中国とアフリカの関係を語るとき、しばしテーマとなるのが「債務」です。この話題では多くの人が「アフリカは中国からの融資で過剰な負担を強いられている」と主張します。
しかし、このほど発表された調査ではこうした懸念に反する結果が出ました。調査に回答したアフリカ人のほとんどが、自国に対する中国の経済的・政治的な影響を好意的に受け止めており、アフリカと中国の関係を「やや肯定的」または「非常に肯定的」と表現したのです。
この調査は、ガーナを拠点とするNPO兼研究ネットワークであるAfrobarometerが、34カ国の48,084人を対象に実施したものです。
中国はアフリカにとって最大の経済パートナーであり、アフリカ各地のインフラ開発プロジェクトに莫大な資金を提供しています。ジョンズ・ホプキンス大学の中国アフリカ研究所(China Africa Research Initiative)によると、2000年から2019年における中国からアフリカ諸国への融資額は1,530億ドル(約17兆4,700億円)にのぼるといいます。
しかし、アフリカと中国の融資契約が秘密裏に行われていることから、中国のアフリカでの活動は「借金漬け外交」だと非難されてきました。また、中国のインフラプロジェクトは、環境問題や人権侵害の観点からも批判にさらされています。しかし、Afrobarometerの調査によると、アフリカの人びとは中国の支援に対しておおむね肯定的な見方をしていることがわかります。さらに回答者の多くは、中国が各国の経済に与える影響力はこの5年で低下したと感じると回答しています。
ただし、この結果は中国に対するアフリカの単純な愛を示すものではありません。回答者たちは両国の政府間関係を概ね肯定的にとらえていた一方、将来の発展のためのより良いモデルとなる国を尋ねる質問では中国よりもアメリカを選んだ人が多かったのです(植民地時代の旧宗主国を選んだ人はわずか11%でした)。
──Carlos Mureithi, east Africa correspondent
Stories this week
今週のアフリカ
- 糖尿病のせいでアフリカのCOVID-19対策が困難に。糖尿病が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化や死亡のリスクを高めることは、世界各地の研究で明らかになっているとおりです。WHO(世界保健機関)の調査によると、アフリカでは糖尿病患者がCOVID-19にかかった場合の死亡率が、そうでない人の4倍に上っています。
- 悪質なローンアプリに罰を。アフリカのデジタル金融業者は、借り手に支払いをさせるために、「知り合いに債務者の詐欺師だと言いふらす」といった脅迫めいたメッセージを送ることがあります。こうしたなか、ナイジェリアの連邦競争消費者保護委員会(FCCPC)はユーザーのプライバシー保護を理由にこのような手段を禁止しました。
- アフリカにとっては残念なCOP26。英国・グラスゴーで10月31日から開催された国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP26)が幕を閉じました。しかし、気候変動の影響を受ける貧しい国々にとってどれほどの成果があったのか、疑問が残ります。
CHARTING JUMIA’S PERFORMANCE
チャートでみる
アフリカ最大のECプラットフォームであるJumiaが11月16日に発表した業績報告によると、同社は2020年第3四半期から2021年第3四半期にかけてアクティブカスタマーを50万人獲得し、それにより注文件数は190万件増加したといいます。当四半期に行われた850万件の注文の額はドル換算で前年の同時期に比べて8%増加しました。また、当四半期の売上高も前年同期比8.5%増となりました。
Jumiaのこの成長率は、アナリストが心躍るには不十分なようです。2億3,800万ドル(約271億6,890万円)というGMV(流通取引総額)は、パンデミック前の2019年の同時期に比べて5,000万ドル(約57億770万円)以上少なく、Jumiaの注文1回当たりの購入価格の平均は2019年の第3四半期の41.50ドル(約4,740円)から28ドル(約3,190円)に落ち込んでいます。しかし同社は、物流や技術インフラへの投資が、まもなく収益性の向上に効いてくると主張しています。
SPOTLIGHT ON AN INNOVATOR
物流の新たな担い手
