Culture:進化するタトゥー

Culture:進化するタトゥー

Deep Dive: New Cool

これからのクール

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いまでは人びとのライフスタイルに溶け込んでいるタトゥーですが、それでも消えないものには不安も感じるし、入れてしまってから後悔することも。そんな悩みを解決してくれるタトゥーが誕生しました。

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Netflixでは現在、『タトゥーお助け隊』という番組が放映されています。この番組は、驚くほど最悪なタトゥーを入れてしまった人びとの「お直し」企画で、彫師が見事に失敗作を芸術に大変身させるというもの。どうしてこんなタトゥーを入れてしまったのか?と思わずにはいられないものがたくさん登場します。

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Image: PHOTO VIA TATTOO REDO(NETFLIX)

言い換えれば、タトゥーはそれほど米国においてはすでにカジュアルで、ライフスタイルに溶け込んでいるものなのです(東京五輪を見ても、多くの外国人選手がタトゥーを入れていました)。

ABOUT TATTOOS

米国でのタトゥー事情

現在、米国人の46%が少なくとも1つのタトゥーを入れていて、2021年までの5年間で、ミレニアル世代の約半数が一度はタトゥーを入れたことがあるとされてます。

タトゥーアーティスト業界は急速に拡大し、カウンターカルチャーのニッチな分野からビッグビジネスへと発展しています。IBIS Worldのレポートによると、 2万9,805に及ぶタトゥーアーティストがビジネスを行っており、タトゥーアーティスト業界の売上高から産出される市場規模は2021年時点で約14億ドル(約1,547億円)もいわれます。 2016年から2021年にかけて年平均9.2%の成長を遂げています。

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2015年のハリス・ポール(Harris Poll)の調査によると18〜35歳までの47%が少なくとも1つ、37%が少なくとも2つ、15%が5つ以上のタトゥーを入れていると推定されます。これに対し、X世代でタトゥーを入れているのは36%、ベビーブーマーにいたっては13%にまで下がります。

また、タトゥーを入れた成人の3分の1が「タトゥーを入れたことでセクシーな気分になった」「魅力的になった」と回答していますが、前者については2012年の30%からわずかに増加した程度。同じ年、後者は21%でした。約4分の1(27%)は「反抗的な気分になる」、10人に2人(20%)は「スピリチュアルな気分になる」と回答していますが、タトゥーを入れたことで「自分がより強くなった」と感じる人はほとんどいません。一方で、「知的になった」(13%)、「尊敬されるようになった」(13%)、「雇用されるようになった」(10%)、「健康になった」(9%)と答えた人もいます

米国人にとって、タトゥーがあることによる仕事への影響はないとの考えがあたりまえ。86%の人がスポーツ選手にタトゥーがあることを問題だと捉えないように、IT技術者で81%、料理人で78%という高い割合から、小学校の先生と裁判官はそれぞれ59%、大統領候補は58%というなっています

story of tattooing

船乗りと深い関係

5,000年以上の歴史をもつタトゥーは、人類史そのもの。とくに米国におけるタトゥーについていえば、18世紀後半に遡るようです。ポリネシアのボディアートに触れた英国海軍の船員が(「タトゥー」という言葉は、ポリネシア語の「tatau」に由来)、タトゥーを欧州や米国の船員たちに伝えたことで広まったと言われています。当時、英国人船員の3分の1、米国人船員の5分の1が少なくとも1つのタトゥーを入れていたといいます。19世紀には捕鯨船の遠征や長期の貿易航海がきっかけとなり、タトゥーは海軍や商船の船員の間に広まり、彼らから陸軍の船員へと広がっていきました。

その後、海軍にとってのタトゥーはさまざまな意味をもつように。「オールドスクール(伝統的なアメリカンタトゥー)の父」と称される彫師、セーラー・ジェリーの名がよく知られています。1970年代から80年代にかけてサブカルチャーの象徴となり、現在ではメインストリームで広く受け入れられる「アート作品」へと進化しています。『The Atlantic』の論説はこの変化を、「90年代後半から2000年代前半にかけてのインターネットの爆発的な普及と、それに伴う仕事の仕方/遊び方の変化と一致していると」と指摘しています

また、いまとなっては「自己表現」のひとつとして入れられているタトゥーですが、そもそもタトゥーは、「必ずしも自己を追求するための手段ではなかった」ともされています。例えばアメリカ独立戦争後の数年間、船員が英国海軍に強制的に入隊させられるのを避けるための手段としてタトゥーが利用されていたといいます。

HOT AND COOL

若者とタトゥー

現代の若者に注目してみましょう。

Ypulseのデータによると、多くの若者がタトゥーを入れたいと考えているようです。現在タトゥーを入れていない13〜17歳の41%、18〜35歳の27%が将来的にタトゥーを入れることに興味をもっています。すでにタトゥーを入れている人は、自分のタトゥーを誇りに思っているという回答に。85%の人が「いつかタトゥーを消すつもりだ」という意見に同意せず、89%の人が「自分のタトゥーを見せることを誇りに思う」と答えています

