Future of Work:女性と五輪(東京の場合)

Olivia Breen was “disappointed” to be told by a female official at the England Championships that her shorts were “too short and inappropriate.”
Olivia Breen was “disappointed” to be told by a female official at the England Championships that her shorts were “too short and inappropriate.”
Image: Action Images via Reuters/Henry Browne

Deep Dive: Future of Work

「働く」の未来図

Quartz読者のみなさん、連休はどのようにお過ごしですか? 毎週木曜午後のニュースレターでは、「働くこと」のこれからについてのアイデアや出来事をお届けしています。今日のニュースレターでは、東京五輪にまつわるダイバーシティの一例をご紹介。

Olivia Breen holds a UK flag.
Olivia Breen was “disappointed” to be told by a female official at the England Championships that her shorts were “too short and inappropriate.”
Image: Action Images via Reuters/Henry Browne

ヘレン・グローバーは、まさに「開拓者」と呼ぶべき女性です。2012年のロンドン五輪で、彼女はパートナーのヘザー・スタニングとともに、英国の女子ボート選手として初の金メダルを獲得。同大会での「チームGB」(英国五輪選手団)に最初の金メダルをもたらしました。2016年に再び金メダルを獲得したのちスタニングは引退し、グローバーは3人の子どもを授かりました。

そしていま、彼女は別の目標を掲げて戻ってきました。その目標とは、出産後に五輪大会に出場する、チームGB初の漕手になることです。彼女は来週の木曜日(29日)、東京でそのチャンスを手にします。

4度にわたりメダルを獲得した米ビーチバレー選手で3児の母でもあるケリ・ジェニングスは先日、『The Washington Post』にこう語っています──いまわたしたちは「女性の台頭というパワフルな瞬間」を前にしている、と。

Outfits and equal pay

何を着るべきか

ジェニングスはThe Postに対し、「子どもをもつ女性アスリートが、妊娠中であっても出産後であっても、男性と同じ水準で競技をするという前例のない機会に恵まれている」と語っています。補足すると、いまでこそ彼女たちはスポンサーシップや資金を維持できていますが、つい最近まで──少なくとも2019年の時点でさえ、そうではありませんでした。

そうは言っても、女性アスリートが、男性アスリートにはない課題に直面していることは明らかです。英国のパラリンピアンであるオリビア・ブリーンは、今週の英国選手権で「ショートパンツが短すぎる」と言われたといいます。ノルウェーの女子ハンドボールチームのメンバーは、ヨーロッパビーチハンドボール選手権で、通常のビキニボトムではなくショートパンツを着用したところ、それぞれ150ユーロ(約2万円)の罰金科せられました。また、今日も(現地時間21日)、2021年大会の初戦でスウェーデンに敗れた米国女子代表チームのサッカー選手たちは同一賃金を求めて戦っています

これらは、東京オリンピック開催前に、女性アスリートをめぐって勃発した議論のほんの一部でしかありません。

Differences of Sex Development

セメンヤの場合

800メートル走で五輪2連覇を達成している南アフリカのアスリート、キャスター・セメンヤは、テストステロンの血中濃度が濃いことを理由に東京大会への出場を諦めざるをえませんでした(彼女は5,000メートル走の予選を通過できず、2016年大会で金メダルを獲得した800メートル走にも出場できません)。

今月初めには、ナミビア国立オリンピック委員会が、所属する2人のスプリンター、ベアトリス・マシリンギクリスティン・ムボマの2人が、400メートル走で失格になったことを発表しました。イタリアでのトレーニングキャンプで受けた検査で、平均以上のテストステロン値が検出されたというのがその理由です。

among Olympic organizers

運営のスキャンダル

東京オリンピック組織委員会の前会長である森喜朗は、女性役員がしゃべりすぎると不満を漏らしたと国内メディアに報じられ、2月に辞任しました。後任には橋本聖子が就任し、橋本は現在、この状況を「修正」するという不名誉な任務に就いています。

Olympic babies

オリンピックベイビー

五輪会場でのCOVID-19感染を防ぐために、東京の主催者は、選手の家族を含む外国人の訪問を禁止しました。米国のマラソンランナー、アリフィン・トゥリアムクは、母乳で育てているにもかかわらず、生まれたばかりの娘を東京に連れてくることはできないと言われました(後日変更された)。

彼女以外の女性アスリートたちは、我が子を連れて東京には行けません。セリーナ・ウィリアムズが今年のオリンピックを辞退したのは、このことが影響しているのかもしれません。彼女は以前、「3歳の子どもがいなければ、わたしは機能しない」と語ったこともありました。「わたしは落ち込んでしまうでしょう。彼女の人生のあらゆる日々を、わたしたちは毎日一緒に過ごしてきたのだから」


COLUMN: What to watch for

コラボのゆくえ

Designer Virgil Abloh appears with model Gigi Hadid at the end of his Spring/Summer 2020 collection show for his label Off-White in Paris
Virgil Abloh, fashion’s master collaborator, will bring his creativity to the rest of LVMH’s businesses.
Image: Reuters/Charles Platiau

ルイ・ヴィトン、モエ、ティファニーなどのブランドを擁するフランスのラグジュアリー・コングロマリットLVMHは、米国人デザイナーのヴァージル・アブローに、自社の事業全体でクリエイティブな活動を行うライセンスを与えてきました。21日(現地時間)、同社はアブローとの関係を拡大することを発表。LVMHはアブロー率いるOff-White LLCの株式を購入し新しいブランドを立ち上げ、「ファッションの領域を超えたさまざまな分野で提携する」としています。

アブローはファッションだけでなく、LVMHの他部門──酒類や時計、皮革製品なども手を広げることになるでしょう。シカゴ出身の40歳であるアブローは、ファッション界で最も多作なコラボレーターとして広く知られています(イケア、エビアン、ナイキ、ヴィトラ、リーバイス、ワービー・パーカー……)。アブローは、今回の提携は「多様な個人の機会を拡大し、より大きな公平性と包括性を育むものだ」と述べています。

(翻訳・編集:年吉聡太)


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