インドで起きている暗号通貨ブームが、新たな投資家層を生み出しています。積極的な十代の若者たちのお小遣いが、暗号通貨への投資の急増を後押ししているのです。
インドでの暗号通貨関連の投資は、昨年時点で9億2,300万ドル(約1,027億円)でしたが、5月には約66億ドル(約7,350億円)にまで成長。流行りの暇つぶしで莫大な利益を手にしようと、子どもたちがビットコインやその他トークンを購入しているのです。
「投資家としてみたとき、暗号通貨は自分の資産を飛躍的に増やすのに適した方法だと思います。ボラティリティの高さはリスク要因ですが、収益性の高さは大きなプラス要素です」(コルカタに住む17歳の学生、ハシール・フセイン)
パンデミックは、学習をオンライン化しただけではなく、さらにオンライン投資へと若者の心を動かしました。インドでは2018年にデジタルトークンの取引が禁止されましたが、昨年、その決定を取り消す最高裁の判決が下ったことも、暗号通貨への関心に拍車をかけています。
ティーンエイジャーのなかには、親を説得してデジタルトークンの取引に挑戦している人も多くいるようです。ただし、彼らの多くは慎重に取り組んでいて、“ヤケド”をしないためのヒントとして、「DYOR」(Do Your Own Research、自分でちゃんと調べようの意)の語がひろくシェアされています。
How teenagers are jumping into
暗号投資のはじめかた
インドでは多くの取引所が積極的に発信をしているので、暗号資産の投資初心者にとっても取引先の選択肢には事欠きません。「WazirX」や「CoinDCX」、「CoinSwitch Kuber」などのプラットフォームはSNSキャンペーンを行うとともに、ユーザーフレンドリーなインターフェイスのアプリを開発。スタッフは毎日のようにTwitterでユーザーと交流し、不具合があればすぐに対応しています。また、こうした動きとは別に、各取引プラットフォームは、ブロックチェーン技術や仮想トークンの利点について当局に働きかけてもいます。
暗号通貨取引所では18歳未満による取引を認めていません。しかし、若者の多くは、親の認証情報を使ってルールを回避しています。
前出の17歳、フセインはこう言います。「ぼくは、ブロックチェーンシステムが便利で未来的であることを目の当たりにしました。新しいイノベーションには、若いうちに投資したほうがいいですよね」
investors boast high returns
高いリターンを誇る
若い投資家にとって最大の魅力は、少額の投資で高い利益を得ることができることです。例えば、WazirXでは、100〜500ルピー(約150〜750円)という少額でのビットコイン投資が可能です。フセインが惹かれたポイントもまさにその点で、彼はこれまでに30%以上の利益を得ていると言います(ちなみに彼の戦略は、ビットコインを利益確定後に売り、その資金を他の暗号通貨に再投資するというものだとか)。彼は、数カ月間の取引を経験し、最近は、より機能性が高いという世界最大の取引所「Binance」に投資先を移したようです。
パンジャブ州に住む19歳の医学生、プラバ・シムランは、これまでの取引で1,000%のリターンを得たものもあると言います。「銀行預金だと、1年かけて5%の利益しか得られません。まず、両親に暗号通貨を信じてもらえるように少額の投資から始めましたが、両親とも気に入っているみたいですね」
シムランにとって魅力的なのは、利益だけではありません。彼は、ブロックチェーンエコシステムの運営方法に関する投票権を保有者に付与する「ガバナンストークン」にも期待していると言います。自ら市場を形成できる立場を得られるという事実は、十代の彼の目に輝かしく映っているようです。
India’s unclear stance
政府の曖昧なスタンス
先述の通り、インド最高裁は、暗号通貨事業体を扱う銀行に対する規制を撤廃する決定を下しています。このことから、当局はデジタルトークンやブロックチェーン技術に必ずしもネガティブなわけでないといえるでしょう。しかし、若い投資家の多くは、まだ見ぬ潜在的な規制に備えています。彼らは、インドに適切な規制がないことが、デジタルトークンを広く採用するための障害になっていると考えているのです。
インド議会では現在、暗号通貨法案の作成が進められていますが、法案の提出時期や内容はまだ明らかになっていません。インド当局が懐疑的なままなのは、世界的な暗号通貨ブームのなかで、フェイクの取引プラットフォームが生まれ、しばしば詐欺行為が行われているからです。
ティーンエイジャーのなかには、突然禁止令が出されても自分の投資を守れるよう、国内外の取引所に複数の取引口座をもつなど、すでに対策を練っている人もいます。例えばシムランの場合、彼は、投資した暗号通貨を海外の親戚に送り、現金化してもらおうと考えています。
「なくなっても困らないくらいの金額しか投資してないのもありますが、政府が禁止したとしても、資金を現金化する窓口くらいは用意してくれると思っています」
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