Stories this week
今週のアフリカ
- アフリカからの渡航禁止の影響。ナイジェリアを厳格な渡航制限の対象国リストに加えるという英国の決定について、アフリカの政治家たちは「アフリカ恐怖症(Afrophobia)」の一形態だと批判しました。オミクロン株がアフリカ起源であるという証拠は示されていません。
- エチオピアのテック業界の政治スタンス。国内外のエチオピア人を分断する紛争が続くなかで、自らの考えを発信するためにソーシャルメディアを利用する人が増えています。国内のテックコミュニティのメンバーの一部は、今回の内戦について物議を醸す見解を表明しました。
- ライブ動画で勉強。アフリカではパンデミックによってエドテックが盛んになっています。この分野のスタートアップであるユーレッスン(uLesson)は、これまでは事前に録画された動画を視聴するだけだったEラーニングの世界で、ライブ動画によるインタラクティブな授業を提供するという革命を起こしました。ユーレッスンはテンセント・ホールディングス(Tencent Holdings、騰訊控股)から資金を得ており、10カ国でサービスを展開しています。
- ギグエコノミーで女性にとって一番重要なのは身の安全。ライドシェアでもスペースシェアでも、荷物の配達を利用したり、ソーシャルメディアでスモールビジネスを運営するときにも、アフリカ各国の女性はある一点で意見が一致しています。ガーナ、ケニア、ナイジェリア、ウガンダの女性を対象に行われた調査によれば、女性は常に自分の安全を気にしなければならないのです。
- MTNは従業員のワクチン接種を義務化。アフリカ最大の通信会社であるMTNグループは、1月から一部の例外を除いて従業員にワクチン接種を義務付けると明らかにしました。接種を拒否すると解雇される可能性もあります。アフリカの他の通信大手もこの動きに追随するかもしれません。
PERSON OF INTEREST
この人に注目
フンケ・オペケ(Funke Opeke)は20年以上にわたり外国の通信業界でキャリアを積み、ベライゾン(Verizon)の重役も務めた後に、故郷のナイジェリアに戻ってナイジェリア電気通信公社(NITEL)の民営化プロジェクトに加わりました。しかしプロジェクトが頓挫したために、アフリカ初の民営の海底ケーブルの敷設に挑むことにしたのです。オペケはメインワン(MainOne)という会社を立ち上げ、2010年にはナイジェリアからポルトガルまで広がる全長7,000kmの海底光ファイバーケーブル網が完成しています。
そして10年が経った今年12月、カリフォルニア州に本拠を置く通信大手エクイニクス(Equinix)がメインワンを3億2,000万ドル(363億円)で買収することが決まりました。投資家で起業家のオラ・ブラウン(Ola Brown)はオペケについて、「彼女は長いゲームを戦い抜き、影響力のあるビジネスを構築したのです」と話しています。
Dealmaker
今週のディールメーカー
- ナイジェリアのスタートアップのトレードデポ(TradeDepot)は最新の資金調達ラウンドで、ベンチャーキャピタル(VC)のパーテック・アフリカ(Partech Africa)と国際金融公社(IFC)から合わせて1億1,000万ドル(125億円)を調達しました。同社はガーナの首都アクラ(Accra)、ヨハネスブルグ(Johannesburg)、およびナイジェリアの10都市で、小売業者向けに倉庫と在庫管理サービスを提供しています。トレードデポの他にも、今年は決済サービスのフラッターウェーブ(Flutterwave)やチッパー・キャッシュ(Chipper Cash)、オーペイ(Opay)、ウェーブ(Wave)、人材開発アンデラ(Andela)といった企業が、1回のラウンドで1億ドル(114億円)以上を調達しました。
- ケニアのフィンテック企業クワラ(Kwara)は、フランスのブリーガ・キャピタル(Breega Capital)、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)のアクセラレータープログラムなどから総額400万ドル(4億5,400万円)を得ています。クワラは元は信用組合のデジタル化支援を行っていましたが、現在はデジタルバンク(チャレンジャーバンク)を設立する方向で、ケニアだけでなく南アフリカとフィリピンでも事業展開しています。
- 一方、コートジボワールのシネペイ(CinetPay)はアフリカのフランス語圏地域で主要な決済ゲートウェイとなること目指しており、4DXベンチャーズ(4DX Ventures)とフラッターウェーブから240万ドル(2億7,300万円)を調達しました。シネペイのサービスはコートジボワール、セネガル、カメルーン、マリ、ブルキナファソ、トーゴ、コンゴ民主共和国、ギニア、ベナンで利用可能で、決済総額は毎月1,250万ドル(14億2,000万円)前後に上ります。
Other things we liked
その他の気になること
- コンゴ民主共和国における中国と米国のバトル。世界的にクリーンなエネルギーへの転換が進むなか、電気自動車(EV)のバッテリーなどに使われるコバルトの需要が拡大しています。コンゴはコバルトの産出量が多いことで知られますが、『The New York Times』のディオンヌ・サーシー(Dionne Searcey)、エリック・リプトン(Eric Lipton)、マイケル・フォーサイス(Michael Forsythe)が、キンシャサ(Kinshasa)の5つ星ホテルが主戦場となったこの戦いについてリポートしています。
- 窃盗団ではなく軍事勢力。ナイジェリアの北西部では1年以上にわたり、武装集団による誘拐や強盗行為が頻発しています。こうした武装集団は一般にはただの「盗賊」とみなされていますが、『New Lines』のジェームス・バーネット(James Barnett)はこのエリアが犯罪組織に実効支配されており、中央政府や州政府の力が及ばなくなっている実情を説明します。
