Need to Know:北京五輪の「知っておくべきこと」

Need to Know:北京五輪の「知っておくべきこと」
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皆さん、こんばんは。新しく始まるニュースレターシリーズ「Need to Know」は、毎回ひとつのトピックについて「いま知っておくべきこと」をまとめて、週に一度お届けする新しいコンテンツです。外交問題もエンタメもカルチャーも、Quartzらしい視点で世界のニュースを切り取り、チャートをはじめとする手法で「あ、これもビジネスの話だった」という気づきをメンバーシップ会員の皆さんと共有する内容を目指しています。

ニュースレター「Need to Know」は、毎週火曜日にする予定ですが、第1回となる今回は、取り上げるトピックを優先して、本日金曜の配信とさせていただきました。

予定を変更して本日4日に配信したかったトピックとは──今日、開会式を迎える北京五輪です。今日を皮切りに(一部、熱戦はすでに繰り広げられていますが)、2022年の北京でも熱い(というか、寒い)戦いが繰り広げられます。

中国は、自国の「ゼロコロナ」政策こそが安全な環境をもたらすことを、そして、国際世論の逆風にも負けずに五輪を成功させることができることを示したいと考えています。北京冬季五輪は、東京での五輪よりもさらに奇妙な大会になると言っていいでしょう。

本日のニュースレターは、このあと(日本時間21時〜)開催される開会式そのものの歴史を振り返る年表から、スタートです。


Brief History

五輪の開会式小史

1906年:オリンピック委員会の会議の結果、五輪で開会式が執り行われることに

1908年:ロンドンオリンピックで初の開会式

1912年:国際オリンピック委員会のピエール・ド・クーベルタン元会長により、開会式の芸術的要素が導入される

1936年:アドルフ・ヒトラーがベルリンオリンピックの開会式で司会を務め、ナチス・オリンピックとも呼ばれる

1936年:リヒテンシュタインとハイチが同じ国旗で開会式に臨むことに。これをきっかけに両国の国旗にそれぞれ王冠と紋章を追加される

1964年:「ヒロシマ・ベイビー」こと坂井義則選手が東京オリンピックの聖火に点火

1996年:ボクシングの伝説的選手でオリンピック金メダリストのモハメド・アリがアトランタ大会で100周年記念の聖火に点火

2000年:韓国と北朝鮮が一つの旗のもとにパレードを実施

2012年:エリザベス女王とジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)が、ヘリコプターからパラシュートでロンドンの開会式に登場

2024年:開会式は初めてスタジアムではなく、パリのセーヌ川で行われる予定


2008 VS. 2022

14年前とはちがう国

2008年8月、世界は夏季五輪を開催する中国の姿に少なからぬ興奮を覚えました。五輪直前の5月には四川大地震が発生し、多くの人の命が失われたことに対して同情さえしていたのです。開催に際しては世界各国から要人が集まりましたが、現職の米国大統領として初めて国外でのオリンピックに出席したジョージ・W・ブッシュもそのひとりでした。

ブッシュは北京に到着する前日、タイで演説し、次のように宣言しています。「中国における変革は、中国自身の手によってのみもたらされるだろう……しかし、その日は必ずやってくる

そしていま、わたしたちが目にしているのは、14年前とはまったく異なる国の姿です。中国は2008年当時よりはるかに豊かになりましたが、他の多くの国が期待していた通りの政治的自由化は到来しませんでした。

🤑 1人当たりの所得3,468ドル(2008年) vs. 1万2,551ドル(2022年)

👀 中国を好ましく思っていない米国人の割合42%(2008年) vs. 76%(2022年)

🍼 年間出生数:1,600万人(2008年) vs. 1,060万人(2021年)

🤵 開会式参加者:1万5,000人(2008年) vs. 3,000人(2022年)

🥇 金メダルの獲得数48個(2008年) vs. 未定(2022年)


Charting investment in China

チャートでみる

北京と河北省張家口までを結ぶ全長174キロの「復興号」は、最高速度時速350キロを自動運転で制御する高速鉄道。その敷設には、約92億ドル(約1兆円)の費用がかかっています。北京市内中心部の移動のために、五輪開催直前に地下鉄3路線が追加されています。

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WHAT GOOD IS A BOYCOTT?

ボイコットは役に立つ?

昨年12月、米国をはじめカナダ、英国など数カ国が、冬季五輪に公式代表団を派遣しないことを発表しました。この振る舞いは、果たしてどんな影響を与えたのでしょうか?

中国はこの10年間、新疆ウイグル自治区に住む少数民族であるウイグル人に対して弾圧を強めてきました。ウイグル人が漢民族とは異なる信仰や民族に属していることを「主たる罪」として、大量の強制収容キャンペーンを展開してきたのです。

2019年の民主化デモをきっかけとした香港への弾圧も、中国に対する国際世論を悪化させました。そして「最後の藁」となったのが、共産党の元トップに対してセクシャルハラスメントを申し立てたテニス界のスター、彭帥(ほうすい)の11月の失踪事件でした。

もっとも、五輪ボイコットが大した成果を残さないのは、歴史が証明しています。例えば1980年、米国はソ連のアフガニスタン侵攻を理由に同年のモスクワ夏季五輪への選手の出場を禁じましたが、ソ連の介入はさらに9年も引き延ばされました

中国国営メディアは、米国のボイコットを「世界的な友好の場」を政治的に利用する「卑劣な行為」だとしています。

北京にとって、今年の五輪は重要な意味をもっています。中国はいまこそ、この2年間の「ゼロコロナ」規制で疲弊した中国国民から、自分たちの指導力への信頼を取り戻す必要があるのです。五輪チケットは一般市民や外国人観客に販売されない予定ですが、その代わりにスタジアムのシートに座る観客は、慎重な審査のうえ選ばれた人たちとなるでしょう。彼らはそこで、公式スローガンを忠実に唱え、海外からの抗議の声に目を光らせることでしょう。

🙅‍♂️ 外交的ボイコットを行う国:米国、英国、オーストラリア、カナダ、コソボ、リトアニア、インド

😶 新型コロナウイルスを理由に要人派遣を見送る国:ドイツ、オーストリア、スイス、ノルウェー、スウェーデン

🤷‍♀️ 人権問題に懸念を示している国:デンマーク、オランダ、ニュージーランド


Quote

こんな発言も……

「中国での競技において、フェアプレイが見られるかどうか疑問が残る。(COVID-19)検査は比較的簡便なもので、誰かが(陽性と判定されその扱いを受けた)あとになって『申し訳ないが、偽陽性だった』と言うことだってあるだろう」

──ドイツのスノーボード団体のプレジデント、ミヒャエル・ヘルツ(1月23日、同団体のポッドキャストでの発言)


One ❄️ thing

雪のない冬季五輪

スキー競技が開催される北京郊外の張家口市のゲレンデは、五輪史上初めて100%人工雪の上で競われる会場となります。人工雪がオリンピックで初めて使用されたのは、1980年にニューヨーク州レイクプラシッドで開催された大会でのことでした。空気中に噴霧した水滴を凍らせるスノーマシン(人工降雪機)は、1930年代にハリウッドのプロダクションが発明したものだったといわれています。

A snow gun on a slope in China
Knock-off snow.
Image: Reuters/Thomas Peter

近年、天候に恵まれないこともあって五輪での人工雪使用が増えており、14年のソチ五輪では80%が、4年後の韓国・平昌では90%が人工雪でした。積雪量の原因として気候変動の影響が指摘されており、ウォータールー大学の研究によると、過去に冬季オリンピックが開催された21カ所のうち、現在では8カ所が候補から外れているといいます。


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