Forecast:2022年のビジネス重大ニュース

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Image: Hoi Chan

2022年最も重要な経済ニュースは?といえば、昨年や一昨年と同じく「世界はCOVID-19から脱却できるのか」ということになるでしょう。インフレや暗号通貨、中国の恒大集団(Evergrande Group)といったキーワードも引き続き、注目の経済トレンドのリストに入っています。

これだけ見ると世界が無限ループに陥っているようですが、新型コロナウイルスに対する免疫は徐々に構築されつつあります。サプライチェーンの混乱はやがて収まり、インフレも今年は抑制される見通しです。

2022年は「正常」とまではいかなくても、過去2年間とは違った1年になるはずです。“コロナ三部作の第1章”であった2020年の繰り返しではなく、(願わくば)最終章になると考えればいいでしょう。

それでは、新年に当たってQUARTZが注目している事柄を取り上げていきましょう。


FROM PANDEMIC TO ENDEMIC

“エンデミック”へ

パンデミック3年目のスタートからわずか数日で、すでに新しい記録が打ち立てられようとしています。

オミクロン株によってどれほどの死者・入院者が出るかは、まだわかりません。オミクロン株は(現時点では)デルタ株より重症化する可能性は低いと考えられています。しかし、感染拡大のペースは急速で、重篤な疾患を抱えた人たちに影響を及ぼす恐れがあります。

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オミクロンの疫学的な特徴がどのようなものであれ、これから1年後の世界が新たな危機に直面するかどうかは政治家の手腕にかかっています。というのも、感染件数が増えれば、それだけウイルスが変異する機会も増えます。これを防ぐには、先進国は他の地域でのワクチン接種が進むようにサポートする必要があるからです。

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また、変異株の特徴はそれぞれ異なっています。しかし、複数の研究者が、2年間にわたり新型コロナウイルスと共存してきたいま、わたしたちにはウイルスをコントロールするための十分な知識があると述べています。

マスクの着用やソーシャルディスタンス、十分な感染検査の実施といったことも必要ですが、公衆衛生の専門家たちが政治家に対して最も求めているのは、世界全体でワクチン接種を進めることです。権利擁護団体Right to Health Actionの共同設立者アクシタ・シドゥラ(Akshita Siddula)は昨年12月に行われたオンラインカンファレンスで、次のように述べています。

「いま目の前に横たわっているのは科学的な問題ではありません」と話しています。「わたしたちが直面しているのは政治と権力の問題なのです」


SUPPLY SIDE

サプライチェーン

2021年に世界のサプライチェーンは限界に達し、世界的な供給不足と価格上昇が起きました。海上輸送における船舶の混雑状態は、宇宙からでも観察できるほど悪化しています。しかし、今年はすべてがうまくいけば(あくまでも仮定に過ぎませんが)サプライチェーンの混乱は徐々に収まり、それが経済に与えた悪影響も過去のものとなる見通しです。

例年であれば、クリスマスと春節(旧正月)の終わる2月には消費者の買い物熱も落ち着きを見せ、世界中の港では貨物の取扱量が減少します。ただ2022年はこれまでとは違います。物流企業は今年のホリデーシーズンに同じことが起きるのを避けるため、1年中フル稼働で業務を行うでしょう。

ただし、これには大型コンテナ船がスエズ運河で座礁したり、別の新たな変異株の出現で工場や港湾が操業を停止したり世界の貿易を止めてしまうような大災害が発生したりはしない、という前提条件が付きます。

突発的な事態が発生すれば、平常への復帰は遠のきます。市場アナリストたちは、輸送コストがパンデミック前の水準に戻るまでには2年かかる可能性もあると予測しています。いずれにしても、すべてが元通りになるには時間がかかるのです。

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Image: 2021年3月に発生した「Ever Given」号のスエズ運河での座礁事故は、7月に損害賠償協議が終結。Reuters / Satellogic

PRICE CHECK

インフレの行方

昨年に起きた物価高騰の原因は、新型コロナウイルスによる需要の急増と供給不足が合わさったものでした。今年は、インフレも落ち着くと見込まれています。

パンデミックの期間中はコト消費がほぼ不可能になったために、人びとはモノを買うことで欲望を満たそうとしました。昨年のある時点では、モノの需要はパンデミック前の水準を20%上回っています。同時に、世界的なサプライチェーンの混乱が港湾での長蛇の列をはるかに超えた深刻な問題を引き起こしたのです。

価格の上昇は原材料から始まりました。これは感染拡大防止のために現場で働くことのできる人数が制限されたほか、さまざまな規制が敷かれたためです。しかし、パンデミックが収まるにつれ、需要と供給いずれの側の問題も緩和していくでしょう。

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Image: Reuters / Carlo Allegri

インフレが危険なのは、それが自己実現的な性格を備えているためです。物価が上昇すると人びとは値上げが続くと予想し、これが賃上げ要求や、さらなるインフレ加速につながっていくと考えられています。

米連邦準備制度理事会(FRB)は消費者の長期的なインフレ期待を注意深く見守っていると述べていますが、短期的なインフレ期待が高まりつつあるなかで、特別な対応はしていません。ただ手をこまねいているわけではなく、FRB議長のジェローム・パウエル(Jerome Powell)は昨年末、株式市場を下支えするために続けていた量的緩和縮小(テーパリング)を加速し、終了時期を今年6月から3月に前倒しすることを明らかにしました。また、テーパリング終了後すぐに利上げを行う可能性も示唆しています。

2020年代のインフレが1970年代と同じようなものになるかについては、構造的に見て疑問の余地があります。これは調査会社オックスフォード・エコノミクス(Oxford Economics)が「構造的蓋(structural lid)」と呼ぶもので、人口の高齢化テクノロジーの進化グローバリゼーションなどなどが含まれます。高齢化が進めば一般的に支出は減って貯蓄が拡大するほか、テクノロジーの進化とグローバリゼーションは、それぞれモノやサービスの価格低下と貿易コストの縮小につながるためです。また、パンデミックが終われば生産性は再び向上することが見込まれます。


SOUND OFF

QUARTZの大予測

4日配信のニュースレターでは、「22年、起きて欲しくない4つのこと」のタイトルでより実現可能性の低い4つのシナリオを紹介しています。今年は、次のようなシナリオも考えられそうです。

一方、最高経営責任者(CEO)の役割の変化に関する調査では、回答者の37%が、企業のリーダーは将来的に1日のすべてをミーティングに費やすことになるだろうと予想しています。これは……かなり絶望的な未来予測ですね。


ONE 📈 THING

パンデミック前と比べて

米国の国内総生産(GDP)と個人消費は2021年にパンデミック前のレベルにまで回復しましたが、2020年1月の水準まで戻っていないのが、家の外で過ごす時間です。オミクロン株が広がるより前、さまざまな制限が撤廃されていた状況でも、米国民はコロナ禍の前と比べてより多くの時間を自宅で過ごしていました。

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Image: 米国民が自宅以外で過ごす時間の変化

リモートワークがこれだけ普及したいま、自宅外で過ごす時間が以前と同じになる日はやってくるのでしょうか。


今日のニュースレターは、メンバーシップエディター・チームみんなでお届けしました。日本版の翻訳は岡千尋、編集は年吉聡太が担当しています。


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