Africa:COP26を「アフリカから」見る

Samia Suluhu Hassan, President of Tanzania, speaks during the UN Climate Change Conference (COP26) in Glasgow, Scotland
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英スコットランド・グラスゴーで開催されている 「COP26」。その最初の2日間には、25人を超えるアフリカ諸国のリーダーたちが登壇し、気候正義(気候の公平性)富裕国からの支援拡大を訴えました。

このなかでリーダーたちは、途上国に対し年間1,000億ドル(約11兆3,160億円)の気候変動ファイナンスを提供するという2009年の取り決めを、富裕国はしっかり守るべきだと主張しています。最近の報告書では、年間1,000億ドルという目標は2023年まで達成不可能だと予測されており、実際、2016〜18年の期間でアフリカに送られた資金は、約束されていた援助額の25%ほどにとどまっています。

アフリカの二酸化炭素(CO2)排出量は、世界の総排出量のたった3%に過ぎません。その一方、この大陸は地球温暖化に対して最も脆弱です。こうしたなかアフリカのリーダーたちは、COP26での成果が気候変動の影響から自国を救ってくれることを期待しているのです。

アフリカ連合(AU)委員会の警告によると、2030年までにアフリカにいる1億1,800万人もの極貧層が干ばつや洪水、猛暑にさらされるといいます。さらに気候変動により、サブサハラアフリカの国内総生産(GDP)は2050年までに最大3%も減少する恐れもあります。

「大気中にあるCO2を実際に排出したわけではないコミュニティが、気候変動の影響を特に受けている現状は非常に残念なものです」と、ジンバブエのエマソン・ダンブゾ・ムナンガグワ大統領は言います。「主要な排出国たちが、気候変動への対策を強化することを期待しています」

COP26の議論では、対策を加速させる新たな約束も交わされました。しかし、最大の問題富める国々が今度こそ約束を守るかどうかです。

──Priya Sippy, Quartz Africa contributor


Stories this week

今週のアフリカ

  1. ケニアとナイジェリアが「デジタル課税」を拒否する理由。2021年10月、130以上の国と地域が、多国籍企業に対する法人税の最低税率を15%以上にすることを定めた歴史的な協定に合意しました。一方で、ケニアとナイジェリアを含む4カ国は参加を見送っています。その理由としてケニアは、同国が新たに導入したデジタルサービス税と最低税率が両立できないこと、またこの協定に含まれる紛争解決のための仲裁メカニズムに問題があることを挙げました
  2. アフリカから欧州への送金をもっと手軽に。学生から社会人まで、何千人ものアフリカ人がアフリカ大陸の外で暮らしています。こうした人びとにとって、母国の家族からお金を受け取ることは容易ではありません。ナイジェリアを拠点とするスタートアップ・Lemonade Financeは、アフリカ大陸の「PayPal」とも言うべきピアツーピアの送金システムによって、アフリカからヨーロッパへの送金をより手軽なものにしようとしています。
  3. 暗号通貨を主流にしたいNestcoin。NFT(Non-fungible token、非代替トークン)や分散型自律組織(DAO)は現在の分散型金融を支える技術となっていますが、その概念は説明しやすいものとは言えません。Quartz記者のアレクサンダー・オヌクウェが、ナイジェリアのスタートアップNestcoinの共同創業者兼CEOへのインタビューのなかで、知識の壁を取り払い、興隆するマーケットの人々に暗号技術を提供するための計画について訊きました

Keep an eye on Ethiopia

エチオピアの軍事衝突

FILE PHOTO: People walk through Megenagna neighbourhood bus station in Addis Ababa, Ethiopia November 3, 2021
Image: Reuters/Tiksa Negeri

エチオピアでは11月2日、全土に6カ月間の非常事態宣言が出されました。これはティグライ地方の反政府勢力が要衝の街2カ所を制圧し、首都アディスアベバへの進行を予告したことを受けての対応です。

アビー・アハメド首相はFacebookへの投稿で、武器をとって反政府勢力と戦うよう市民に呼びかけましたが、Facebookはこれが「暴力を扇動しない」という同プラットフォームの規約に反しているとして削除しました。さらに5日には、9つのグループが現政権に反対する協定に署名しています


Funds grow for agri-tech startups

チャートでみる

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アフリカでは、アグリテックの分野が急成長を見せています。2020年にアフリカのテック系スタートアップが調達した資金のうち、8.6%は農業分野に対する出資でした。

米国のNPOであるHeifer Internationalが新たに発表した報告書は、アフリカがパンデミックの経済的打撃から回復するためには、若者の農業への参加が不可欠だとしています。また同報告書では、アフリカの若者の農業参加を促すために、新しいツールなど農業分野のイノベーションを手に入れやすくするための投資を行なう必要性も強調されています。


Spotlight on an Innovator

アフリカンイノベイター

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アフリカ大陸では気候変動の影響で降雨パターンの乱れや干ばつが進んでおり、何億人もの農家が危険な状況に置かれています。こうしたなか、アミラ・シャヌールAmira Cheniour)は機械学習を使い、農家たちにわずかな水を効率的に使う方法を提供しています。

リンゴとオリーブを育てる農家の娘として生まれ、学生時代に工学を学んだシャヌールは、2015年にビジネスパートナーのタヘア・メスティリ(Taher Mestiri)と協力し、低コストかつ遠隔で操作できる灌漑システムを開発しました。このシステムは気象条件や各作物が必要とする水分量といったリアルタイムのデータを収集し、それに応じてそれぞれの畑に水を撒くよう設計されています。