- 知られざるジンバブエのNFTアートの世界。『Rest of World』では、レイ・ムワレヤ(Ray Mwareya)とオードリー・シマンゴ(Audrey Simango)がハリウッドや米国のヒップホップ界隈でブームになっているジンバブエのNFT(非代替性トークン)アーティストを紹介しました。
- 南アフリカで憲法制定から25周年。『Maverick Citizen』はこれを記念する特集を組んでおり、マーク・ヘイウッド(Mark Heywood)はここで、憲法の理念と国内の最貧困層が直面する現実とのギャップについて考察しています。
ICYMI
こちらもチェック
- アフリカの仮想現実(VR)にスポットライト。アフリカ・ノー・フィルターはメディアを通じてアフリカのイメージの変革を目指しており、メタ(Meta)と協力してプログラムを実施しています。「エクステンデッド・リアリティ(XR)」を活用したアフリカに関するコンテンツの開発に興味のあるクリエイターを対象に、最大3万ドル(340万円)の支援とメンターシップを提供する予定で、応募締め切りは1月7日となっています。
- ノーベル経済学賞受賞者のオンライン講義。2019年のノーベル経済学賞受賞者でマサチューセッツ工科大学(MIT)教授のエステル・デュフロ(Esther Duflo)が、「温暖化の時代の経済学:気候変動にどう対処していくか」というタイトルでオンライン講義を行いました。アフリカ開発機構(ADI)主催のこのイベントはコフィー・アナン(Kofi Annan)元国連事務総長を記念するもので、こちらから動画を視聴できます。
KEEP AN EYE ON
大陸共通パスポート構想
アフリカの指導者たちは、オミクロン株絡みの渡航禁止は差別的で不当だと呼びかけています。一連の措置が感染拡大の阻止につながるかは不透明ですが、アフリカの観光産業に打撃があることは疑いの余地がありません。
ただ、アフリカに住んでいる人たちが観光産業の利用者となる機会はほとんどありません。アフリカ・ノー・フィルター(Africa No Filter)の最新の調査によると、アフリカの若年層は大陸内のさまざまな場所を見てみたいと望んでいるにもかかわらず、実際に他国に旅行したことがある人は63%にとどまっています。
ビザの取得が難しいことに加えて航空券が高いために、アフリカでは大陸外に行くよりも近隣諸国に旅行する方がはるかに難しいのです。わたしは2016年に西アフリカのコートジボワール、ブルキナファソ、トーゴ、ベナンをバックパックで旅していたとき、ブルキナファソ西部のボボディウラッソ(Bobo-Dioulasso)という町に立ち寄ったことがあります。モハメドという地元の人の家にカウチサーフィンで泊めてもらったのですが、彼はこれまでに700人以上の旅行者を受け入れてきたのに、アフリカ出身者はわたしが初めてだということでした。
わたしはケニヤ人ですが、モハメドはわたしが仕事ではなく観光で旅をしているということをとても喜んでいました。コートジボワールのアビジャン(Abidjan)の入国審査官もこれには驚いたようで、「本当に観光のためだけにここまでやって来たんですか?」と聞かれたものです。
アフリカ大陸自由貿易圏(Africa Continental Free Trade Area、AfCFTA)や単一アフリカ航空輸送市場(Single African Air Transport Market、SAATM)、そして長年にわたって議論されてきたアフリカ共通パスポート構想といったアイデアは、過去数年で多少は進展が見られたものの、多くの人にとっては依然として理論上の概念でしかありません。そして、COVIDによる排他的で自国のことだけを考えた渡航禁止措置は、より開いた国境という理念にはまったく利益をもたらさないのです。
アフリカの若者たちの希望に政策が追いつくまでには時間がかかりますが、わたしたちは他のやり方でつながっていくことができます。いまでは、映画や文学、ソーシャルメディアなどを通じて他国の文化を知ることができるからです。Twitterでは「#jollofwars」というタグが使われているほか、Instagramではインフルエンサーたちがアフリカの素晴らしい風景を投稿しています。
アフリカの「旅行記」において、わたしたちはそこに記される側ではなく、それを記す者になろうとしているのです。国境や政策、そしてウイルスの変異株によって断絶されている状況は変わりませんが、わたしたちは多様な方法でつながりを維持しています。
──Ciku Kimeria, Africa editor
🎵 今週の「Weekly Africa」は、ウガンダのJuliana KanyomoziをフィーチャーしたKidumによる「Haturudi nyuma」を聴きながらお届けしました。日本版の翻訳は岡千尋、編集は年吉聡太が担当しました。
💎 毎週木曜夜は、この1週間アフリカで起きたことをまとめてお伝え。あらたな市場、あらたな産業が生まれる瞬間を定点観測するニュースレターです。
🎧 Quartz JapanオリジナルPodcastでは「お悩み相談 グローバルだけど」の最新話を公開中。お悩み・お便りはこちらから。Apple|Spotify
🎧 あたらしいPodcastシリーズはもうお聴きになりましたか? 毎朝お届けしている「Daily Brief」から、最新ニュースを声でもお楽しみいただけます。
👀 Twitter、Facebookでも最新ニュースをお届け。
👇 のボタンから、このニュースレターをTwitter、Facebookでシェアできます。ニュースレターの転送もご自由に(転送された方へ! 登録はこちらからどうぞ)。