。彼女は、Toymendousが販売している「ミステリーパック」やMini Mouseの「ブラインドバッグ」などを開封する動画を定期的に公開しています。インフルエンサーがフォロワー数を増やす手法としても、ミステリーボックスが使われているのです。
ALSO, IT’S SUSTAINABLE
そして、エコでもある
こういったミステリーボックスは、ファッション業界では「エコ」であるとも言われています。
2019年末にスタートしたロンドン発のヒート(Heat)、2020年12月、ニューヨーク発のスキャース(Scarce)は、ラグジュアリーブランドの服をミステリーボックスに入れて販売し始めました。
両社はブティックやモンクレール(Moncler)、バレンシアガ(Balenciaga)、オフホワイト(Off-White)などのブランド、さらには工場の余剰在庫からの衣料品が入った、いわゆる「ラグジュアリーのミステリーボックス」を販売。基本的に、箱にはボックスそのものの2~3倍の価格で販売されているものが入っていますが、箱を開けて中を見るまで分かりません(ボックスは男女別に販売されており、ユーザーは事前にパンツ、靴、上着のサイズを入力することは可能)。つまり、余剰在庫となるオフシーズンの服を販売するための「新しいソリューション」でもあるのです。
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Scarceの創設者であるヨシ・シェトリット(Yossi Shetrit)とジェイコブ・メッガー(Jacob Metzger)は『Highsnobiety』のインタビューに対し、「消費者はより賢くなっていて、無駄の多い業界に貢献することを必ずしも望んでいません。しかし、消費者は、最新かつ最高のものを求めています。Scarceは、この2つのタイプの消費者に対する答えです。より持続可能な選択肢とともに、憧れのブランドを所有する機会を提供するのです」と述べています。
HeatもScarceも、ミステリーボックスの販売モデルの潜在的な落とし穴のひとつである「高い返品率」を回避できたと主張しています。Heatは『Wall Street Journal』に対し、返品された商品は10〜15%に過ぎないと述べ、Scarceはその数字は5%に近いと述べています。
ちなみに、同様なサービスを展開するハイプドロップ(HypeDrop)では、よりゲームに近い感覚でミステリーボックスを選ぶことができます。オンライン上では、1個のボックスにつき1アイテムを見ることが可能。ほかにもアイテムを見るためのオプションがあり、最終的に気に入れば購入するというシステムになっています。
TAKE A RISK
リスクを負うスリル
このミステリーボックス、ある種のギャンブルにも近いですが、「リスクを負う」のがまた魅力であるようです。これまでにHeatから10箱以上購入しているというミシガン州ノビに住む大学生のマクレガー・アダムス(21歳)は、「何が入っているかわからないので、リスクを負うことになりますが、それが楽しみでもあります」と、『Wall Street Journal』に対して話します。
また、若者は商品よりもブランド名を重視する傾向があるため、「(箱の中に)バレンシアガのトップスやディオールのトップスが入っているとわかっていれば、それで満足」なのだとか。このような「盲目的な信仰」は、若い消費者が自分の選んだブランドに快く信頼を寄せていることを示しているともいいます。
COLUMN: What to watch for
「男らしさ」とは?
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Gen Zにとって「男らしさ」とは何なのでしょうか? 『Business of Fashion』では、現代の若者の変化について説明を試みています。
ホリスター(Hollister)、コーチ(Coach)、ヒムズ(Hims)、ケンドラ・スコット(Kendra Scott)などのブランドは、従来の男らしさの定義を、より“包括的”なものへと変えています。Himsのコンシーラースティックを宣伝する最近のキャンペーンでは、元MLB選手のアレックス・ロドリゲス(Alex Rodriguez)を起用し、男性がメイクをすることが当たり前になるように働きかけています。同ブランドは、「メジャーリーグといったいかにも男性的な空間に身を置いている人物を起用することで、オーディエンスの幅を広げ、男性が本当に“見られている”と感じられるようにしたいと思っています」と話しています。
『YPulse』の調査によると、Gen Zは他のどの世代よりも多様性があり、LGBTQ+であることを認識している可能性が高いことがわかっています。ハリー・スタイルズ、エイサップ・ロッキー、ビリー・アイリッシュ、トラヴィス・スコットなど、人気のセレブリティのファッションも、ジェンダーにとらわれないものになり、アイコニックな存在になっています。
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