いわゆる「精密農業」と呼ばれるこうした農業は欧米でこそ当たり前ですが、ほとんどの農業が天水でまかなわれているアフリカにおいてはまだまだ珍しいものです。シャヌールが起業したSeabexのクライアントは創業当時、4人の農家と数十エーカーの農地だけでした。しかし、2020年には評価額230万ドル(約2億5,976万円)を達成し、そのシステムは現在チュニジアとフランスの農地約1,000エーカーで使用されています。

Quartz Africaの「Innovators 2021」リストでは、シャヌールをはじめとするアフリカの女性イノベーターたちの先駆的な取り組みを紹介しています。


Dealmaker

今週のディールメーカー

  • クロスボーダーの決済アプリを提供するChipper Cashが1億5,000万ドル(約170億円)を調達し、評価額20億ドル(約2,265億円)を達成しました。今回の資金調達は、2021年5月に調達した1億ドル(約113億1,733万円)に続くものです。5月の投資ラウンドは暗号通貨取引プラットフォームであるFTXが主導し、ジェフ・ベゾスの投資会社も参加していました。今回の資金調達によりChipper Cashは、FlutterwaveやOPay、Wave、Andelaに続き、アフリカのユニコーン企業の仲間入りを果たしました。
  • ケニアを拠点とするTwiga Foodsは、農家と食品小売店をつなぐ同社のプラットフォームの規模を拡大するために5,000万ドル(約56億6,000万円)を調達しました。今回のラウンドはナイロビとパリを拠点とするファミリーオフィスのCreadevが主導し、TLcom CapitalIFC VenturesDOB EquityなどTwiga Foodsの既存の投資家たちが参加しました。
  • エジプトでオンラインデリバリーを手がけるBreadfastは、スウェーデンのVostok New Venturesと米国のEndure Capitalが主導するラウンドで2,600万ドル(約29億4,250万円)を調達しました。もともとオンデマンドでパンを配達するサービスとして始まったBreadfastですが、現在では2,500種類以上の商品を販売するまでに成長しました。アメリカのデリバリー大手Gopuffに倣ったモデルにより、牛乳からソーダまであらゆるものを配達しています。

Person of interest

注目の人

11月3日にパリで開催されたイベントで、セネガルの小説家モハメッド・ブガール・サーMohamed Mbougar Sarr)がサブサハラアフリカ出身の作家としては初めてゴンクール賞を受賞しました。ゴンクール賞はフランスで最も古く、最も権威のある文学賞です。

The Senegalese author Mohamed Mbougar Sarr photographed at RAW Material Company in Dakar during the Ateliers de la pensée 2019.
Making history.
Image: Antoine Tempé

サーの受賞作『The Most Secret Memory of Men』(原題:La Plus Secrète Mémoire des hommes)は、束の間の成功のあとに表舞台から姿を消したある作家を、別の若い作家が探す物語です。この作品は、1968年にフランスの文学賞であるルノードー賞をアフリカ人として初めて受賞した作家、ヤンボ・ウオロゲムの悲劇的な実話に一部基づいています。

セネガルの首都ダカールで生まれ、現在はフランスを拠点に活動しているサーですが、ゴンクール賞を受賞したからと言って自動的に富豪になれるわけではありません。ゴンクール賞の賞金はわずか10ユーロ(約1,300円)だからです。

しかし、マルセル・プルーストやシモーヌ・ド・ボーヴォワール、ルネ・マラン(ヨーロッパによるアフリカ支配を批判した小説で1921年にゴンクール賞を受賞した黒人作家。彼以来、黒人作家がこの賞を受賞することはなかった)といった名誉ある受賞者たちの仲間入りをしたサーの小説は間違いなく販売部数を伸ばし、人気を集めるでしょう。


Other things we liked

その他の気になること

  • アフリカのエネルギー需要とネットゼロ目標の衝突。COP26では、欧米諸国が化石燃料事業に対する公的融資の停止を約束してきました。しかし、『The Christian Science Monitor』のニック・ロール(Nick Roll)が報じているように、セネガルの人びとはアフリカの豊富な天然ガスから得られるエネルギーを渇望していますナイジェリアも同様の状況にあることを『CNN』のハンナ・ジアディ(Hanna Ziady)が伝えています)。またCOP26では石炭依存からの脱却を目指す方向で合意がなされましたが、南アフリカがその実現に向けた課題を抱えていることを『BBC』ではヴマニ・ムキゼ(Vumani Mkhize)が報じました。
  • Wi-Fiパスワードの闇市場。『Rest of World』のキンバリー・ムタンディロ(Kimberly Mutandiro)は、南アフリカの学生たちが学校のWi-Fiのパスワードを売ることでその日を生き延びる食料を買っている現状を伝えています。
  • 国連職員が都市経済を変えている。高給取りの国連職員たちが、アフリカ大陸の各地域で特殊な経済圏を形成していると『The Economist』が報じています。こうした経済圏の特徴として、高価な食事や高級洗車機、高級カフェやクリーニング店などが挙げられます。
  • ポートレイトを通じて見るガーナ。『i-D』のエマ・ラッセル(Emma Russell)が、ガーナ人写真家のクワベナ・セキー・アピアンティ(Kwabena Sekyi Appiah-Nti)を紹介しています。主にオランダで育ったというセキーは、現代のガーナの生活を撮影することを通じて自分のルーツを発見し、自らがヨーロッパで育つなかで抱いた「アフリカ人は貧しくて苦しんでいる」という西洋的なイメージとは違うガーナの一面を見出しました。

🎵 今週の「Weekly Africa」は、ケニアのNikita Keringによる「Ex」を聴きながらお届けしました。日本版の翻訳は川鍋明日香、編集は年吉聡太が担当しました。


🎧 『Off Topic』とのコラボレーションで実施してきたウェビナーシリーズ。いよいよ最終回となる第4弾は、11月25日(木)20:00〜21:30に開催する予定です。参加申込みはこちらからどうぞ!。

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