Deep Dive: Future of Work
「働く」の未来図
Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週木曜午後のニュースレターでは、「働くこと」のこれからについてのアイデアや出来事をお届けしています。今日のニュースレターでは、コロナ禍を経て見直されているエッセンシャルワーカーの労働状況についての最新情報を。
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いま、全米で深刻化する労働力不足が、食品業界にも波及しています。食品業界は、従業員の待遇の点で大きな課題を抱えてきました。そんななかで米国最大の食肉加工会社タイソン・フーズ(Tyson Foods)が発表したのは、労働者を惹きつけ、維持するための職場環境の改善への取り組みです。
9日(現地時間)の決算説明会で、タイソン・フーズCEOのドニー・キングは次のように語っています。
「労働力こそがわたしたち最大の課題です。われわれは、タイソンを最も働きがいのある会社にするための取り組みを加速させています」
Workplace conditions
タイソンの劣悪
より詳細に語ったところによると、次のような内容でした。
アーカンソー州に本社を置き、12万人以上の従業員を擁する同社は、時給を22ドルまで引き上げる。一部の工場では保育施設を試験的に設置し、診療所を増設し、教育手当を拡充し、柔軟なシフト制を導入し、業務のうち最も困難な部分を自動化するテクノロジーに投資する──。
COVID-19規制が緩和されたてレストランやホテルに起きたのは、需要の急増でした。結果、タイソン・フーズではとくに食肉加工工場の人員不足が続いています。人手不足ゆえに「これまで5日でできていた仕事をするのに6日かかっている」と言うCEOのキングは、デルタ株による感染が拡大し、労働者の足がさらに遠ざかっているとも付け加えています。
そもそも食品・農業関連の労働者は、コロナ感染リスクが非常に高いとされてきました。というのも、彼らは保険に加入していないこと、住宅環境が過密状態にあることが多く、労働環境も過酷です。
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先週、タイソン・フーズがオフィスおよび工場で働くすべての労働者にワクチン接種を義務付ける方針を発表したのも、このためでした。ワクチンを接種した時間給労働者への200ドルの奨励金支給も始まり、パンデミック以来、同社は安全衛生対策に約7億ドルを投資してきたとしています。
今回のパンデミックは、劣悪な環境で働かなければならないエッセンシャルワーカーと、自宅で仕事ができるワーカーそれぞれの待遇の間にあるギャップを露呈することとなりました。いま労働市場に目をやれば、ワーカーはみな一様に、より安全な仕事を求めています。雇用者側は、とくに低賃金労働者に向き合うときに、給与や福利厚生を通じた職場環境の改善に取り組まざるをえなくなっています。賃金が高いだけでなく、より安全で負担の少ない仕事が求められるいま、タイソン・フーズのような企業にとって新たな労働力を得るのは特に困難になっているといえるでしょう。
long before Covid-19
Covid-19以前から
タイソン・フーズが賃金・労働条件の改善を誓約するに至ったのは、米国の食肉産業の労働条件をめぐり規制当局やアクティビストが長年にわたり監視してきた結果だといえるでしょう。もっとも、同社が労働者の状況を改善することに合意したのは、今回が初めてではありません。
2017年、反貧困を掲げる非営利団体オックスファム・アメリカの報告書によると、米国の大手食肉事業者(鶏肉)4社(タイソン・フーズ、サンダーソン・ファームズ、パーデュー・ファームズ、ピルグリム・プライド)の労働者のなかには、トイレ休憩禁止が常態化するなか大人用のオムツを着用して仕事をさせられている人もいたことがわかっています。これを受け、タイソン・フーズはオックスファムや全米食品商業労働組合と協業。労働者のケガや病気を減らすだけでなく、工場にトレーナーを雇うなど、職場の改革を約束しました。
その工場にあるのは、米国でも最もケガをしやすい仕事です。鶏肉加工には、切ったり吊るしたりといった作業が必要で、さらにスピードを求められることで手根管症候群のような疾患を訴えるケースも増えます。非営利団体Southern Poverty Law Centerの報告書によると、そこで働く人たちに求められる作業のスピード化は、切りキズや刺しキズといった外傷のリスクも高めます。
とはいえ、この業界の労働環境は、確実に安全なものになってきているのも事実です。米国労働統計局のデータによると、屠殺・加工における傷害事故発生率は、フルタイム従業員100人あたり4.3件だった2018年に比べ、翌年には4.0件に減少しています。ただし、それでも全民間雇用者の100人当たり平均は2.8件でした。
COLUMN: What to watch for
WeWorkに光明
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商業不動産大手のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)がWeWorkへの出資を検討していることを『Wall Street Journal』が報じています。伝えられている出資金額は1億5,000万ドル(約166億円)で、この合併がなされれば、WeWorkの時価総額は90億ドルになると予想されています。
不動産管理会社Kastle Systemsのデータによると、米国の10大都市のビルの平均稼働率は34%。デルタ株の感染拡大もあって、オフィスへの回帰はいまだ順調とはいえません。そんななかで利益を得るべく、商業用不動産会社からのコワーキング系のスタートアップへの接触が増えています。2月には、商業用不動産サービス会社CBREが2億ドルを投じて、WeWorkの競合企業であるIndustriousの35%の株式を取得。さらにその1カ月後には、世界的な商業不動産サービス会社であるニューマーク・グループがコワーキング企業Knotelの買収を発表しています。
(翻訳・編集:年吉聡太)
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