Future of Work:あなたの仕事には「匂い」が足りない!

Nose training.

Deep Dive: Future of Work

「働く」の未来図

Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週木曜午後のニュースレターでは、「働くこと」のこれからについてのアイデアや出来事をお届けしています。今日のニュースレターでは、ビジネスパーソンに人気のあるワークショップについて。

Coffee buyer Dave Charleville of the United States smells a bowl of specialty coffee at Panama's annual coffee cupping contest in Boquete, 300 kms west of Panama City, Panama March 31, 2003. The contest, akin to wine tasting, aims to find the best 10 coffee's of Panama's 2002/03 crop, which will be sold to the highest bidders in an Internet auction at the end of May.
Nose training.
Image: Reuters/Alberto Lowe

突如あらわれた致命的な呼吸器系ウイルスは、わたしたちに嗅覚の大切さを思い知らせることになりました。新型コロナウイルスの一般的な症状のひとつである「無嗅覚症」は、あらゆる匂いを感知する能力を低下させ、「匂い」のない生活がどれだけのハンデを負うものかを気づかせました。

いわずもがな、嗅覚はわたしたちの生活の質に大きな影響を与えます。危険を感知し食欲を増進させるようなよく知られる効果のほかに、匂いに注意を払うことで創造性を高めることができるともいわれています。

いま、このような匂いのもたらす効果をビジネスに応用する「Scentesplorations』(「香りの冒」の意)という新しいバーチャルワークショップが注目されています。

このワークショップは、香りの研究者で、Instagramアカウント「Future of Smell」の運営者であるオリヴィア・ジェズラー(Olivia Jezler)が、ウェルネスやチームビルディングを目的とした活動として、1時間行われます。

Undiscovered country

未知の世界へようこそ

ジェズラーによると、このワークショップは、新型コロナウイルスがリモートチームにもたらしたさまざまな問題に対する一種のカンフル剤として考えられたものだそうです。香りには不安感を和らげ、注意力を高め、気分を高揚させる効果があることが研究で証明されています。「また、クリエイティブな活動をすると、脳内にドーパミンが放出され、モチベーションが高まることも知られています」(ジェズラー)。

ワークショップではまず、本や生乾きの洗濯物など身近なものを使って、人びとの会話を引き出す 「クロスセンス・エクササイズ」(cross-sensory exercises)をグループで行います。匂いを嗅ぐことで人は自分の感情を率直に話せる(「子どものころの思い出を語るくらい」に)と、ジェズラーは考えています。また、匂いを表現するためのボキャブラリーは非常に限られているため、参加者はいかにもビジネス的な専門用語を使うのではなく、より心から湧き上がってくる言葉、つまりは正直な感情を伝える言葉を使う傾向があるというのです。

Zoom fatigue

Zoom疲れの毎日に

ニューヨークの広告代理店、ディマッシモ・ゴールドスタイン(DiMassimo Goldstein)の創業者兼クリエイティブ・チーフのマーク・ディマッシモ(Mark DiMassimo)は、ジェズラーのワークショップを受講し、人間の五感のなかでも最も軽視されているであろう嗅覚を掘り下げることの意義を説明してくれました。

「グラウンディングやリラックス効果だけでなく、想像力をかきたてるエクササイズであることに驚かされました」とマークは言います。

彼によると、「バーチャルな香りのワークショップ」に参加することについて、チーム内には懐疑的な見方をする人も一定数いたそうで、「トリビアコンテストやバーチャルカクテルパーティなどはやったことがあるけれど」「香りのワークショップ?」「そんなことができるの?」と、Zoomでの説明中も疑わしげなムードだったと振り返ります。

とはいえワークショップに参加してみると、マークはその効果に驚かされました。たった1時間を「鼻」のために使うことで、日常生活を送る中で知らない間に刺激を受けすぎた視覚や聴覚を休ませることができたのだと振り返ります。

「素晴らしい感覚を体験してもらうことで、チームの助けになりたかった」と言うマーク。「同時に、クリエイティブな人たちを、この未知の国に目覚めさせたかったのです」

lead to better brainstorming

ブレストも捗る

マークは、このワークショップによって、会社のブレーンストーミングに新しい取り組みが加わったと言います。「言葉や絵で考えるだけでなく、他の感覚についても考えてみようということになりました」。ブランディングにおける彼らのトレーニングでは、例えば、ある企業が競合他社と比べてどのような匂いがするかを定義しようとするそうです。

「嗅ぐ」効能はこれに止まりません。マークは、目で見ることや耳で聞くことだけでなく、「香りで考える」ことも文章力の向上につながると断言します。

例えば、ディマッシモは現在、「戦略的であること」を「冷たいレモンに鋭いナイフを突き刺すように操作すること」と表現しています。一見すると何を言っているかわからない気もしますが、このような表現は、一般的なビジネス会話と一線を画しているからこそ、その違和感が重要な意味をもつというのです。

ディマッシモは、嗅覚領域はブルーオーシャンだと言います。比較的競合が少ない領域のため、ビジネスを展開するにはもってこい。

「インフルエンサー、ブランド創業者、クリエイター、アーティスト、そして起業家にとって、まったく新しい領域に進出するための大きなチャンスなのです」「他の誰かがアプライしてなくて、競争もない場所とでも言えば理解いただけるでしょうか。そう、それこそが 『鼻』なのです」。


COLUMN: What to watch for

働く人とワクチン接種

Healthcare workers prepare doses of Pfizer/BioNTech coronavirus disease (COVID-19) vaccines
Ready and waiting.
Image: Reuters/Ivan Alvarado

ウォルマートやディズニー、グーグル、ネットフリックス……。この数週間で、米企業では従業員のワクチン接種を義務づける動きが拡がっています。それでは、これら巨大企業において従業員のワクチン接種が義務化すると、どれほどの米国人が影響を受けることになるのでしょうか。

米国労働統計局の最新のデータによると、米国の総人口約3億3,000万人のうち58%が雇用されており、そのうち44%が民間企業で働いています(2019年時点)。さらに米国中小企業庁の最新のデータによると、民間部門で働く成人の約54%となる約7,000万人が「大企業」(定義:雇用者500人以上の企業)に勤めています(2018年時点)。つまり、米国の大企業が従業員にワクチン接種を義務づけたとすると、民間企業に雇用されている成人の約半数、全人口の4分の1以下に影響を与えることになるようです。

(翻訳・編集:年吉聡太)


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