Impact:石油メジャーが絶好調なワケ

Oil companies like Exxon are turning record profits from plastic as the economy turns away from other uses of oil.
Oil companies like Exxon are turning record profits from plastic as the economy turns away from other uses of oil.
Image: REUTERS/Aly Song

Deep Dive: Impact Economy

気候テックの衝撃

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コロナ禍で大打撃を受けたオイルカンパニーですが、2021年第2四半期でその業績は一転。めざましい「復活」の裏には、いま世界で削減を求める声が高まっているプラスチックの存在があるようです。

Exxon is betting on plastic
Oil companies like Exxon are turning record profits from plastic as the economy turns away from other uses of oil.
Image: REUTERS/Aly Song

2021年第2四半期、世界のオイルカンパニーは巨大な利益をあげています。その理由としては、まず過去半世紀で最高の原油価格を記録したことが主な要因として挙げられます。パンデミック後の空路・陸路での旅行が復活したこと、あるいはOPEC加盟国間の生産枠をめぐる争いも影響したようです。

個別にみていきましょう。

ロイヤル・ダッチ・シェルが7月29日に発表した第2四半期の最終損益55億ドルで、前年同期の6億3,800万ドルに比べて大幅に増加しました。仏大手のトタル35億ドル(前年同期は1億2,600万ドルの黒字)でした。両社ともに、株価が暴落した2020年にともに耐えてくれた株主への還元として、合計28億ドルの自社株買いを実施する計画を発表しました。同月30日にはシェブロンこれに続き、2019年以来の最高の四半期を記録。さらに数十億ドル規模の自社株買いを開始しました。

finally looking up for Exxon

エクソン、好転

直近では、エクソンモービルの最終損益が47億ドルであったことが発表されています。同社の前年同期の決算は、約10億ドルの赤字でした。

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最近、よいニュースが聞かれることのなかったエクソンにとって、これは大きな転機といえるでしょう。資金繰りの悪化に加えて、過去最大の負債の返済に追われ、5月には気候変動問題に取り組む投資家との間で取締役会のメンバーをめぐる争いに敗れたエクソン。従業員の10%をレイオフしている最中の7月には、ロビイストの1人がバイデン政権の気候変動目標を軽視しているさまが撮影されていました

エクソン好調の理由は、原油価格だけではありません。消費者からのニーズが盛り上がっているプラスチック需要からも大きな恩恵を受けています。

石油化学部門にとっては過去最高の四半期となり、この四半期の収益の実に半分を占めています。近年、エクソンは石油化学製品の加工・精製に多額の投資を行っています。中国に100億ドルの工場を新設するなど、この分野において世界最大級の規模に成長しています。

Big Oil needs plastic

結局、プラスチック

世界では、電気自動車をはじめ「よりクリーンな輸送燃料」への移行が進んでいるとされています。だからこそ、多くのアナリストがプラスチックは石油業界にとって「明るい話題」だとみています。プラスチックの原料となるエタン需要も、2022年末までに20%増加するといわれています。オイルカンパニーがリサイクルプログラムを推進したところで成果は上がらず、プラスチック汚染は世界的に増加しています。

2月には米テキサス州で発生した大寒波でメキシコ湾岸の多くの石油化学製油所が一時的に操業停止に追い込まれ、2020年11月以降の輸送用コンテナ船の混雑やそれによる価格高騰などが重なり、世界の石油化学製品市場は逼迫していました。そこで生じた高い需要を、エクソンはうまく利用できたといえるでしょう。第2四半期の石油化学部門の利益率は過去10年間の平均をはるかに上回り、輸送用燃料の利益率よりもはるかに高かったのです。

エクソンの化石燃料から低炭素エネルギー源への移行は、同業他社に比べて遅れています。しかし、最新の決算が示唆するものがあるとすれば、エクソンは、消費者がガソリンを買わなくなったあともプラスチックは使い続けることに賭けているということかもしれません。


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Column: What to watch for

気温の五輪新記録

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徐々に上がり続ける東京の気温──オリンピックの記録をつくるのはアスリートだけではないかもしれません。閉会式を数日後に控えた8月5日の正午ごろには、東京の最高気温は35℃に達すると予想されています。1日現在、東京の日中の平均気温はアテネ大会(2004年)やアトランタ大会(1996年)と大差はありません。夏季オリンピック各大会の史上最高気温は、アテネで記録した34.2℃ですが、予報が正しければ、東京は新記録を達成するかもしれません。

東京大学の横張誠教授(環境・都市計画)はCNNの取材に対し、「気温だけでなく湿度も考慮すると、東京の夏はオリンピック史上最悪と言えるでしょう」と語っています。ちなみに、北半球を対象としたLancet掲載の2016年の研究によると、2085年には夏季オリンピック開催に適した気温の都市は33しか残らないとされています。

(翻訳・編集:年吉聡太)


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