中国では、毎年11月11日は「独身の人を祝福する日」として、一年で最も大きな買い物をする日のひとつになっています。今年も「シングルデー」(独身の日)は大きな話題を集めました。Alibaba(阿里巴巴)が開催したセールイベントの流通総額は、同社発表によると約5,400億元(約9兆6,000億円)を記録。前年、約4,900億元だった過去最高額を更新しました。
かたや米国で注目されるのは「ブラックフライデー」と「サイバーマンデー」で、2020年には170億ドル(約1.9兆円)の売上を記録しています。一方、同年の中国2大Eコマース企業(AlibabaとJD.comのシングルデーの売上を合計すると1,150億ドル(約13兆円)。中国における規模の大きさが伺えます。
シングルデーは、Alibabaの「Taobao Live」(淘宝直播)などのプラットフォームでのライブ配信による販売に大きく依存しています。2020年には、Taobao Liveでシングルデーのプレセールを配信した最初の30分で、なんと75億ドル(約8,490億円)もの売上があったそうです。
米国では、ソーシャルメディアを利用したショッピングはまだ始まったばかりで、ライブ配信によるショッピングもまだ始まったばかりです。しかし、「ソーシャルコマース」はショッピングの未来であり、近い将来、米国人は服から温かい食事まで、あらゆるものをライブ動画配信サービスで購入するようになると考えられています。
IT’S BIG IN CHINA
中国ではより一般的に
いま、中国では「ライブコマース」(ライブストリーム・ショッピング)がビッグビジネス化し、ショッピングの手法として一般的になっています。2017年には30億ドル(約3,400億円)の産業に過ぎなかったものが、瞬く間に膨れ上がり、2022年までに4,230億ドル(約47.9兆円)の売り上げが見込まれています。
配信中、出演者が商品を紹介するとその商品の価格情報や支払いのリンクがポップアップ表示されます。「ピクチャー・イン・ピクチャー」表示なので、ユーザーは視聴中の配信を中断することなく商品を購入できます。QVCのようなテレビ通販番組は一方的で、事前に収録されていることが多いのですが、ライブ配信でのショッピングはインタラクティブで、まさに「ライブ」です。
ライブ配信という形式がブランドにとって魅力的なのは、商品を購入したい気分になっている視聴者の目の前に直接商品を展示できるから。配信される内容そのものが面白く、インターフェイスは簡単で、コメント欄にはコミュニティが存在しています。スクリーンを見ているあいだに買い物をするのは、マルチタスク時代のわたしたちにぴったりです。
中国では、ソーシャルメディアからECマーケットプレイス、支払い方法がひとつのアプリに統合されていることが多いため、ライブコマースへの移行はよりシンプルなものでした(もしもFacebook、Amazon、PayPalがすべて同じアプリに入っていたら、米国人もすでにライブ配信で買い物をしているかもしれません)。
中国で最も人気のあるライブコマースのアプリとプラットフォームを紹介しましょう。
- Taobao(淘宝網)、Tmall(天猫)、Taobao Live
アリババのEコマースプラットフォーム - JD.com
アリババの主な競合相手 - Douyin(抖音)
バイトダンスが中国で展開するTikTokの姉妹アプリ - Kuaishou(快手)
ドウインの主な競合相手 - Mogu(蘑菇街)
大手ファッションのプラットフォーム - WeChat(微信)
Tencentが展開。ライブコマース機能を搭載
INTENT VERSUS DISCOVERY
「発見」と買い物
米国では、ショッピングはあまりソーシャル化していません。Eコマースの分野では、アマゾンやウォルマートなどが圧倒的な強さを誇っています。ライブコマースを実現する技術そのものはあっても、米国人の多くが「スクロールしながら買い物をすること」に慣れておらず、消費者としての習慣がありません。
Eコマースと、ソーシャルメディア上で買い物をするソーシャルコマースとは、ユーザーの行動が異なるため、区別することが重要です。市場調査会社eMarketerは、「従来のEコマースでは、商品の購入は意図的に検索することから始まりますが、ソーシャルメディアの強みは『発見』にあります」と述べています。例えば、いまはまだ、TikTokでレギンスを見て欲しいと思ったあとにAmazonで見つけて購入していることでしょう。しかし、将来的には、レギンスを見て、見ている動画から離れることなく購入することになるわけです。
eMarketerの予測によると、米国のソーシャルコマースは2021年に360億ドル(約4兆円)に達し、中国の3,520億ドル(約40兆円)に比べて約10分の1になるそうです。
では、米国においてソーシャルコマースの最大のプラットフォームは? まず名前が挙がるのは、今年、全世界で5,600万人がショッピングをしたと推定されるFacebookと、Facebook傘下のInstagram(3,200万人がものを購入した)でしょう。3番手はPinterestで、約1,400万人が同サイトを通じて商品を購入しています。さらに、TikTok、Snapchat、Twitterもショッピング機能を追加しており、この急成長の分野で主要なプレイヤーになる可能性があります。
THE US PLAYERS
米国の注目プレーヤー
米国の主要企業の一部が、自社のウェブサイトやアプリでライブコマースのテストを開始しています。
- Amazon:2019年に開始した「Amazon Live」は、QVCのようなオリジナル番組で、サイト内のお得な情報や新商品を紹介しています。Amazonはソーシャルメディアプラットフォームではありませんが、Amazon Liveはソーシャル体験の伴ったライブ配信をしています。Amazonが所有しているTwitchにも、将来的に同様の機能を追加することができるでしょう。
- Facebook:ブランドやクリエイターは「コマースマネジャー」を使ってライブショッピング機能を利用可能。2021年春、ペトコ(Petco)やアバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)などのブランドと共同で、毎週公開される「Live Shopping Fridays」をスタートしました。
- Instagram:Facebookと同様、ブランドやクリエイターが「ライブ」を行い、商品をタグ付けすることで、ユーザーが見ているあいだに商品が表示され、購入することができます。また、今後数カ月のあいだに、ホリデーシーズンをテーマにしたショッピングイベントを開催する予定です。
- Pinterest:水泳の飛び込み競技選手のトーマス・デーリー(Tom Daley)やコメディアンのロビン・シャール(Robyn Schall)などのクリエイターを起用した「ライブで、オリジナルで、ショッパブルな」番組シリーズ「Pinterest TV」を発表しました。
- TikTok:昨年、Walmartと共同でライブストリーム・ショッピングをテストしましたが、ブランドやクリエイターに広くその機能を提供していません。
- YouTube:今年のホリデーシーズンにライブストリーム・ショッピングをテストしています。ブランドとYouTubeクリエイターによる「YouTube Holiday Stream and Shop」というイベントを企画しています。
ONE 🛒 THING
最後に…
中国におけるライブコマースで最も人気のカテゴリーは、美容やアパレルです。それ以外では、約7%が、生鮮食品に集中しています。
今日のニュースレターは、エマージング・インダストリーズ・レポーターのScott Nover(すでにオンラインショッピングで散財)がお届けしました。日本版の翻訳は福津くるみ、編集は年吉聡太が担当しています。みなさま、よい週末をお過ごしください!
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