Deep Dive: Impact Economy
気候テックの衝撃
[qz-japan-author usernames=” lmaclellanqz”]
激動する世界の気候変動ビジネス。毎週火曜は、その現状を伝えるインサイトを紹介しています。自分のカラダと同じくらい環境への配慮を欠かさないヴィーガンにとっての「新製品」が早くも注目されています。
Beyond Meat(以下、Beyond)は、人気の「ビヨンドバーガー」に勝るとも劣らない植物性食品のヒット商品を手に入れたようです。
環境のこと、健康のこと、そして動物愛護を考えて鶏肉を食べるのを諦めた──。そんな人のために代替肉大手のBeyondが販売を始めたのが「チキンテンダー」。空豆・エンドウ豆のたんぱく質でつくったチキンの代替品にパン粉をまぶした商品です。
7月初旬から米国内のわずか400店舗のレストランのみで展開されていますが、近日中にもさらに多くのカジュアルレストランやホテル、スタジアム、その他の企業に導入される予定です。
it sounds too good to be true
まるで本物
動物性タンパク質を含まないチキンそのものは、Beyondにとって初めての試みではありません。同社は2012年、冷凍チキンテンダーに挑戦しています。ただし賛否両論あり、2019年に販売を取り止めていました。
Beyondのラボの科学者たちは失敗から学んだのでしょう。あらたな製品は、美味しいだけでなく、鶏肉の繊維質の触感をほぼ完璧に再現しています。いまのところチキンテンダーの評価は有望で、例えば『Vox』レポーターのSigal Samuelは、パン粉をまぶしたテンダーを「本物とほとんど同じ」と高評価。小規模チェーン店Epic BurgerのCEO、David Grossmanは『Bloomberg』の取材に対し、この新しいフェイクチキンは「最高」で、常設メニューになりそうだと述べています(Epic Burgerでは、テンダー3個9ドルで販売中)。
The market potential is huge
市場のポテンシャル
チキンテンダーは、Beyondとその投資家にとって大きな追い風となるでしょう。米国人は他の肉類よりも鶏肉をよく食べる国民で、ブロイラー鶏の市場は210億ドル規模。代替食肉企業が、鶏肉を習慣的に食べている人の何割かでも惹きつければ、それだけで大きな利益を得ることになります。
また近年、菜食主義の支持者は、(本格的なものにせよ一時のものにせよ)急増しています。米国の植物性食肉市場はすでに数十億ドル規模のビジネスになっており、世界的にみれば200億ドル規模の市場に。中国では、肉は「富の象徴」でしたが、最近では、本物の動物性たんぱく質のような見た目や噛み心地の模造品がその座を奪おうとしているほどです。
代替肉のなかでも、特に鶏肉のカテゴリーは成長しています。『Bloomberg』によると、米国の業務用レストランに出荷された植物性チキンの量は、2019年と比較すると19%、昨年と比較しても15%増加しているといいます。
もっとも、代替鶏肉のカテゴリーは、Beyondだけのものではありません。Maple Leaf Foodsの「Lightlife」やConagra Brandの「Gardein」など、大手企業の商品が覇権を争っています。より広くヴィーガンミートに目を向ければ、そこにはImpossible Foodsなどのライバルも並んでいます。
Is fake chicken healthy?
ほんとに健康にいい?
植物性肉料理への批判もないわけではありません。批判の最大の理由のひとつは、健康的なイメージが先行しているとするものです。朝食用のサンドイッチに、エンドウ豆からつくられたソーセージパティが使われていたとしても、そのサンドイッチのカロリーと塩分が高いことに変わりがないことがほとんど。Beyondのチキンテンダーの場合、1食あたりのタンパク質は14g。コレステロールや飽和脂肪に至っては、レストラン用に提供される同等品に比べて40%も低減されているという優れものですが、ナトリウムが多く含まれています。
ヴィーガン向けのチキンフィンガーは、いまのところ、いくら美味しくとも、本物の野菜のように栄養価が高いとは言えなさそうです。
Cloumn: What to watch for
熱波にみる気候変動
ここ数週間で米国北西部およびカナダ西部を襲った熱波は、壊滅的な山火事を起こしています。この熱波により数百人の死者が出ていますが、今月7日に発表されたサイエンスレポートは「人為的な気候変動がなければ、起こりえなかった」と結論づけています。
レポートを発表したのは、プリンストン大学、オックスフォード大学、米国国立大気研究センター、オランダ王立気象研究所などの気候学者が参加する研究連合体「World Weather Attribution」(WWA)。レポートによると、シアトル、ポートランド、カナダ全土の気温記録を更新した今回の熱波は「例外的」なケースではあるものの、地球温暖化がなければ、起こる確率は150分の1まで下がっていたはずだとしています。
(翻訳・編集:年吉聡太)
🎧 Podcastは月2回、新エピソードを配信中。Apple|Spotify
👀 Twitter、Facebookでも最新ニュースをお届け。
👇 のボタンから、このニュースレターをTwitter、Facebookでシェアできます。ニュースレターの転送もご自由に(転送された方へ! 登録はこちらからどうぞ)。