ミーシェ・アディ(Miishe Addy)はアフリカでの運送を難しくしている「非効率性」を、デジタル技術を使って解決しようとしています。彼女が2018年に共同創業したJetstream Africaは、輸出入業者や物流業者と貿易金融を迅速に結びつけるサプライチェーン・マネジメント・プラットフォームを提供しています。このプラットフォームの目的は、貨物が港にとどまる時間を短縮し、商品の通関を迅速にし、大陸での貿易がより予測しやすくすることです。
アディは2020年の会計年度の経常収益を前年比で6倍にまで成長させました。彼女はいま、アフリカの国境を越えた貿易にとって必要不可欠な先駆者になることを目標に掲げています。Quartz Africaの「Innovators 2021」では、アディをはじめとするアフリカの女性イノベーターたちの先駆的な活動を紹介しています。
Dealmaker
今週のディールメーカー
- 南アフリカのフィンテック企業であるOzowは、中国のテンセントが主導するラウンドで4,800万ドル(約54億7,960万円)を調達しました。今回の投資ラウンドにはEndeavor CatalystとEndeavor Harvest Fundも参加しています。これまでOzowの調達額は370万ドルあまりでしたが、2019年以降は毎年前年比100%の成長を遂げ、月々の取引額は1億ドル(約114億1,552万円)以上にのぼると同社は説明しています。
- ナイジェリアで中小企業向けに会計ソフトウェアを提供しているKippaは、ベルリンを拠点とするベンチャーキャピタルTarget Globalが主導するラウンドで、プレシード資金として320万ドル(約3億6,530万円)を調達しました。創業9カ月のKippaに対するこの投資ラウンドには、Entrée CapitalやAlter Global、Rally Cap Ventures、ほか複数のエンジェル投資家が参加しています。
- 今週はアフリカの女性起業家たちも大きな成果を挙げました。ナイジェリアでバス予約サービスを提供するShuttlersは、自社が運営する都市間輸送プラットフォームを拡張するために160万ドル(約1億8,260万円)を調達しました。このラウンドは、シカゴを拠点とするVestedWorldがリードし、InterswitchとRising Tide Africa、Launch Africa、EchoVCほか複数の企業が参加しています。
Other things we liked
その他の気になること
- 早急な介入が必要なエチオピア。紛争の足音が首都アディスアベバへと近づくにつれ、エチオピアでは内戦の危機が高まっています。『Time』誌のアーヌ・アデオエ(Aanu Adeoye)は、アビー・アハメド首相と反政府勢力の間で永続的な停戦が合意されるよう国際社会が介入すべきだと主張しています。
- ガンビアの大統領、大きな試練に直面。もしガンビアの元副大統領であるウサイヌ・ダルボエが当時の独裁者であるヤヤ・ジャメに拘束されていなかったら、アダマ・バロウは2017年にガンビアの大統領になれなかったかもしれません。『African Arguments』のエロモ・エグベジュレ(Eromo Egbejule)は、現職とダルボエら5人の候補が争う今度の選挙が、西アフリカの国の安定性を試すものであることを伝えています。
- 変わる容姿の考え方。ナイジェリアのビューティクィーン、アグバニ・ダレゴ(Agbani Darego)がミス・ワールドに選ばれてから20年が経ちました。この節目に当たり、『OkayAfrica』のバーナード・デイオ(Bernard Dayo)は、ソーシャルメディアとボディ・ポジティブ・ムーブメントがナイジェリア人の美意識をどのように変えたかを分析しています。
- ドル不足がチャンスを生む。英『Guardian』誌のナーシャ・シンゴノ(Nyasha Chingono)は、ハイパーインフレとドル不足に悩むジンバブエで、ボロボロになった米ドルを売り買いすることが最新のビジネスになっている現地の状況を伝えています。
- 正義を待ち続ける。1989年から2003年にかけて、リベリアの内戦で約25万人が殺害されました。しかし、誰も有罪になっていません。英『Economist』誌は戦争の指導者たちを裁判にかけようと活動を続ける活動家や政治家を紹介しています。
🎵 今週の「Weekly Africa」は、ソマリアのNimco Happyによる「Isii Nafta」を聴きながらお届けしました。日本版の翻訳は川鍋明日香、編集は年吉聡太が担当しました。
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