Deep Dive: New Cool
これからのクール
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ポルノコンテンツを売り買いする「OnlyFans」に起きたことは、いま脚光を浴びるクリエーターエコノミーの抱える課題を浮き彫りにしました。
「OnlyFans」は、英国発のサブスクリプション型のD2Cプラットフォーム。セックスワーカーの、いわゆるクリエイターエコノミーへの参入を可能にしたサイトです。パンデミック時に急成長し1億3,000万人のユーザーを獲得し、2020年には売上20億ドル(うち20%を手数料として徴収)をあげています。
この言わずもがなのポルノプラットフォームが、その主力商品であるポルノから撤退するというニュースを『Bloomberg』が最初に報じたのは19日のことでした。
報道によるとOnlyFansは10月1日から「性的に露骨な行為」を扱うすべての動画を禁止する予定とされていましたが、今週25日、計画の中止を明らかにしています。
同日、OnlyFansは次のようにツイートしています。「さまざまな声を聞かせてくださり、ありがとうございます。われわれは多様なクリエイターコミュニティをサポートするために必要な保証を確保し、10月1日に予定していたポリシー変更を中止しました」
OnlyFansにいったい何があったのでしょうか? そしてこの紆余曲折にどんな示唆を読み取ればいいのでしょうか。
an instant destroy
砂上の楼閣
当初、ポルノ禁止の決定について同社広報担当者は「取引銀行やペイアウト・プロバイダーの要望に応えるため」だと説明していました。
これは、インターネット上のプラットフォームにおいて、どんなコンテンツが許可されどんなコンテンツが禁止されるかを事実上決定するのはクレジットカード会社や決済代行会社などの金融サービス会社になりつつある、ということを示しています。つまり、クリエーターエコノミーにゲートキーパー(門番)が形成されつつあるわけで、インターネット上のプラットフォームに収入を依存しているクリエーター(特にアダルトコンテンツの提供者)にとって、今回の突然の変更は、再び/どこでも起きうる事態なのです。
今回の騒動は、クリエーターがプラットフォームに依存することの危うさを露呈したものといえます(ソーシャルメディアの台頭以来、繰り返し言われることですが)。OnlyFansに限らず、SubstackやPatreonなどが台頭して以来、クリエーターには有名になってお金を稼ぐチャンスが訪れました。しかし、唐突にルールは変えられ、プラットフォームの気まぐれに左右されてしまうのです。
OnlyFansがポルノ禁止を撤回したのは、クリエーターが強力な発言力をもっていることの証だといえるかもしれません。ですが同時に、プラットフォームはそこに依存している多くの人びとの生活を一瞬にして破壊しうることも、明らかになったのです。
Backpage and Pornhub fell first
Pornhubの陥落
昨年、VisaとMastercardはオンラインポルノ大手「PornHub」との関係を絶っています。これは、PornoHubが児童虐待や合意のないセックスを撮影した動画の拡散を放置しているとする批判を受けたものでした(この批判については、ニコラス・クリストフによる『The New York Times』のコラムに詳しい)。遡ること2019年には、PayPal(ペイパル)がPornoHubに対するサービスを停止しています。
各クレジットカード会社との関係を絶たれたPornoHubが頼ったのは暗号通貨です。現在、PornHubで“独占コンテンツ”を購入するのに利用できるのは、銀行口座での直接取引か、Cosmo Paymentという企業が扱う暗号通貨だけ。同様のことがセックスワーカーに人気だったオンライン・クラシファイド広告事業を運営するBackpageにも起きています。同社は2015年にVisaやMastercardといったクレジットカード会社から切り離された後、2018年に米国当局によって閉鎖されるにいたっています。
一方のアダルトパフォーマーたちは、こうした決定は虐待被害者の助けにならないと主張しています。収入を得るための合法的なプラットフォームを求めるセックスワーカーたちをさらに窮状に追いやるものだというのです。
アダルト・パフォーマー・アクターズ・ギルド(APAG)の会長であるアラナ・エヴァンスは8月20日、OnlyFansが方針を変えた「本当の理由」のひとつは、Mastercardからの圧力だと記しています。これまでにも、電子フロンティア財団のようなデジタル権利活動団体が、決済会社はオンライン上の言論を取り締まろうとしていると主張したり、アメリカ自由人権協会はPayPalやVenmoによるセックスワークの禁止は、すでに弱い立場にある人々を危険にさらしていると批判したりしています。
しかし、変化は着実に起きていました。Mastercardは、10月15日から適用されるものとして、アダルトコンテンツを対象とした新しいポリシーを発表しています。この新ルールでは、Mastercardの支払いを受けるアダルトサイトは、アダルトコンテンツに登場する人物の年齢と身元を証明することや、公開前のコンテンツ審査を行うこと、クレームへの対処や不服申し立てについて厳密なプロセスを提供することが求められます。同社は今年4月の発表で、「インターネット上にコンテンツをアップロードすることは、かつてないほど容易になっています」と述べています。「われわれの提示する要件は、こうした活動に伴うリスクに対応するものです。そしてそれは、強力なコンテンツ管理手段と、明確で曖昧さのない、文書化された同意から始まります」
今回のOnlyFansの紆余曲折について、Mastercardの広報担当者は、同社がOnlyFansにポリシー変更を直接要求してはいないと語っています(「これは彼ら自身が決めたことです」)。また、OnlyFansのペイメントパートナーであるVisaとDiscoverにもコメントを求めましたが、回答は得られていません。OnlyFansは、アダルトコンテンツ以外のクリエイターへの支払いにStripeを使用していますが、Stripeはポルノやその他の「わいせつ」なコンテンツを明確に禁止しているため、コメントを控えています。
COLUMN: What to watch for
新ドライブスルー
メキシカンタコスの人気チェーンTaco Bell(タコベル)は先週、米ミネソタ州ブルックリンに新しいドライブスルーレストラン「Taco Bell Defy」をオープンすると発表しました。Taco Bell Defyはドライブスルーレーンに加えて、モバイル注文やデリバリーサービスの受け取り専用のレーン3系統を完備。ドリンクやフードは、2階のキッチンからリフトシステムを経由して「約6秒でお客さまのもとに」届けられる仕組みです。Taco BellのCOO曰く「モバイル時代のドライブスルーを再構築」し「これからのタコベルの店舗のありかたを左右する」 新店舗の開業は、来年夏の予定です。
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