アフリカには、女性に対する性暴力が矮小化されてきた歴史があります。そしてそれは、どうやらこれからも続きそうです。
2018年にはケニアで現職知事によるとされる大学生レイプ殺人事件が、2020年にはナイジェリア・ベニン市の教会で若い女性が殺害された事件が報じられていますが、それぞれ見出しの直後には、女性が残虐な目に遭わないためにはどうすればよかったのかという、主に男性目線の説教じみたことばが続きます。最近も、コートジボワールのテレビ番組では自称レイプ犯をゲストに招き、被害者がどのように苛まれるかをマネキンを用い実演していました。ジョークと笑いを交え、その合間に女性たちへの防犯アドバイスをしていました。
欧米には、「#MeToo」がありました。かたやアフリカには、ナイジェリア北部の女性たちが性暴力に抗議するために用いた「#wearetired」やフェミサイドの増加を批判するナミビア人の「#shutitalldown」のほか、フランス語圏では「#balancetonporc」、南アフリカ人やケニア人、ナイジェリア人が凶悪犯罪に声を上げた「#uyinene」、「#justiceforsharon」、「#justiceforUwa」などがあります。ウガンダでは「#wearthatmini」、セネガルでは「T’étais habillée comment?」、ケニアでは「#mydressmychoice」が使われています。
上述したコートジボワールのTVショーに対する反発は、ことのほか早く動きました。番組に反対するオンライン請願書には5万人以上の署名が集まり、ソーシャルメディアでは「#jesuisunevictime」で暴行を受けた自らの経験を共有しました。番組の司会者は解雇され、放送局は謝罪を表明し、自称レイプ犯は、自分は番組に雇われた役者だと主張しています。司会者も自称レイプ犯も罰金を科せられ、懲役刑を受けることになりました。
ソーシャルメディア上の運動は、不正と闘う人びとに対して、自分が置かれている窮状を伝える能力を与えています。同時に、自分と一緒に立ち上がってくれる人がいるという安心感も与えているのです。
Stories this week
今週のアフリカ
- クルマの有鉛ガソリン使用が終了。8月30日、国連環境計画(UNEP)はアルジェリアでの有鉛ガソリン販売中止を受け、世界中の陸上交通における有鉛ガソリンの使用が終わりを迎えたと発表しました。数十年にわたって発展途上国の公衆衛生問題の大きな原因となっていた有鉛ガソリンの埋蔵を終了しました。特に有害な化石燃料を世界中で使い果たしたことの意味を説明します。
- 進化するパンデミック。南アフリカで発見された新たな新型コロナウイルスの亜種「C.1.2」が、科学者たちによって特定されました。C.1.2は、アフリカだけでなく、アジア太平洋地域の7カ国で確認されています。ウイルスは急速に進化し、アフリカでは感染者が急増しています。
- ナイジェリアの成長を鈍らせる悪手。ナイジェリアの第2四半期のGDP成長率は5.0%で、プラス成長となりました。成長を牽引したのは小売分野(22.5%)ですが、5.5%の成長に留まった情報通信分野については、政府のミスステップが目立ちます。6月には国内でのTwitter使用が禁止されていますが、1日あたり推定600万ドルのコストがかかっています。
- 再考されるリモートワーク。パンデミックによってリモートワークが普及し、低所得国の人びとにも、遠隔地での仕事を確保する機会が増えました。これはもちろん歓迎すべきことですが、こうした流れは報酬や労働環境をめぐる不平等を悪化させる可能性も指摘されています。
- Wizkidが絶好調。8月最終週、ナイジェリアのスターWizkidの「Essence」がエド・シーランやリル・ナズ・X、ドージャ・キャットを抑え「米国で最もShazamされた曲」に。彼自身にとってはもちろん、アフロビートにとっての快挙といえるでしょう。
Dealmaker
今週のディールメーカー
