最近、Twitterのタイムラインや、あるいは暗号通貨に熱を上げている大学のルームメイトとの会話で、「DeFi」ということばを目にしたり聞いたりしたことがあるかもしれません。
DeFi(decentralized finance:分散型金融)とは、ブロックチェーン上に構築された新しいタイプの金融サービスで、これまでの銀行システムを必要としません。いわゆる「暗号通貨ウォレット」をもっていれば、デジタル資産を取引できるほか、融資を受けられたり、保険に加入したりと、さまざまなことができます。
世に出てまだ3年ほどですが、すでに大きなビジネスになっています。市場規模は900億ドル(約10.3兆円)以上に急増し、利用するために必要なデジタルウォレットのうち、人気のあるものひとつ「メタマスク」(MetaMask)は、1,000万人以上にダウンロードされています。
支持者たちは、DeFiのある金融の未来はより包摂的なものになると主張しています。しかし、DeFiが勢いを増すにつれ、この界隈の発展を疑問視する声も出始めています。
EXPLAIN IT LIKE I’M 5!
用語を説明しましょう
DeFiは、金融だけでなくブロックチェーン技術やソフトウェアエンジニアリングが融合したもの。だからこそ、独自の語彙や専門用語が使われがちです。
- 分散化【decentralization】:Defiは「イーサリアムをはじめとするブロックチェーンを基盤とした分散型のアプリケーション(dApps)」と考えてください。ネットワークにはインターネットに接続されていれば誰でもアクセスできる反面、シャットダウンしたり破壊したりするのは困難です。
- ガバナンス【governance】:DeFi組織における意思決定は、ユーザーに課す料金から提供する商品に至るまで「分散化」するものとされています。立ち上げ時にはひとりまたは少人数のグループが主導権を握るかもしれませんが、プロジェクトが活性化してくると彼らはプロジェクトから手を引き、利用するコミュニティにコントロールを委ねることが多くなります。
- ピアツーピア【peer-to-peer】:ユーザーは、手数料を請求したり取引を検閲したりする第三者の介入を受けずに、DeFiの取引所で暗号通貨トークンを交換することができます。
PROS/CONS
長所と短所
- 検閲が困難なシステム。しかし、高度なコンピューティングが必要になる。多数のコンピュータで構成されるネットワーク上でデータベースを管理するため、処理速度は低下し、取引コストが高くなります。イーサリアムの開発者たちは拡張する術を模索していますが、「ソラナ」(Solana)や「アバランチ」(Avalanche)といった他のブロックチェーンも勢いを増しています。コーネル大学のコンピューターサイエンティストでAvalancheのアドバイザー、エミン・ギュン・シラー(Emin Gün Sirer)は、「ブロックチェーンのパフォーマンスを引き出すのは本当に難しい」と話します。
- DeFiはカストディ(資産の保管・管理を行う金融機関)などの中間業者を排除している。つまり、金融機関が破綻しても政府がトークンを押収して没収したりする心配はありません。逆に言えば、あなたの保有資産を守るのは、あなた自身とパスコードだけ。暗号資産とは原理的に、パスコードを失う(または誰かに盗まれる)と、資産は永久に失われるのです。
- DeFiのスタートアップは、誰でも利用できると謳っている。身分証明書やクレジットスコアなど、従来必要とされてきた金融資格がなくとも、ローンを組み仮想通貨を取引できることになります。自由度が高いがゆえに、これまで金融サービスが提供されてこなかった地域や、金融サービスが高価であったり、詐欺や没収を受けやすかったりする地域に金融サービスを拡大されることが期待できるでしょう。一方で、誰がサービスを利用しているのか、どこにいるのかを追跡する主体がなければ、システムが犯罪者に利用されたり、制裁に反したりするという欠点もあります。取り締まりは、すでに始まっています。
- ブロックチェーンの解読は困難だが、ブロックチェーンの上で動くスマートコントラクトやアプリケーションは設計者の能力に依存する。一般的にコードはオープンソースです。誰でも閲覧でき更新もできますが、同時にハッカーにとっては攻撃しやすいものでもあります。最近では、バグや脆弱性を監査するプログラミングコードが増え、形式的検証(アルゴリズムを使って他のアルゴリズムの不具合を分析するプロセス)の必要性を理解する人も増えていますが、そうした手段で補強されていないコードにいまだに多くの資金が投入されていると、コーネル大学のシラーは述べています。
ALL IN THE FAMILY
DeFiだけではない
ブロックチェーンは13年前に発明されて以来、一連の「デジタル・ゴールドラッシュ」を可能にしてきました。
- ICOのこと:ICO(Initial Coin Offering)はクラウドファンディングの一種であり、オープンソースソフトウェア・プロジェクトの資金調達によく用いられます。ICOの投資家は、資金と引き換えにソフトウェアの特別な機能を利用できるかもしれない(あるいは、まったく利用できないかもしれない)ユニークなトークンを手に入れます。
- NFTのこと:NFT(Non-Fungible Token)は、オンライン限定のトレーディングカードのようなもの。ブロックチェーンによって、ユーザーが保有するビットコインの所有権を証明することができるように、コレクターズアイテムやアートのようなユニークなデジタル資産をつくりだすことができます。
- DAOのこと:DAO(Data Access Object)は、ブロックチェーン技術に支えられたフラットな組織です。その機能は、開発者の集合体、ベンチャーファンド(The LAO)、ゲームのギルド(Yield Guild Games)、ソーシャルコミュニティ(FWB)など多岐にわたります。共通しているのは、トップダウンやヒエラルキーではなく、メンバーが主体となって自律的に運営されていることです。
PREDICTION🔮
今後の予想
現在、ほとんどの分散型アプリケーション(dApps)はイーサリアム上で動いています。それが変わる可能性はあるのでしょうか?
イーサリアムのネットワーク混雑の原因は、NFT熱が高まったために手数料が上昇し、システムに遅延が起きていることにあります。イーサリアムのネットワークにおける1回の取引の平均コストは、9月27日には24ドル(約2,736円)に跳ね上がりました(27日の数日前には約4ドルでした)。
関係者によると、この状況から2つの方向が考えられるとされています。まず、「イーサリアム2.0」がいよいよ本格的に動き出す可能性。これは基本的に、イーサリアムのアップグレードですが、より高速で、より少ないエネルギーで、より拡張性があります。この待望の機能強化は何年も前から話題になっていますが、誰もが「ついに実現する」と信じ続けているわけではありません。
もうひとつの可能性は、イーサリアムでの遅くて高価な取引が、新しいライバルのブロックチェーンに市場シェアを奪うチャンスを与えてしまうこと。その結果、バイナンスコイン(Binance Coin)、カルダノ(Cardano)、Solana、Avalancheといったイーサリアムの競合他社が市場価値を高めています。
最近の経緯からすると、イーサリアム2.0がすぐにでの軌道に乗らなければ、より新しいブロックチェーンが勢いを増すことになるでしょう。
ONE 💡THING
最後に…
「分散型金融」という言葉は、ソフトウェア開発者や起業家のグループが2018年にテレグラム(Telegram)のチャットで使っていて、そこからきたものです。
今日のニュースレターは、シニアレポーターのJohn Detrixhe(future of finance)がお届けしました。日本版の翻訳は福津くるみ、編集は年吉聡太が担当しています。みなさま、よい週末をお過ごしください!
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