Africa:Whatsapp障害が起きた日のこと

Chatting up payments users.
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10月4日(米国時間)、「Facebook」や「WhatsApp」、「Instagram」が世界中で利用できなくなりました。6時間に及ぶこの世界規模の障害によってフェイスブックの株価は5%近く急落し、それに伴い市場価値は約500億ドル(約5兆6,800億円)下落。広告収入の損失は数百万ドル(数億円)に及びました。ある試算によると、フェイスブックの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグは、システムが1時間停止するごとに約10億ドル(約1,136億円)の損失を被ると言われています。なお、この障害は定期メンテナンスのエラーによるものであることが後に判明しました。

世界で最も急速に成長しているEC市場のひとつであるアフリカでは起業家たちが参入障壁が低く使いやすいソーシャルコマースを取り入れており、FacebookやWhatsApp、Instagram といったプラットフォームで商品やサービスを売買しています。これについては先日、Quartzリポーターのカルロス・ムレイティが詳報していますが、今回のFacebookの障害を踏まえるとこれ以上にないほどタイムリーな内容でした。

例えばある調査によると、ケニアの中小企業の92%がソーシャルコマースを利用してビジネスをしているといいます。ほかのアフリカ諸国でも、ソーシャルコマースがECの大半で活用されている国が少なくありません。

これは個人的な話ですが、WhatsAppのメッセージが読み込めなくなったとき、わたしはまずモデムを再起動しました。それでも改善しなかったので、次にスマートフォンを再起動しました。最終的にはパートナーに電話をし、彼が送った音声メッセージを「3Gがダウンしているようだ」という理由で再生できなかったことを伝えました。この問題の原因が、実はFacebookやWhatsApp、Instagramの世界規模の障害にあることに気づくまで、かなりの時間がかかったのです。

今回の障害に対する自分自身の反応に、わたしは考えさせられました。わたしたちがこれらのアプリに非常に依存していることはもちろんですが、それ以上にアプリの信頼性に対する思い込みも激しいのです。また、それぞれのアプリのユーザー属性も重要でしょう。わたしはWhatsAppが使えないことだけに気づきましたが、FacebookやInstagramが使えないことに気づいただけの人もいるはずです。

そして何よりも重要なことは、こうしたアプリの重要性が普段のコミュニケーションだけでなく、ビジネスにおいても増していることでしょう。特に新型コロナウイルスのパンデミックやそれに続くロックダウンにあって、アフリカ大陸はこのような障害に対して非常に脆弱なのです。

こうした状況はある問いを投げかけます。わたしたちは、このような障害がより一般的になる可能性のある未来にきちんと備えられているのでしょうか? その答えは間違いなく「ノー」でしょう。

──Ciku Kimeria, Africa editor

追伸。10月15日、『TechCabal』の編集長であるAdegoke Oyeniyiとアフリカにおけるデジタルメディアの進歩や今後の展望、そして課題について議論します。このインタラクティブなイベントは、デジタルメディアのベテランや志望者だけでなく、アフリカのテック業界で活躍するすべての人を対象としています。ご登録はこちらから


Stories this week

今週のアフリカ

  1. アプリで「写真映え」を探す。Facebookの大規模障害やTwitchのデータ流出など、この1週間はソーシャルメディア業界にとって激動の1週間でした。それでも起業家たちはこの業界に飛び込んでいます。例えば、Pinterestに似たナイジェリア発のアプリ「Backdrop」は、旅行好きが美しい景観を見つける方法を再定義しようとしています。
  2. グーグルがアフリカに10億ドル投資。アルファベットCEOのスンダー・ピチャイが登壇したバーチャルイベントにおいて、グーグルは今後5年間にアフリカでのさまざまな取り組みのために10億ドル(約1,136億円)を投じると発表しました。その重要な柱として、同社はアフリカ大陸で成長中のスタートアップへ5,000万ドル(約56億8,000万円)規模の投資をおこなうとしています。
  3. アフリカ大陸への文学賞。2021年のノーベル文学賞は、タンザニアのザンジバル生まれの小説家、アブドゥルラザク・グルナに授与されました。黒人のアフリカ人作家がノーベル文学賞を受賞するのは、1986年にナイジェリアの作家ウォーレ・ショインカが受賞して以来のことです。グルナは作品を通じて、東アフリカの複雑な植民地時代の歴史を探究しています
  4. 世界初のマラリアワクチン。世界保健機関(WHO)はマラリア予防のRTS,Sワクチン(通称「Mosquirix」)について、アフリカの子どもたちに広く使用することを推奨しました。毎年マラリアで亡くなる50万人のうちの大半がアフリカであることを考えると、今回の承認の意義は多大でしょう
  5. …一方で進まない新型コロナウイルスワクチン接種。WHOの意思決定機関は、「9月末までに各国の人口に新型コロナウイルスワクチンを接種する」という目標を設定していました。しかし、アフリカでこの目標を達成できた国は全体の3分の1もありません
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One big number

