Special:世界を変える30都市

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Special

世界を変える30都市

Quartz Japanメンバーの皆さん、こんばんは。昨夜に引き続きお届けする2021年末の特別企画ニュースレター第2弾は、Quartzが選んだ「世界経済を変える30都市」。6つのカテゴリーに分けて紹介していきます。これが2021年最後のニュースレター。皆さん、どうぞよい年をお迎えください!

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スライド版(PPT)をダウンロードできます。こちらからアクセスしてください(PC推奨)。昨日27日に配信した「世界を変えた40の企業」のスライドもダウンロード可能です。

Cities to get a green job

グリーンジョブ都市

① ストックホルム(スウェーデン)

たくさんの公園、歴史ある旧市街、そしてABBAミュージアム──。ストックホルムは、それ自体が魅力的な都市であると同時に、サステイナビリティとエコフレンドリーを重要視する国の首都でもあります。現に、ストックホルムではグリーンジョブ(環境関連の仕事)が増えています。

1:グリーンジョブが最も集中している都市ランキングの1位に輝く(LinkedInのレポートによる)

② アバディーン(スコットランド)

スコットランド北東部に位置する港湾都市アバディーンは、海洋石油や天然ガスに恵まれ、数十年にわたり「ヨーロッパの石油の都」と呼ばれてきました。ネットゼロエミッションに向けた動きを推進する英国政府は、アバディーンを「エネルギー移行地域」に指定し、新規雇用のために数百万ポンドを割り当てています。

1万2,500:2030年までの、アバディーンを拠点とするグリーンセクターとエネルギー移行関連事業の雇用者数

③ バンクーバー(カナダ)

バンクーバー市長が「2020年までに世界で最も環境に優しい都市にする」という野望を語ったのは2008年のこと。確かにバンクーバーは大きく前進しましたが、目標すべてを達成したわけではありません。ただし、バンクーバーにおけるグリーンジョブ関連の雇用数は、2010年と16年の比較でも35%増加しています(約1万8,250人→約2万5,000人)。

④クリチバ(ブラジル)

ブラジルはラテンアメリカを代表する経済大国であり、エコロジー大国でもあります。そして、世界でも最もデリケートな生態系が存在する国でもあります。ブラジル南部の都市クリチバは、自然との共生に早くから取り組んできた都市。1968年に制定されたマスタープランによって、公共交通機関の整備や廃棄物処理の改善、環境に配慮した産業の育成が推進され、現在も雇用が創出されています。

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Image: ラテンアメリカにおける「グリーンジョブ」の数を国別で並べてみると

⑤キガリ(ルワンダ)

ルワンダ政府は、数十年にわたって国民1,300万人の所得と生活水準を向上させる計画を掲げていますが、その成果が顕著なのが、この国の首都であるキガリです。人口が都市に集中する中、政府はグリーンジョブを推進する施策を進めています。

>14万:ルワンダの「グリーン成長・気候変動対応戦略」によって創出されたグリーン雇用(2018年時点)


growing thanks to remote work

リモートワーク都市

⑥ タルサ(アメリカ)

オクラホマ州第2の都市タルサの人口は、数年前から減少傾向にありました。それに対して、2018年に行政がスタートしたのが、リモートワーカーに1万ドルを提供して移住してもらうというプログラムでした。この施策の効果はてきめんで、タルサ市は、このプログラムによって2025年までに5,000人の雇用と5億ドルの追加収入がもたらされると見込んでいます

1,200:2018〜21年の間にプログラムによってタルサに移住した人数

⑦ チャングー(バリ)

素晴らしいビーチと温暖な気候をもつバリは、何十年も前から観光地として知られています。しかしここ数年、リモートワーカーのコミュニティも活発化しています。パンデミックの影響で観光業は低迷しているものの、バリ島政府はリモートワーカーのための特別な長期ビザを発行しています。

373%:2016〜20年のチャングーにおけるリモートワーカーの増加率(サイト「Nomad List」調べ)

⑧ メルボルン(オーストラリア)

リモートワーカーにとって、メルボルンは依然として魅力的な街です。「デジタルノマドビザ」の発給をはじめ、生活費も比較的安く、その安定感は世界の都市のなかでもトップクラス。リモートワークの拠点としての「スタンダード」といえる存在です。

1:「リモートワークを最も促進する都市」ランキングでメルボルンは1位(「WorkMotion」調べ)

⑨ レイキャビク(アイスランド)

自然環境へのアクセスのよさ、活発なカルチャーシーン、さらに時にはオーロラも。アイスランドの素晴らしさには文句のつけようがありません。近年、政府はリモートワーカーを呼び込むための新しいスキームを発表しています。「アイスランドで働く(“Work in Iceland”)」ビザがあれば、EU圏外の市民が最長180日間、アイスランドからリモートで働くことが可能です。

19:「リモートワークに適した都市」ランキングで19位にランクイン(「Remote.com」調べ)

⑩ イスタンブール(トルコ)

