DoorDash、Grubhub、UberEats。これらの企業は、「アプリを使って好きな食べ物を注文し、お安く届けてもらう」という実にシンプルなアイデアで人気を博すに至りました。この点について、異議を唱える人はいないでしょう。
しかし、パンデミックの発生で、これらの企業は大混乱に陥ることになります。状況は一転し、誰もがフードデリバリーに頼るようになりました。それまでこれらのプラットフォームを(拒絶とまではいかないまでも)容認していたレストランは、一夜にして収入の大半を失うことに。失業率は上がり、低賃金で働くギグワークにスポットライトが当たることにもなりました。
結果、デリバリー業界は米国内の規制当局に目をつけられています。この2週間だけでも、宅配会社は手数料の額やレストランと共有するデータをめぐって、サンフランシスコやニューヨーク市と衝突しています。
「パンデミック前、フードデリバリー企業は、規制・監視ともに非常に緩い状況を享受していた」と語るのは、金融会社DAデビッドソンのアナリスト、トム・ホワイト。「しかしいま、状況は大きく変わった」
実のところ、監視強化そのものは新しい動きではなく、とくにギグワーカーの待遇をめぐって議論が続いてきました。昨年11月に住民投票で可決されたカリフォルニア州条例(「プロポジション22」)は、ギグワーカーに従業員としての地位を認めないことを成文化したものでしたが、8月、同州の最高裁判所によって違憲とされました。先週にも、シアトル市議会では、配達員に最低賃金を保証する案が審議されたばかりです。
一方のUberのCEOダラ・コスロシャヒは、5月の決算説明会で、このような規制を危惧する声を一蹴しています。「そもそもわれわれには、地方自治体や地方の規制当局との関係性がある。むしろこうした対話が大歓迎だ」
しかし、先述したアナリストのホワイトの意見は異なります。既存の配車サービス業界は一枚岩ではなかったのに対して、「レストラン業界はまったく違う」と言うのです。「レストラン業界は組織化されていて、自由に使える財源をもった業界団体がある。政治家との関係も強い」
一部のデリバリー企業は、すでにレストランに対して段階的な価格設定モデルを導入していますが(それによって価格が高騰すると、その分のコストがユーザーに転嫁される可能性が高くなり、ユーザーにとって価値が損なわれてしまうことも)、訴訟沙汰にもつれこむケースも多々あります。料金の上限設定、最低賃金の要請、ギリギリまで切り詰められたマージン……デリバリー企業には、もはや打つ手がありません。
The backstory
変化のウラ側で
- フードデリバリーはビッグビジネス。英国の国際市場調査会社Euromonitorのデータによると、2019年に2,430億ドル(約26.7兆円)だったこの産業の世界市場は、2020年には3,230億ドル(約35.5兆円)にまで急増しています。
- 利益を出すのは非常に難しい。一般的なお金の流れ:デリバリー会社が顧客に手数料を請求するとともにレストランから請求額の一部を受け取り、それから配達員に支払をして収益を上げています。
- 課題はグローバル。インドでフードデリバリーを展開するZomatoはIPOに成功したばかりですが、収益性やビジネスモデルについて抱える問題は世界共通です。
What to watch for next
これから注目すべきこと
- さらなる料金競争が起きる。ニューヨークやサンフランシスコに続き、他の都市でもパンデミック下で高騰した配送料の上限を維持する可能性があります。この上限に従えば、注文によっては配送料だけで支払額の30%に達することも。
- データをめぐる争いは激化する。提出されている一連の法案にはデリバリー企業も異議を唱えていますが、成立すると、レストラン間で顧客の連絡先を共有したり、顧客間で料金明細を共有したりすることを認めざるをえなくなる可能性があります。
- 業界の統廃合? フードデリバリー企業は、すでに独占禁止法上の監視対象となっています。米国連邦取引委員会は、Uberが今年初めに行った2つの取引を調査していると言われています。
- プレイヤーは多角化を目指す。収益化を目指し、デリバリー会社は日用品や酒類などの分野にも進出しています。
- みんなにやさしいテクノロジーが生まれる。デリバリー会社は、配送をより高速化する方法、人件費を削減する方法を模索するでしょう。一方のレストラン側も、ハイテク化が進んでいます。
The dankest delivery
こっちのデリバリーも
現在、米国19州およびワシントンD.C.では大麻が合法化されています。UberのCEOも、連邦規制が通過しさえすればこの「デリバリーゲーム」に参入したいと語っています。昨年、カリフォルニア州を拠点とするマリファナデリバリーアプリを運営するEazeは、8秒あたり1回のペースで大麻の注文があったと発表しました。もっとも、Eazeの財務状況を見る限り、ここにも課題はあるようです。同社は2020年に資金不足に直面し、自社供給分の大麻販売に踏み切ることを決めています。
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