Africa:リモートワークのユニコーン

Africa:リモートワークのユニコーン
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アフリカの人びとにソフトウェアエンジニアリング教育を提供するアカデミーとして7年前に創業したAndelaは、これまで7度、VCから資金調達しています。そしていま、同社はソフトバンクが主導した投資ラウンドで2億ドル(約222億円)を調達し、その評価額は15億ドル(約1,667億円)に達しました。

ユニコーン企業となったAndelaは、スタートアップ時代のAndelaから進化を遂げています。最初の転機は2019年、米国でジュニア開発者の需要が減ったことに合わせてアカデミーを閉鎖したときです。いまでは事業をビジネス・プロセス・アウトソーシングBPO)一本に絞り、テック業界の優秀な人材を見つけ、スクリーニングし、企業に送り込んでいます。

さらに、アフリカのオフィスを閉鎖し完全なリモートワークに移行して1年が経った2021年5月、Andelaはタレントプールを拡大しアフリカ内外80カ国のエンジニアと契約を結びました。今後はエンジニアだけでなく、企業がデザイナーやデータエンジニア、さらにはSalesforce 認定デベロッパーを採用する手助けもしていく予定だと言います。

Andelaの最高経営責任者(CEO)であるジェレミー・ジョンソン曰く、Andelaの次のフェーズではM&Aをおこない、世界最高峰のマーケットプレイスになるという野望をさらに推し進めていくとのことです。いまは、それにうってつけのタイミングだと言えます。この1年の新型コロナウイルスのパンデミックを経て多くの企業が、リモートワークが可能なこと、費用対効果も高くなりうることを確信するに至ったからです。

ジョンソンとそのチーム(アフリカのオフィスには、まだフルタイムのスタッフが数名残っています)がそのポテンシャルを発揮すれば、次の大きな発表の場はニューヨーク証券取引所になるかもしれません。とはいえ、すぐに新規上場の鐘を鳴らすことはないとジョンソンは語っています。

──Alexander Onukwue, West Africa correspondent


Stories this week

今週のアフリカ

From behind, two men carrying plastic bags walk on a dusty path, with one's hand on the other's shoulder.
In Kenya, gay sex is punishable by 14 years in prison.
Image: Peter Murimi
  1. 同性愛を描いた映画がケニアで上映禁止に。同性愛が違法とされるケニアで、同性愛のカップルを描いたドキュメンタリー映画『I Am Samuel』が上映禁止となりました。これをきっかけに、検閲や言論の自由、そして植民地時代の法律に対する疑問が投げかけられています。
  2. 資金調達の脱植民地化。市民社会組織(CSO)は、政府や民間企業が残した人道的、社会的なギャップを埋める重要な役割を果たしています。しかし、アフリカへの国際開発資金の提供は欧米の組織に有利な「植民地的アプローチ」をとっていることがVodafone Foundationの独自調査でわかりました。この報告書によると、海外からの寄付金のほとんどは北半球に拠点を置く国際NGOに送られており、アフリカの機関はいつまでたっても海外経由の資金提供に依存するよう設計されているといいます。これによりアフリカのCSOは、海外のCSOの資金提供を受けて特定の活動をおこなう下請け関係になってしまっていると警鐘が鳴らされています。
  3. パンアフリカ的な決済への第一歩。アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)のもとでアフリカ域内の貿易を容易にする長い道のりの第一歩は、シームレスな決済を実装することです。そのために、アフリカの金融機関は重い腰を上げる必要が出てくるでしょう。10月3日、アフリカ大陸の貿易金融機関であるアフリカ輸出入銀行(通称Afreximbank)は、アフリカ各国通貨での決済を可能とする決済プラットフォーム「PAPSS」の本格運用を開始しました。しかし、そのメリットを最大限生かすためには、各国の中央銀行の連携が不可欠になります。
  4. ジンバブエ、外貨取引を厳しく取り締まる。ジンバブエでは、ソーシャルメディアやモバイルマネープラットフォーム上の「違法な外貨取引業者」の取り締まりを進めています。こうした行為が、自国通貨の価値を下げているというのが当局の主張です。モバイルマネーによる取引が主流となっているジンバブエの経済にとって、これは大きな打撃になりうると専門家たちは予想しています。
  5. アフリカのモバイルインターネット普及率を見る。インターネットへのアクセスが主に携帯電話によっておこなわれるアフリカ。このたび発表された新たな報告書によると、モバイル・ブロードバンド・ネットワークがカバーしていない場所が最も多いのは、サブサハラアフリカ地域だといいます