古くから東と西の人の流れの交わる都市であったイスタンブール。生活費も安く、住民はフレンドリーで、インフラも十分に整っているため、リモートワーカーにとって十分魅力的な都市です。さらに現在、COVID-19に関わる移動制限を緩和し、観光目的にしろリモートワーク目的にしろ、人流を維持しようとしています。

118%:2021年、イスタンブールの伸び(リモートワークサイト「Nomad List」調べ)


The new startup hubs

スタートアップの新拠点

⑪ マイアミ(アメリカ)

マイアミは、これまでアメリカ/ラテンアメリカ間の商流の中心地として栄えてきました。一方で、スタートアップシーンはさほど活発ではありませんでした。

しかし、パンデミック中に大きな変化が。同市市長のフランシス・スアレスがTwitterでファウンダーたちの移住を呼びかけ、VCファンドや金融界の有力者がマイアミに集まることになりました。スタートアップのファウンダーにとって、マイアミは、所得税がゼロ、ビジネス規制が緩い、他の沿岸都市より生活費が安い、気候がよいなど、魅力にあふれています。

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Image: アメリカ国内における都市別「テックワーカーの流入/流出数」

⑫ ムンバイ(インド)

ムンバイは、2年連続で「スタートアップのトップハブ」にランクイン(調査会社Startup Genome調べ)。政策はスタートアップに優しく、VCも増え続け、スタートアップインキュベーターも約20拠点が存在するムンバイは、起業家にとって魅力的な環境といえるでしょう。

⑬ コペンハーゲン(デンマーク)

コペンハーゲンは、世界銀行から「グローバルビジネスに最適な都市」として4位にランク付けされています。その理由には、規制が少ないことをはじめ、スタートアップに資金提供する公的イノベーションセンターの存在や、豊富なコワーキングスペース、活発なテックシーンが挙げられています。実際に、ZendeskやUnity、Tradeshift、Trustpilotなどといったユニコーンが誕生しています。

8:デンマークで起業したユニコーン(評価額10億ドル以上の企業)の数

⑭ ジャカルタ(インドネシア)

ジャカルタは、東南アジアで最多の人口を誇ります。中産階級が急成長しておりモバイル普及率も高く、スタートアップの「実験場」として最適な市場が生まれています。政府も、数多くのピッチコンテストやセミナー、インキュベーションプログラムを実施しています。

51%:VCによる東南アジアでの投資のうち、インドネシアのスタートアップに投資された割合

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Image: インドネシアのユニコーン

⑮ 北京(中国)

規制強化が続く中国スタートアップ業界ですが、資金は引き続き集まり続けています(2021年第3四半期時点で1兆2,000億元〈1,880億米ドル〉)。政府は、経済特区やスタートアップインキュベーター、ガイダンスファンド(スタートアップへの投資に特化した政府系ファンド)を通じて、スタートアップシーンに数兆元を注ぎ込んでいます。


Scientific and medical hubs

科学・医学の中心地

⑯ ボストン(アメリカ)

米国における「バイオテクノロジーのシリコンバレー」といえば、ボストンを指すといって間違いないでしょう。マサチューセッツ州には、122の大学を背景に、430社以上のバイオテクノロジーやバイオファーマが存在します。

ボストンのバイオテクノロジー産業は、最近さらに勢いを増しており、2020年には58億ドル、2021年の第1四半期には43億ドルのベンチャー資金を調達しています。

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Image: マサチューセッツ州のバイオファーマへのVC投資は右肩上がり

⑰ テルアビブ(イスラエル)

イスラエルは、長年にわたって医療技術やライフサイエンス分野の拠点構築を進めてきました。結果、現在、医療機器やヘルスケアIT、遠隔医療に特化した企業は約1,600を数え、そのほとんどがテルアビブに集中しています。パンデミック時には、イスラエル通貨が高騰し、テルアビブは世界で最も物価の高い都市となりました。

⑱ 東京(日本)

東京は、日本における研究・科学イノベーションの本丸であると同時に、世界的な舞台にも立っているといえます。東京都内の大学のうち2校は世界でもトップクラスの研究機関であり、最先端の素粒子物理学研究所もあるため、世界中から研究者が集まっています。

2,500円:同研究所内の理髪店で散髪した場合の料金。その他、ジムやレストラン、郵便局も併設されている。

⑲ スイス・バーゼル

バーゼルは、古くからスイスの製薬産業の拠点です。現在、ノバルティスなど大企業を含む900社以上の製薬会社が拠点を構えています。最近も、バーゼルに拠点を置くバイオテクノロジー企業(Alentis Therapeutics)が、シリーズBで6,700万ドルを調達しました

21万7,284米ドル:約2,495万円。2019年のバーゼルの一人当たり平均GDP

⑳ 中国・深セン

TencentやHuaweiの本拠地、深セン。中国のテックハブであるこの都市は、いまも新たなイノベーションを生み出しています。2019年に中国国内から出された国際特許出願6万件のうち、実に半分が深センからのもので、GDPの5%近くが研究活動に充てられています。


well positioned on climate change

気候変動の重要都市

㉑ ウェリントン(ニュージーランド)

