Borders: ベゾス、リーダーたちへの遺産

Amazon doesn’t have any e-commerce facilities in Africa, but Bezos’ influence can still be felt.
Amazon doesn’t have any e-commerce facilities in Africa, but Bezos’ influence can still be felt.
Image: Reuters/Jason Redmond

Deep Dive: Crossing the borders

グローバル経済の地政学

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5日にCEOを退任したジェフ・ベゾス。アフリカの起業家たちに彼と彼の帝国が与えた影響は、非常に大きなものだったようです。起業家たちに、訊きました。毎週水曜は、世界の経済を動かす最新ニュースをお伝えしています。

Amazon CEO Bezos is silhouetted during a presentation of his company's new Fire smartphone in Seattle
Amazon doesn’t have any e-commerce facilities in Africa, but Bezos’ influence can still be felt.
Image: Reuters/Jason Redmond

アマゾンが世界で築き上げた覇権と比べると、アフリカでの存在感はどうしても見劣りします。しかし、「アマゾンが世界どこにでもある」ことは紛れもない事実で、同社はアフリカでEコマースプラットフォームこそ展開していないものの、アフリカ17カ国の消費者はアマゾンの商品を注文して海外からの発送を受けられます。

国際貿易局(International Trade Administration)によると、Amazon.comは南アフリカで最もアクセス数の多いEコマースサイトのひとつだともいわれています。他方、アマゾンウェブサービス(AWS)は南アフリカ・ケープタウンに拠点を構え、Prime Videoは同国で最も人気のあるストリーミングサービスのひとつに育っています。

そして、CEOを退任したジェフ・ベゾスは、アフリカの起業家やスタートアップに大きな影響を与えてきました。

今回、Quartzでは、ジェフ・ベゾスとその指揮下にあったアマゾンがアフリカに残した遺産を理解するべく、アフリカのEコマース分野のリーダーたちにインタビューを行いました。

Setting the standard

「標準」を設定したこと

アマゾンがとった成長戦略は、「完璧な青写真通り」とはいきませんでした。サプライチェーンや物流における障害顧客からの信頼低下などがあったからこそ、同社はアフリカ大陸でのEコマース事業の展開を見送り、代わりにウェブサービスの拡大に注力することを決定したとも考えられます(ベゾスは近年、アフリカのフィンテック・スタートアップにも投資しています)。

だからこそ、アフリカのスタートアップには、アマゾンのレガシーから学び、独自の道を切り開く余地が多く残されています。そして、そのスペースにスタートアップが打って出ようとするとき、アマゾンならではの「顧客重視」の姿勢が大きな影響力を及ぼしています。

「アマゾンはカスタマーを第一に考えています。アマゾンは、カスタマーが欲しいものを欲しいときに世界中で手に入れることができるからこそ、競合他社を圧倒しています」

そう語るのは、ケニア、タンザニア、ルワンダ、ウガンダで事業を展開するインフォーマルな小売業者向けのEコマースプラットフォーム「Sokowatch」のCEO、Angela Nziokiです。彼女は、この業界において最も注目すべきものとしてAmazon Primeを挙げています。「いま、われわれSokowatchをはじめとするEコマース企業は、カスタマーに同様の配送サービスを提供するべく努力を続けています」

コートジボワールを拠点とし、アフリカンテイストのファッションや工芸品を扱うEコマースプラットフォーム「Afrikrea」の共同設立者兼CEOであるMoulaye Tabouréも、「当日または翌日の配送」は刺激的だと同意しています。また、アマゾンが事業や商品の幅を広げながらも、合理的で信頼性の高いカスタマーエクスペリエンスを提供し、両者のバランスをとっていることにも感銘を受けたといいます。「いまや、誰もが同じことをしようと躍起になっています」と、Tabouréは言います。

南アフリカのEコマースプラットフォーム「uAfrica」のマネジングディレクターであるAndy Higginsは、「アマゾンとジェフ・ベゾスは、現地のEコマース企業が目指すべきカスタマーサービスについて、非常に高いハードルを設定することで、アフリカ全体のEコマースにポジティブな影響を与えています。そうは言っても、わたしたちはしばしば先進国に目を向けすぎていて、中国、インド、東南アジアなど他の新興市場の事業者からもっと学ぶべきことがあるとも思います」

Taking the long-term view

長期的な視点をもつこと

Tabouréは、入社後間もない社員に対して、アマゾンの成長を描いた『The Everything Store』(2013年)を読んでもらうようにしています。それは、長期的な戦略を重視するベゾスの姿勢が、アフリカの起業家にとって非常に重要な教訓を含んでいると考えているからにほかなりません。「ベゾスはアフリカの起業家にとって重要な教訓を与えてくれました。生き延びることが日々の仕事である以上、リーダーは現在に対処するだけでなく過去に捕らわれるだけでもなく、未来に投資することによる利益を体現しなければなりません」