CHARTING MOBILE MONEY Growth

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サブサハラアフリカの少なくとも11カ国で、5つ以上のモバイルマネーサービスが実装されています。いちばんサービス数が少ないのはケニアで5つ、最多はナイジェリアの17サービスです。世界には310のモバイルマネーサービスがありますが、その半数以上がアフリカで展開されているということです。

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そう考えると、サブサハラアフリカは世界のモバイルマネーの震源地と言えるでしょう。実際、過去10年にわたりそうした状況が続いており、アカウント登録数は11倍、一日あたりの取引額は13倍にまで伸びました。

このデータは、なぜ投資家がOPayやWaveといった企業に惹かれるのかを説明するものです。しかし、サブサハラアフリカの市場は、モバイルマネーに関する取り組みに投資したい投資家にとってさらに魅力的な市場になりえます


Dealmaker

今週のディールメーカー


Other things we liked

その他の気になること

  • シェルに石油流出の責任をとらせる。ナイジェリアでは、外国の持ち株会社が現地にある子会社の不祥事の責任を取ることを拒否するケースが多く見られます。しかし『The Guardian』のMaggie Andresenは、過失を犯した親会社を地域社会が訴えられるようになるかもしれない画期的な訴訟について報じています
  • 病院に低価格で酸素を供給する。新型コロナウイルスのパンデミックにより、酸素の需要が高まっています。こうしたなか、ケニアの起業家であるBernard Olayoは、病院の近くに小さな酸素プラントを建設する「ミルクマン・モデル」によって病院に酸素を低価格で供給していると、『Bloomberg』のDavid Herblingが伝えています。
  • 最も幸せな人びとの国のおはなし。アフリカ人作家として初めてノーベル賞を受賞したウォーレ・ショインカが、約50年ぶりに小説を上梓しました。『New York Times』のJuan Gabriel Vásquezは書評のなかで本作『Chronicles From the Land of the Happiest People on Earth』を「政治風刺と殺人ミステリーの融合」と評しています。これは、独立前から母国ナイジェリアのジェットコースターのような幸福の追求を独自の視点で見つめてきた、87歳になる折衷主義の作家らしい円熟の作品と言えます。
  • TikTokで大熱狂。夏のヒット曲を出したアフロビーツのスターがWizkidだけだと思っているなら、それはあなたがTikTokを使っていない証拠でしょう。いまTikTokではCKayの「Love Nwantinti」が人びとの心をつかんでいます。なぜこの若きナイジェリア人アーティストの2年前の曲がいまになって人気を得ているのか、Nelson C.J.が『Rolling Stone』誌で語っています。
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Image: VIA TIKTOK @ CKAY_YO

☑️ ICYMI

TODOリスト

  • 女性経営者のいまを知る。経営者向け教育のギャップを計るべく、 国連訓練調査研究所(UNITAR)が女性起業家を対象とした調査を実施しています。
  • クリエイターとしてもう一歩前進する。Netflixがアフリカで展開している奨学金プログラム「Netflix Postgraduate Scholarship Programme 2022」は、映画やテレビの分野で意欲的に活動する黒人クリエイターが正式な資格を取得したり訓練を受けたりといった機会を得られるよう支援することを目的としています。(申込締切は10月31日)

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こちらもチェック

エチオピア、戦争の圧力の中で投票を実施。先月30日、エチオピアの3つの地域で連邦議会の代表者を選出するための投票が実施されました。この選挙は6月から延期されていたもので、投票後にはアビィ・アハメド首相が新政府を樹立する予定です。今回の選挙では一部の野党がボイコットを表明しており、またアビィ首相がティグレ州での戦争をめぐって強い圧力を受けている中で行われました。


🎵 今週の「Weekly Africa」は、カーボヴェルデ共和国のZeca Di Nha Reinaldaによる「Tapu Ku Banganhu」を聴きながらお届けしました。日本版の翻訳は川鍋明日香、編集は年吉聡太が担当しました。


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