パンデミックは、世界的な「中古車需要」を生みました。多くの人びとが不安に駆られ、公共交通機関を捨て自家用車に乗り換えました。インドでは、複数のオンライン中古車プラットフォームが「ユニコーン」に成長。2022年、中古車販売はさらに増加する見込みです。
Spinnyは、12月にインドの「ユニコーン・クラブ」に新たに加わった中古車販売プラットフォーム。同プラットフォームを運営する創業者兼CEOのNiraj Singhは、わたしたちに対して、次のように語ってくれました。
「パンデミック中の中古車への移行が顕著です。感染拡大とそれに次いで実施された厳しいロックダウンが需要を煽りました」「個人でクルマを所有するメリットを理解する消費者が増えています。2022年はインドの中古車セグメントにとってさらに有望な年になるでしょう」
同プラットフォームは2015年に立ち上げられ、現在のところ、デリーやムンバイなど15都市で事業を展開しています。成長市場に対応するべく、Spinnyは事業を小〜中規模都市にも展開しようとしています。
自動車ECプラットフォームDroom(Droom Technologies Limited)も新ユニコーンのひとつ。最高戦略責任者のAkshay Singhもまた、人びとのパーソナルモビリティ/中古車への流れは2022年も引き続き強いと見ています。「パンデミックが進行中なのに加えオミクロン株が発生し、今後も人びとはライドシェアや公共交通機関を避け続けるでしょう」
three used-car unicorns in 2021
続々、中古車ユニコーン
先進国の多くでは、すでに中古車販売が新車販売を大きく上回っています。しかし、インドでは、2019年まで中古車販売は新車販売とほぼ同程度でした。そのインドで、中古車販売は5年以内に新車販売の2倍になるとの見通しが出ています(市場リサーチ会社RedSeerのデータによる)。
中古車市場成長の主な要因は、ここまでに挙げた通り、公共交通機関を避けたいという消費者心理です。さらに、プレイヤーとして加わった「オンラインプラットフォーム」の存在が市場に柔軟性をもたらしました。オンラインでの取引が普及することで、より広く、より多くの人がアクセスしやすくなったのです。オンライン売買を志向するミレニアム世代にアピールすることでブームは後押しされ、さらなる投資家の関心を呼ぶ……。結果、インドではこの中古車ブームで、4つの中古車スタートアップがユニコーンの地位を獲得することになりました。
まずは2020年11月、中古車マーケットプレイスのCars24がシリーズEラウンドで2億ドルを調達し、ユニコーン入りの先陣を切りました。
Droomは21年7月に2億ドルを調達し時価総額12億ドルに。さらにCarDekho(ラウンドはLeapFrog Investmentsが主導)、Spinny(ADQ、Tiger Globalが主導)と、中古車・新車オンラインプラットフォームのユニコーン入りが続いています。
RedSeerによると、各スタートアップが躍進することで、データの収益化やサブスクリプション/レンタルプランのほか、電気自動車用の充電や長期メンテナンスパッケージなどといった新しい収益源への注目も集まっているといいます。Droomも、保険や融資が将来の収益源になると見込んでいるほか、自社プラットフォームを利用して電気自動車を提供する計画もあるようです。
The chip shortage is helping
半導体不足も追い風に
2021年3月期、インドの新車販売台数は前年比13%減でした。さらに11月、インドではディワリを迎えましたが(インドの「正月」にあたり、年間で最も消費が高まる)、その時期の消費は、数十年に一度ともいわれる最悪なシーズンとなりました。その背景にあったのは、パンデミックによる需要の落ち込みだけではありません。世界的な半導体不足により、新車の納車待ちが増加したのです。
中古車分野のプレイヤーたちは、こうした苦境が自分たちに有利に働くと考えています。
「半導体不足によるサプライチェーン問題も中古車需要を押し上げています」と言うDroomのSinghは、国内のTier 2やTier 3の都市では、購入者が中古車に目を向け、「SUVなどの大型車」を好む傾向が強まると予想しています。
さらに、5%近くで推移するインフレもまた、人びとの目を中古車へと向ける要因となっています。投資ファンドマネジャーのSiddharth Mauryaは、インドではポストパンデミック・インフレの影響によって消費者物価が上昇していると指摘。中古車は新車より比較的安いので節約につながるうえに、インド国内では中古車に対する評判が悪くないことも需要を後押ししているとしています。
RedSeerの調査によると、インドの中古車販売台数は、2026年度までに830万台に拡大し、毎年2桁の伸びを記録すると予想されています。
この好調な数字は、自動車メーカーにとっても魅力的に映っています。例えば、韓国の自動車大手、Kia(起亜自動車)は、2022年までにインドに中古車ベンチャーを設立する予定です。Kia Indiaの副社長兼マーケティングセールス責任者のHardeep Singh Brarは、昨年のイベントで次のように語っています。
「直近のシナリオを見ると、中古車市場は新車市場の約1.4倍。2025年には新車市場のほぼ2倍になると予測されています。この分野には非常に大きな可能性があるのです」
Challenges for the market
中古車市場の課題
急増する中古車需要によって、2021年はとくに人気車種の中古車が供給不足に陥ることにもなりました。しかし、業界関係者によると、この問題はすでに解消されつつあるようです。
「2020年のロックダウン後に比べると、2021年の供給逼迫は緩やかです。中古車の価格が上昇したことで供給量が増えています」と、DroomのSinghは語っています。
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