Deep Dive: Crossing the borders
グローバル経済の地政学
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Quartz Japan読者の皆さん、こんにちは。毎週木曜は、グローバル経済のいまを読み解くニュースをお届けしています。今朝のニュースレターDaily Briefでも伝えたアフガニスタンの問題をもう少し詳細にお伝えします。
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首都カブールを占拠し、アフガニスタンを実質的な支配においたタリバンは、17日(現地時間)、シャリア(イスラム法)の枠組みの中で女性の政府参加を認めることを宣言しました。
タリバンは、これまでの声明においても国内の女性の安全を確保することを約束し、女性の勉学や労働の権利を尊重すると約束しています。
しかし、現場の現実はその約束とは異なるものでした。ビルボードに掲載された女性の写真は白く潰されたこともあれば、女性の著名人は脅されあるいは職場を追われてもいます。過去数年にわたり、女性が苦労して獲得した権利は、往々にして失われてきたのです。
いまも多くの女性が、1990年代にタリバン政権下で直面した暴力的な抑圧に戻ることを恐れています。
A big step backward
かつて踏み出した一歩
この10年、アフガニスタンの女性たちがどれだけのことを成し遂げ、どれだけのことを失うリスクがあるのか。その象徴ともいえるのが、2011年以降50%以上増加した女性の労働参加です。

アフガニスタンがタリバン政権下にあった1996〜2001年の間、女性は勉強も仕事もゆるされませんでした。女性が職業をもつ権利、教育を受ける権利を主張できるようになったのは、国内情勢が安定してからの10年足らずの間に起きたこと。いまでは、例えば北西部に位置するヘラート大学の学生の大半を、女性が占めるようにまでなりました。
それがここ数日で、銀行で働く女性数人が脅され帰宅を余儀なくされる事態に。大学に通う女子学生にも同様の事態が起きています。カブール市中では女性の絵姿が白塗りにされ、現地からの報告によると、美容院などの商店は閉鎖されています。
タリバンは否定していますが、少女や若い女性が誘拐されたり、レイプされたり、武装勢力との結婚を強要されたりしているという報告も出始めています。現場の兵は上からの指示に従っていない可能性もあり、かつてのタリバン支配の最悪の記憶が蘇る──。アフガニスタン出身で初めて英国で選出された公職者、ペイマナ・アサドはカブールから避難した数時間後にQuartzの取材に応じて、そう語っています。
「いまアフガニスタンで起きていることは、この国を200年後退させることになる」。国内の女性権利団体、アフガン・ウィメン・ネットワーク創設者のマフブーバ・セラージは言います。
The immediate danger
わたしは殺される
タリバン政権に対して率直な意見を述べてきた女性。公的役割を担うようになった女性。そうした人たちは、今後、報復の犠牲者となる可能性があります。アフガニスタンには約250人の女性判事がいますが(全体の約10%)、その他多くの弁護士、政治家、ジャーナリストが命の危険にさらされています。この数週間で、すでに脅迫を受けたと報告する声がいくつも聞かれます。
政府の高官たちは、国外に脱出できました。しかし、行政・政治の役割を担っていた多くの女性たちが保護されずに取り残されています。アフガニスタン最年少で初の女性市長であるZarifa Ghafariは、英メディア『iNews』に対し、「彼らはわたしのような人間を狙い、殺すでしょう」と語っています。
Ghafariは、タリバンがカブールを占領して以来、公共の音楽放送はすべて休止され、女性は帰宅するよう言われているとも語っていますが、アフガニスタンの女性主導の報道機関『Rukshana Media』は、多くの女性レポーターが身を隠したり、匿名で活動し始めたりしていると伝えています。
What can be done for?
世界ができること
こうした状況を、早期に解決する道筋はありません。言えることは、まず何より、官僚的な手続きを廃してできるだけ多くの女性の身体的な安全を保証することです。
各国が難民を受け入れることは、根本的な問題解決にはなりません。ただ、事態は緊急時であり、そこには救える命があります。脅威にさらされているアフガニスタン人のための緊急ビザを提唱してきたSharifは、「できるだけ多くの人を国外に逃がすこと。官僚的な手続きはあとで考えればいい」と語っています。「官僚に命を救えるとは思えない。だからこそ、緊急ビザを発給して逃亡することを支持しているのです」
もっとも、それでタリバンに対して率直な意見を述べてきた知名度の高い女性たちを脱出させることができたとしても、拉致されタリバン戦闘員と結婚させられる可能性のある女性や少女を、あるいは次期政権の暴力を生きなければならない女性を支援する方法にはならないでしょう。
彼女たちを救うためには、国際社会がタリバン政権を承認せず、いかなるかたちであってもその正当性を認めないことが重要です。そのとき、タリバン勢力によるアフガニスタン侵攻を支援した国々──特にパキスタンに制裁を科すことも必要でしょう。暴力やテロは、国境を越えたパキスタンから発生しているのです。
COLUMN: What to watch for
難民を受け入れる国
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ウガンダが、アフガン難民2,000人を一時的に受け入れることになります。これはウガンダの救済・災害対策・難民担当大臣が国内紙『Daily Monitor』に対して明らかにした内容で、ヨウェリ・ムセベニ大統領は米国からの要請を受け、難民を3カ月間ウガンダに滞在させることを承認したと伝えられています。
ウガンダは、アフリカでも最も多くの難民を受け入れている国です。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ウガンダには約150万人が亡命しています(そのほとんどが隣国の南スーダンからの難民)。ウガンダは、教育、労働、財産の所有など、難民に多くの権利を与える政策で知られています。
(編集:年吉聡太)
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