- スマートフォンを使った販売・在庫管理機能を中小企業に提供するスタートアップBumpa(ナイジェリア、創業7カ月)が、プレシード資金として20万ドル(約2,200万円)を調達。Greencap Equity、HoaQ Club、Whogohostのベンチャー部門であるRizq Investment Group、Microtracwtion、DFS Lab、Aidi Venturesなどのほか、個人のエンジェル投資家も多数参加しています。
- Eコマース向けのBNPL(Buy Now Pay Later)サービスを提供するPayflex(南アフリカ)を、オーストラリアのフィンテック企業Zipが買収。買収額は非公開ですが、Zipは南アフリカを皮切りにアフリカ市場に本格的に参入すると思われます。
- Amenli、Payhippoをはじめとする13のスタートアップが、Y Combinatorのバッチに参加。各スタートアップは12万5,000ドル(約1,400万円)のエクイティ資金を受け取り、YCのデモ・デイ・プログラムに参加します。
Person of interest
アフリカ旬な人
6度の挑戦を経て、ハカインデ・ヒチレマがついにザンビアの大統領選で勝利を収めました。8月24日に就任式を行った新大統領は、返済すべき債務や鈍化する成長、インフレに悩む経済を背負い、難しい決断を迫られることになります。最初に取り組むのは、実質的なデフォルト状態にある同国経済を再編するためのIMFとの交渉になりそうですが、そのためには、すでに苦境に立たされている国民にさらなる打撃を与えるような緊縮策が必要になるでしょう。「Bally can indeed fix Zambia」(お父さんがザンビアの経済をよくしてくれる)という選挙戦のスローガンを、ヒシレマは実現できるのでしょうか。
Other things we liked
その他の気になること
- 電子通貨に一歩前進。ロイター通信によると、ナイジェリア中央銀行(CBN)が立ち上げようとしているデジタル通貨「eNaira」は、カリブ海のバルバドスに拠点を置くフィンテック企業Bittと提携して構築されることになります。Bittは、4月に開始された東カリブ中央銀行(ECCB)のデジタル通貨(「DCash」)の試験運用にも携わっています。
- 「ワクチン・アパルトヘイト」が進む。アフリカの人口のうち、ワクチン接種を完了しているのは2%にも及びません。そのため、すでにブースターショットの実施を検討している欧米諸国に対して不満が高まっていると、『アルジャジーラ』が伝えています。そんな状況にもかかわらず政府はワクチン生産や研究に投資していないと、科学者たちが怒りを露わにいます。
- 化石燃料にまつわるジレンマ。世界的には化石燃料からの脱却が求められていますが、ナイジェリアの副大統領イェミ・オシバジョは『Foreign Affairs』に寄稿し、化石燃料への投資からの撤退は「アフリカを潰すことになる」と主張しています。
- アンカラはアフリカに目を向ける。トルコのアフリカへのインフラ投資は活発で、セネガルのオリンピックサイズ・プール建築やニジェールの空港改築などさまざまです。その裏にあるのは経済的利益なのか、それとも戦略的な国家安全保障上の目標なのか。『The Christian Science Monitor』では専門家が解説しています。
- ポリオ撲滅を祝うのはまだ早い。ちょうど1年前、アフリカでの野生型ポリオウイルスの根絶が宣言されました。しかし、WHOアフリカ地域ディレクターのマチディソ・モティは、アフリカはまだこの病のリスクにさらされていると述べています。モティは『STAT』への寄稿で、パンデミック下においてもポリオ予防接種活動を止めてはならないと呼びかけています。
🎵 今週の「Weekly Africa」は、マリーナをフィーチャーしたルワンダのラッパー、ジェイ・ポリー(2日にアルコール中毒で急逝)の「Umusaraba Wa Joshua」を聴きながらお送りしました。ジェイ・ポリー、どうぞ安らかに。
📺 『Off Topic』とのコラボレーション企画、4回連続ウェビナーシリーズの第2回は9月28日(火)に開催。詳細はこちらにて。先日開催した第1回のセッション全編動画も公開しています。