Obsessions:イカゲームのマーチ(と、Netflixの未来)

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世界で起きる『イカゲーム』ブーム。その熱狂に、ネットフリックスとウォルマートは手に手をとり、乗っかろうとしています。

アメリカ最大手小売のウォルマートは、ネットフリックス専用のデジタルストア開設。サイトではネットフリックス関連のTシャツやぬいぐるみ、グッズなどが並び、超暴力的な韓国サバイバルドラマ『イカゲーム』や、人気のオカルトシリーズ『ストレンジャー・シングス』などに関連した商品も手に入ります。

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Image: VIA WALMART

専門家は、この動きをブランディングとプロモーションの両側面からみています。『Quartz』の取材に対し、マーケティングサービス企業Rank SecureのCEO兼共同設立者、バラク・ラブンスキは、次のように語ります。

「ネットフリックス加入者はすでに2億人以上を数えます。さらに、日常生活で身につけられる商品を提供することで、作品はより個人的かつ具体的な方法で定着します。『ストレンジャー・シングス』のTシャツを着ることで、ファンはブランドのアンバサダー/プロモーターになるのです」

ネットフリックスの他社とのパートナーシップは、いまに始まったことではありません。これまで米ターゲット(ディスカウントチェーン)やアマゾンH&M、仏セフォラ(コスメセレクトショップ)、ホットトピック(サブカル系グッズ販売)などとパートナーシップを結んでいました。ウォルマートでも、2018年以来グッズを販売していますが、買い物客はお目当てのアイテムを探そうにも、膨大な品数のカタログを前に途方に暮れるしかありませんでした。

かたやネットフリックスも、6月に米国で「Netflix.shop」をローンチ。番組や映画に関連するアパレルやライフスタイル商品を販売しています。しかし、そこにウォルマート級の4億人の顧客はいませんでした。

Netflix is riding the wave…

ネットフリックスの事情

2017年以来、ネットフリックスはEコマースの世界に足を踏み入れてきました。『イカゲーム』関連の売上が有望となれば、同社の商品販売には拍車がかかり、これまで成功させてきたオリジナルタイトルを生かす道がいくつも開ける可能性があります。

2020年、共同CEOのリード・ヘイスティングは、「われわれはフランチャイズ創出に注力している」と語っていますディズニーユニバーサル、あるいはテレビからストリーミングに転じた巨大企業HBOもそうですが、ネットフリックスもまた、テントポール・タイトル(屋台骨となる作品)を増やすことで、新たな収益源を生み出すことができます。とくに加入者数の伸びが急激に鈍化しているいま、こうした小売業の動きは特に重要となってきます。

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Image: Reed Hastings, Co-CEO, Netflix REUTERS/DAVID SWANSON

さらに、アパレルやマグカップ、ブランケットといったグッズは、はじめの一歩に過ぎません。オリジナル作品群に対する視聴者の熱狂を維持できたなら、ビデオゲームアミューズメントパークといった展開も視野に入ってきます。今年初め、ネットフリックスは、エレクトロニックアーツやフェイスブックの元幹部をビデオゲーム事業の責任者として採用し、すでにオリジナル作品から派生した2つのモバイルゲームをテストしています。『Stranger Things 1984』と『Stranger Games 3』です。

ただし、人気には必ずある問題がつきまといます。他の企業が自分たちに先んじている可能性が往々にしてあるのです。すでに「Amazon」や「Etsy」、「eBay」には『イカゲーム』のグッズのコピー商品があふれています。

問題はまだあります。『イカゲーム』はダークで大人向けの作品であるからこそ、リトマス試験法としては適切な役割を果たせないかもしれません。すでにいくつかの学校では、子どもたちがこのドラマを見て真似をしないように警告が出されています

…and Walmart will help Netflix

ウォルマートである意味

スニーカーメーカーのヴァンズVansの白のスリッポン(作中で“ゲーム”の出場者たちが履いているクツを模したもの)の売上は、9月17日の『イカゲーム』公開後3週間で実に7,800%という爆発的上昇みせました。ファッションデータベースの「Lyst」は、公開から数日のうちにレトロなトラックスーツの検索数が97%も急上昇した事実とともに「間違いなくハロウィンの衣装として選ばれた」と記しています

そのほかにも、インディなECサイトがバナー広告を出し、ハロウィン前にコスチュームやマスクを発送すると宣伝しています。

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Image: AJENG DINAR ULFIANA

衣装だけではありません。作中に登場するさまざまな小道具の需要も高まっています。ダルゴナキャンディ(韓国風カルメ焼き)が人気を集めているほか、“韓国のeBay”ともいわれる「Auction」では、“ゲーム”で使われたビー玉の売上が860%増加しました

ハロウィンが終わってしまえば関連グッズ需要も一巡し、小売店が熱狂過ぎ去ったあとに在庫を確保することもないでしょう。しかし、ウォルマートとの提携は、ハロウィン以降も続くであろう静かな需要に応え、利益を得ることができます。

「ネットフリックスのオリジナルコンテンツは年間通して配信されています。その視聴率が、新シーズン開始と同時に急上昇するのはよくあることです。それと同じように、商品にも季節的な変動が予想されます。ウォルマートとの提携は、ネットフリックスが巨大企業のインフラを活用し、商品に対する需要の変動をより管理しやすくできるのです」

冒頭のマーケティング企業Rank Secureのラブンスキは、そう語っています。


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