数字でみる

300,000

鎌状赤血球症(HbS症)をもって生まれてくる新生児の数。鎌状赤血球症は。世界で最も患者数が多い遺伝性疾患のひとつで、患者の中ではアフリカ人やアフリカ系の人々が占める割合が最も高くなっています。最近では20年ぶりに新しい治療法が導入されましたが、医療費の自己負担が多いアフリカにおいては治療費の高さが大きな課題です。


Dealmaker

今週のディールメーカー

  • チュニジアの投資会社であるAfricInvestが、ナイジェリアのRoyal Exchange General Insurance CompanyREGIC)の株を少数、取得しました(具体的な数は非公開)。REGICは、100年の歴史をもつRoyal Exchange Groupの損害保険部門で、ドイツ政府のInsuResilience Investment Fund(IIF)も株式を保有しています。
  • モロッコのスタートアップ企業であるChari500万ドル(約5億6,700万円)を調達しました。資金は小規模な小売業者向けのデジタルプラットフォームを構築するために使われるとのことです。このラウンドでの同社の評価額は7,000万ドル(約79億3,800万円)で、Rocket Internet、Global Founders Capital、P1 Venturesが共同で主導しました。
  • カメルーンの企業Ejaraは、アフリカのフランス語圏の金融システムに暗号通貨取引を取り入れるため、200万ドル(約2億2,700万円)を調達しました。今回のラウンドを主導したのはCoinShares VenturesとAnthemis Groupです。創業から1年のEjaraですが、すでにカメルーンやコートジボワール、ブルキナファソ、マリ、ギニア、セネガルで8,000人以上のユーザーを抱えているといいます。

Other things we liked

その他の気になること

  • エチオピア航空と武器輸送。CNNの調査によると、エチオピアのティグライ州での内戦中、エチオピア航空が隣国エリトリアとの間で武器を輸送していた疑いがあるといいます。これは、国際航空法違反にあたります
  • アフリカ映画の経済的可能性。ストリーミングサービスのおかげでアフリカ映画の需要が高まっています。『The Guardian』のEmmanuel Akinwotuによると、ある報告書では今後アフリカ大陸における映画産業の収益は現在の4倍にあたる200億ドル(約2兆2,700億円)まで成長し、クリエイティブ産業で2,000万人の雇用を創出できるという予測が出ているとのことです。
  • プライベート写真の流出が女性を苦しめる。ウガンダのファッションモデルJudith Heardは、この3年で2度にわたりスマートフォンからのプライベート写真の流出に見舞われました。流出の責任が彼女にないにもかかわらず、彼女はこの写真が原因でウガンダのポルノ禁止法に基づき起訴される可能性があるといいます。Priya Sippyが『Rest of World』に書いているように、これは東アフリカの女性が直面するジレンマです
  • アフリカのクリエイター経済。いまの時代、スマートフォンとインターネット環境があれば誰でもブランドを構築してお金を稼げます。しかし、あなたがどこからコンテンツを生み出し、それを誰が消費しているのかは重要です。David I. AdelekeはSubstackのニュースレター『Communiqué』で、アフリカのクリエイター経済を制約する課題と、それを好転させるための解決策について語っています。

🎵 今週の「Weekly Africa」は、マラウイ共和国のLawiによる「Zitsulo」を聴きながらお届けしました。日本版の翻訳は川鍋明日香、編集は年吉聡太が担当しました。


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