Impact:最新「地球の危機」に反応した人

The IPCC report is a sobering if not particularly surprising read.

Deep Dive: Impact Economy

気候テックの衝撃

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昨日発表されたIPCC報告書は、気候変動に対する人類の責任を強く問う内容でした。対する各国首脳はどう受け止めているのか、明言した国・明言避けた国それぞれの声を紹介します。

An iceberg floats in a fjord
The IPCC report is a sobering if not particularly surprising read.
Image: REUTERS/Lucas Jackson/File Photo

気候変動に関する政府間パネルIPCC)が9日(現地時間)に公表した新たな報告書は、人類の活動が気候にもたらした変化は「前例がない」こと、すでにあるその影響は「ほとんど不可逆的」で「さらに悪化するだろう」と結論づけています。

IPCCは過去30年間、定期的に報告書を発表してきました。しかし、今年の報告書ほど、わたしたちが置かれている悲惨な状況と、ここに至るまでの失敗について率直に述べるものはありませんでした。報告書の著者らは、今後数年間で温室効果ガスの排出量が削減されることがなければ、あるいはそのための抜本的な対策が講じられなければ、「21世紀中に1.5〜2度を超える気温上昇が起きる」としています。

今年11月には国連機構サミット、COP26がグラスゴーで開催されます。今回の報告書は、気候変動に対する国際政治の役割を初めて打ち出し、そのうえで考慮されるべき将来のシナリオを示しています。

What role did governments play?

各国政府はこう関わった

IPCCの報告書は、何百人もの科学者が既存の文献を読み込み、分析し、提言を導き出すことで作成されます。

IPCCに加盟している195の国は、報告書のさまざまな箇所に署名します。報告書のうち「政策決定者向け要約」(Summary for Policymakers、SPM)の内容は、それが「承認された」ものであり、加盟国と著者の間で「資料が一行ごとに詳細に議論された」ものである点は覚えておくべきでしょう。また「統合報告書」(Synthesis Report)は「採択された」もので、「セクションごとに議論された」ことを意味しています。今年は4,000ページ近くに及ぶ報告書が「受理」されます。これは、「統合報告書の『技術要約』(Technical Summary、より専門的で詳細な情報が記載されている)および各セクションが、対象となる事柄について包括的、客観的、かつバランスのとれた見解を示している」と双方が同意することを意味します。

つまり──今回公表された内容は、2013年に公表された前回の報告書以来、進展が見られないと非難する報告書に、195カ国の政府が署名したことを意味するのです。

How have governments reacted?

各国政府はこう反応した

繰り返しになりますが、今回の報告書は「受理」されています──つまり、195カ国の政府が認めたことになります。ほとんどの国は、今後の温暖化対策の発表をCOP26まで待つことになるでしょう。

ただし、いくつかの国は、報告書の発表と同じタイミングで独自の声明を出し、気候変動を食い止めるための取り組みを強調し、さらなる共同行動を呼びかけています。以下、紹介しましょう。

英国の場合

11月のCOP26のホスト国である英国が、気候変動に関する世界的な話し合いにおいて果たす役割は大きなものです。ボリス・ジョンソン首相は次のように述べています

「本日の報告書は、わたしたちの地球の未来を確保するために、今後10年間が極めて重要であることを明確に示しています。地球温暖化を抑制するために何をすべきか。それは明確です──石炭を過去のものとし、クリーンなエネルギー源にシフトし、自然を保護し、最前線の国々に気候変動対策資金を提供することです」

米国の場合

米国は、歴史的にみても世界最大のCO2(最も一般的な温室効果ガス)の排出国であり続けています。米国の気候変動研究機関・世界資源研究所(WRI)によると、2018年時点で世界第2位の温室効果ガス排出国でした。ドナルド・トランプ前大統領のもと、米国は2015年のパリ気候協定から脱退しましたが、今年初めに同協定に再加盟しています。

IPCCの報告書を受けて、ジョー・バイデン大統領は次のようにツイート。

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Image: VIA TWITTER

気候危機への取り組みは「待ったなし」。科学的に否定できないし、その代償はどんどん大きくなっている。(抄訳)

気候変動担当大統領特使のジョン・ケリーは、「いまこそ行動を起こすべきであり、グラスゴーはこの危機の転換点となるだろう」とツイートしています。

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Image: VIA TWITTER

IPCCの報告書は、これ以上の遅延が許されないことを示している。気候危機はいまここにあるだけでなく、ますます深刻化していることは明白だ。(抄訳)

フランスの場合

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は「憤りの時は過ぎた」と述べ、「いまこの瞬間の緊急性に見合ったグラスゴーでの合意」を求めるとツイートしています(ツイート中の「GEIC」は、IPCCのフランス語表記:Le Groupe d’experts intergouvernemental sur l’évolution du climatの頭文字から)。

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Image: VIA TWITTER

IPCCの報告書は決定的なものだ。フランスは行動する者の側に立ち続ける。(抄訳)

インドの場合

インドのナレンドラ・モディ首相は、いまのところIPCCの報告書に対して沈黙を守っています (WRIによると、2018年、インドは温室効果ガス排出国として世界第4位にありました)。

インドの環境・森林・気候変動担当大臣であるブペンダー・ヤダヴは、世界の温室効果ガス排出量について、先進国と後進国とのあいだにある長きにわたる不均衡に注目しています。そのうえで、この報告書は、インドが「経済成長から排出量を切り離す道を順調に歩んでいる」ことを示す「証拠」であるとツイートしています。

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この報告書は、先進国に対して、早急に大幅な排出削減と脱炭素化を行うよう明確に呼びかけている。(抄訳)

中国の場合

中国政府も、IPCCの報告書についてまだ声明を出していません。

WRIによると、中国は、2018年時点で世界最大の温室効果ガス排出国。IPCCは気候変動の影響によって異常気象がより一般的かつより深刻になると予測していますが、中国はまさにその一例、深刻な洪水に頻繁に見舞われています

中国は最近、2060年までに排出量をゼロにすると宣言するなど、気候変動対策に意欲的に取り組んでいます。ただし、石炭への依存度を減らすのに苦労しており、一部の国からは、中国にはもっとできることがあると言われています


Column: What to watch for

表紙の人はグレタ

Greta Thunberg pets a horse in the forest in her Vogue Scandinavia cover
Greta Thunberg for Vogue Scandinavia.
Image: Alexandrov Klum/Vogue Scandinavia

8日(現地時間)に発売となったスカンジナビア版『ヴォーグ』の表紙を飾ったのは、18歳になったグレタ・トゥンベリでした。同誌のインタビューにおいて、ファストファッションを購入する消費者は「業界が『有害なプロセス』を続けることを助長している」と語るトゥンベリは、ファッション業界の“見せかけ”の環境意識を、次のように指摘しています。

曰く、「ファッション業界は『サステイナブル』『エシカル』『グリーン』『クライメイトニュートラル』『フェア』といったイメージキャンペーンに多額の費用を投じ、あたかも責任を取り始めたかのように見せている」「これがグリーン・ウォッシュ以外の何物でもないということははっきりさせておきたい。いまある世界では、ファッションの『持続可能』な消費などありえない」。ちなみに同誌は「より持続可能な社会を目指して」オンラインでのみ発行されています

(翻訳・編集:年吉聡太)


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