アマゾンは、上場後17四半期にわたって赤字を出し、黒字化した後も長年にわたって投資家に提供できた利益はわずかなものでした。そしてそれは、多くのEコマース事業者にとって自らを慰めてくれる事実です。「アフリカのアマゾン」と称されるJumiaも、同じ道を歩んでいるといっていいでしょう。

このアマゾンの話は、拡大する赤字に対処しながら投資家の関心を維持し、事業を拡大しなければならないという、いまではどんなスタートアップも直面する経験を標準化したものだと、ケニアのP2Pのトラック輸送サービスを提供する「Amitruck」のCEO、Mark Mwangiは言います。

「われわれAmitruckでも、似たようなことが起きています。これは、事業に投資して軌道に乗せ、成長させるために必要なことなのです」と、彼は言います。

Thinking outside boxes and beyond borders

国境を越えて考えること

「ジェフ・ベゾスのレガシーは、ビジネスリーダーは、プラットフォーム型のビジネスモデルの構築に注力する必要があると教えてくれます」と語るのは、荷主とトラックドライバーをつなぐ電子物流プラットフォーム「Kobo360」の共同創業者兼CEOのObi Ozorです。ナイジェリアでスタートしたKobo360は、現在7カ国で事業を展開しています。

「ビジネスはスケールする必要があります。そのためには、サプライヤーに対しても顧客に対しても平等に、かつ必要に応じてサービスを提供する能力が必要です。アフリカのビジネスリーダーたちは、地域や国、大陸を超えて、世界市場を支配することを考えなければなりません。青写真はそこにあります」

前出AmitruckのMwangiは、次のように言います。「わたしが出会ったすべてのファウンダーは、ベゾスからインスピレーションを受けています。アマゾンがさまざまな分野で大成功を収めたことで、多くのテック系ファウンダーの頭の中には、何が、どのようにすれば可能なのかという方程式ができあがったのです」

Changing the game

ゲームを変えること

 AWSは、アフリカで急成長しているフィンテックやEコマース取引分野をサポートするデジタルインフラを構築するゲームチェンジャーである──アフリカのEコマース業界のリーダーたちは、そう口を揃えます。

「ベゾスがアフリカのテックシーンに与えた影響として最も具体的なものがAWSです。AWSによって、スタートアップの立ち上げが可能になったのですから」とMwangiは語ります。

実際のところ、AWSは、アフリカのテックシーンに大きな影響を与えるでしょう。「世界最大のオンラインマーケットプレイスが提供され、クラウドコンピューティングの恩恵に与れるようになり、さらにはマイクロソフトの(クラウドコンピューティングサービスの)Azureのような企業との真剣な競争が生まれるなどと、誰が予想できたでしょうか」と、Kobo360のOzorは言います。

ベゾスがいなくなっても、アマゾンはアフリカ企業が自信をもって踏み出せるような道を切り開いていくだろうと、Ozorは確信しています。

「ジェフ・ベゾスは、30年近くにわたってマスター・ディスラプターとして活躍してきました。そして、そのバトンを受け継いで世界規模で先頭に立ち続けることのできるディスラプターたちのチームを築いてきました。これにより、卓越した文化──何度も何度もイノベーションを起こせる文化が生まれていくのです」


COLUMN: What to watch for

英国、コロナ脱出

UK prime minister Boris Johnson at a July 5 press conference where he announced the lifting of Covid-19 restrictions in England.
UK prime minister Boris Johnson at a July 5 press conference where he announced the lifting of Covid-19 restrictions in England.
Image: Reuters/Daniel Leal-Olivas

7月5日(現地時間)、ボリス・ジョンソン首相は英国における新型コロナ規制のほとんどを7月19日に解除することを発表しました。最終的な決定は12日に下されることになっており、さらなる延期の可能性も否定できませんが、政府発表では、次のような「ルール変更」が実施される予定です。

👷 雇用者は、スタッフにオフィスに戻るよう求めることができる

🥳 屋内外での集会の人数制限がなくなる

😷 フェイスマスク着用の義務がなくなる。「閉鎖された混雑した空間で、普段会わない人と接触する」場合にマスクを着用することが推奨される

📏国境で電車・飛行機を降りるときや、COVID-19陽性反応が出たとき以外は、ソーシャルディスタンスを強制されなくなる

📱レストランや店舗などの事業者は、国民健康保険サービス(NHS)のCOVID-19アプリを使ってチェックインするよう客に求める必要がなくなる(提供が奨励される)

(編集:年吉聡太)


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