地球上どこにいても、気候変動の影響を完全に回避できる場所などはありません。しかし、この都市は現在、それらの課題に備えるべく投資を行っています。世界で最も空気のきれいな都市のひとつであり、都市部における樹木密度が最も高い都市、ウェリントン。2050年までにカーボンニュートラルを目指す気候変動対策計画も、詳細に策定されています。

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Image: 2020年の「空気がきれいな都市」。数値が低いほど大気の質が高い

㉒ ボゴタ(コロンビア)

コロンビアの首都ボゴタは、ラテンアメリカで最も環境に配慮した都市として広く知られています。それを可能にしたのは、気候変動に配慮した交通機関の革新。市内には、大規模なバス高速輸送ネットワーク、遠隔地と市街地を結ぶケーブルカーシステム、360kmにも及ぶサイクリングロードがあります。

㉓ シンガポール

熱帯の島国シンガポールは、台風や猛暑など極端な気候変動を前にすると脆弱です。このため、シンガポールは海面上昇に備えようと、1,000億シンガポールドルを投資。護岸や建物・道路のかさ上げ、重要なインフラの強化などに費やしています。ただし、政府が2016年から取り組んでいる一方で、計画が遅々として進んでいないという声もあります。

㉔ ミネアポリス(アメリカ)

ミネアポリスは、アメリカ北部の都市。気候変動がもたらすさまざまな影響(気温・海面の上昇、山火事、作物の収穫量など)を一気にまとめて考慮するならば、米国内で最も安全な都市は、中部および北部の都市だと言えます。トウモロコシや大豆をはじめ、南部で栽培されている主要な作物は、近い将来、ミネソタ州などで生産されることになるかもしれません。

㉕ アムステルダム(オランダ)

世界で起こる海面上昇の影響を受けるのは、オランダ・アムステルダムも例外ではありません。ただし、長年にわたって洪水軽減策が計画されてきたため、大きなアドバンテージをもつことになるでしょう。市内のダムや堤防は、1万年に一度の沿岸部の洪水にも耐えられるように整備することが求められています。

70億ユーロ:約8,400億円。オランダ政府の2022年予算における、持続可能なエネルギーに対する投資額


Cities already living in the future

未来都市

㉖ メデジン(コロンビア)

かつて「世界で最も危険な都市」と呼ばれたメデジンは、教育、保育、公共空間、交通に対する投資を充実させ、その評価を一変させました。特筆すべきは、そのケーブルシステム(ケーブルカー「メトロ・カブレ」)。山間部のスラムに住む貧困層の住民が通勤にかかる時間を2時間から30分に短縮し、雇用機会を拡げました。

15分:市内の平均通勤時間(片道)は2003〜16年の間に15分も短縮

㉗ ドバイ(アラブ首長国連邦)

世界一高い163階建ての超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」をはじめ、超高層ビル人工島などの大胆な建築計画で知られているドバイ。自動制御の空飛ぶタクシーロボット警察など、数多くの「ムーンショットプロジェクト」も立ち上げられています。2021年10月には、UAE政府がテックとエンジニアリングのイノベーションを促進する50年計画の一環として「ムーンショット・パイロット基金」を立ち上げました。

75%:2050年までに持続可能なエネルギー源から生成されることを目指すエネルギーの割合

㉘ タリン(エストニア)

エストニアでは、行政手続きのほぼすべてがデジタル化されています。投票や納税などがオンライン手続きで完了し、市民でなくともオンラインでの居住申請が可能です。首都タリンを拠点とするスタートアップは1,100社以上(ユニコーン7社を含む)。近年、スタートアップのハブとして大きく成長しています。

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Image: エストニアのスタートアップ数

㉙ ソウル(韓国)

ソウルは、ネットワークが高度に発達しています。市全域には無料無線LANが設けられ、駐車場を貸し出す共有駐車場アプリやリアルタイムの交通状況に適応するスマートバス管理システム、ゴミをエネルギーに変える循環型ゴミ処理システムが整えられています。さらに最近では、行政サービスをメタバースに統合する計画などのスマートシティ技術が進んでいます。

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Image: 韓国のスマートフォン普及率

㉚ ブラジリア(ブラジル)

1960年にブラジルの首都に決まったブラジリアは、それからわずか5年でゼロから建設された都市です。市民会館や住宅棟、開放的な公園が一体となったモダニズム都市は、その壮大なデザインでよく知られているところです。もっとも、そもそも想定された人口は50万人と少なく、低所得者向け住宅が十分でないことや、歩行者への配慮が足りないなどといった問題点も指摘されてきました。ただ、その近未来的な建築と先進的な都市計画は、いまでも革新的なモデルとして語り継がれています。

470万人:ブラジリアの現在の人口


📆 次回のニュースレター配信は1月4日朝を予定しています。

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