デザインと感情面のつながりは非常に強く関係していて、彼らのうち88%の人が「感情的な意味があるからタトゥーを選んだ」と回答し、「かっこいいから選んだ」という割合よりも多くなっています。ちなみに、13〜35歳までが入れている人気のタトゥーとして、動物や昆虫、鼻、太陽や月、星、名前、そしてクオート(引用)などが上位にランクインしています。

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若者にとっては、大きく入れるものより、足もとや手もとなどにアクセサリーのように小さく入れる「スモールタトゥー」がトレンド。モデルのケンダル・ジェナやヘイリー・ビーバーをはじめ、最近では女優のジュディ・デンチが、81歳の誕生日に手首にスモールタトゥーを入れたというニュースも話題になりました

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Image: PHOTO VIA @haileybieber OF INSTAGRAM

Tattoo for a Year

試してみたい!

タトゥーに興味がある、でもやっぱり後悔してしまうかも……と思う人もいるでしょう。米国皮膚外科学会の報告によると、2010年以降、68万7,450個のタトゥーが消されたといいます。これはタトゥー全体のごく一部ですが、その処理には手間と費用がかかってしまいます。

そこでいま、若者を中心に話題になっているのが、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に1年で消えるタトゥーを展開する「エフェメラル・タトゥー」(Ephemeral Tattoo)です。新しくオープンしたこのタトゥーショップは、一般的なタトゥーと同じ方法で施され、見た目も同じですが、9カ月〜15カ月しか持続しないタトゥーで業界に革命を起こしています。つまり、一生の約束をしなくとも、ちょっとした遊びの気分でタトゥーが実現できます。

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Image: PHOTO VIA EPHEMERAL TATTOO

『Wallpaper*』によると、その秘密は、2人の化学技術者と皮膚科医のチームが社内で開発した、独自のインクにあるといいます。一般的なタトゥーが永久に残るのは、インクの粒子が大きすぎて体が分解できないからです。エフェメラル・タトゥーも同様の仕組みですが、粒子が小さいため、体内で分解・吸収されます。6年の歳月をかけて開発されたこのインクは、FDA(米国食品医薬品局)が承認した生体適合性と生分解性のポリマーと染料を使用しており、ほとんどの肌タイプに安全に使用することができるといいます。

『Bloomberg』によると、このエフェメラル・タトゥー、ブルックリンのウィリアムズバーグに最初のスタジオをオープンしてからわずか4カ月で、資金調達ラウンドで2,000万ドル約2.2億円)を調達しました。シリーズAラウンドは、コナー・マクレガー(Conor McGregor)が支援する人気のスポーツリカバリーシステム「TIDL」にも投資しているAnthos Capitalがリードインベスターになっています。資金調達が実現した背景には、永久的なタトゥーを入れられない人たちのあいだで、TikTokを通じて広まったことも影響しているとのこと。同社は声明の中で、オープン以来、予約数が毎月倍増していると述べています。現在、7~8カ月待ちとなっているといいます。

わたしたちが解決した(永久的にタトゥーを入れられないという)問題は、誰もが感じていたことでした」と、最高経営責任者のジェフ・リュー(Jeff Liu)は、『Bloomberg』に対して話します。同社が実施した第三者機関による調査によると、6,000万人の米国人がタトゥーを検討したことがあるものの、文化的・宗教的な理由、家族の反対、単なる優柔不断などの理由で、永久的なものであることに躊躇していることがわかったといいます。

調達した資金を利用し、カラーインクの開発(現在は黒のみ)と今年の秋には、ロサンゼルスにも新たな店舗をオープンする予定だというエフェメラル・タトゥー。お試しでタトゥーを入れてみたい人にとっては、ちょっとした楽しい冒険にもなりそうです。


COLUMN: What to watch for

大麻の「依存」増加

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大麻業界は、着実に若者を味方につけています。YPulseの調査によると、2018年から2021年にかけて、20~38歳の大麻消費量が明らかに増加していることがわかりました。この世代では、大麻の使用がより主流になり、明らかに一般的になっています。同じ期間に、大麻が人の健康や幸福に極めて有害であると考えるミレニアル世代の数は22%から14%に減少し、まったく有害ではないと感じる人の数は9%から21%に増加しています。

定期的な使用に関しても、この2年間で大幅に増えています。パンデミックの際、マリファナを毎日使用していると答えたミレニアル世代の数は、2019年の3%から2020年には14%へと大幅に増加。COVID-19のストレス、そして逃避したいという欲求が明らかなトリガーとなっています。現在、彼らの日常的な使用は減っていないことがわかっています。また、日本でもここ数年で広まっているCBDに関しても、米国では売上増加が報告されています。

Leaflyの調査によると、2020年に米国人が合法的な大麻に費やした金額は180億ドル(約1.98兆円)近くに達し、前年比で67%増加。また、9つの州では売上が前年比で2倍以上に。大麻業界の「黄金時代」はもうまもなく始まります(ちなみに、米大手メディアのBuzzFeedが、大麻ブランド「Goodful」を立ち上げたと報じられたばかりです)。


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