Quartz読者の皆さん、こんばんは。UCバークレーのピーター・アビールです。
わたしは立場上、ロボットが──「ハル9000」や「ターミネーター」に出てくるような非人道的で無慈悲なシステムが、現実社会を破壊するのでは?なんてことを、よく聞かれます。
ベルギーで育ったわたしにとって、そもそもロボットに対する第一印象はそれほど暴力的なものではありませんでした。いまにして思えば、そんなポジティブな印象が、「日常生活をより楽しくするための機械」としてのロボットづくりへの想いに火をつけたのでしょう。「人間と一緒に仕事をするロボット」が、わたしのつくりたい世界だったのです。
わたしは米国への移住後、アンドリュー・ン(Andrew Ng、AIの権威として知られるスタンフォード大学のAI研究者)の下で博士号を取得したのちバークレー・ロボットラーニングラボ(Berkeley Robot Learning Lab)を設立し、コバリアント(Covariant)を共同設立しました。そしていま、ロボットは、わたしが子どものころに思い描いていた「心強いチームメイト」として洗練された存在になってきていると確信しています。
AIの進歩によって、最近では、新しいタイプのロボットが出現しています。あらかじめプログラムされた動作をするのではなく、見て、学び、考え、周囲の環境に反応することができるロボットです。
日常生活でロボットを直接目にしたり、接したりすることはあまりないかもしれません。しかし、今後5年で、家庭も職場もロボットによって円滑に運営される日がやってくることでしょう。
今日のニュースレターでは、その代表例のいくつかを、「ロボットの『いま』について知っておきたいこと」として、ホストを務める「Robot Brains Podcast」に出演してくれたゲストが教えてくれたもののなかから紹介します。
deliver supplies to remote places
遠くに物資を届ける
キーナン・ワイロベック(Keenan Wyrobek)は、アフリカおよび南米で数カ月を過ごし、そこで医療や災害救援に関わる人たちと対話し、「AIを搭載したドローン技術」がもたらすインパクトを思い描くようになったと言います。そんな彼が立ち上げたのが、重要かつ危険な配送を実現するドローンサービスを提供する企業、ジップライン(Zipline)でした。
現在、ジップラインは1日当たり1トンの貨物を運んでいるそうですが、ロボットを使った配達は、とくに危険がつきもののエリアにおいて、不安を抱えるコミュニティを強く支援しているといえるでしょう。
automate recycling
リサイクルを自動化する
リサイクルは、地球をよりヘルシーにするために、わたしたちにできる最も重要な活動のひとつです。しかし同時に、それはあまりに大規模な事業でもあります。人間1人が1日に出すゴミの量は約15キロといわれていますが、いまや世界の人口は78億人ですからね。
マタンヤ・ホロウィッツ(Matanya Horowitz)は、自身が立ち上げたAMPロボティクス(AMP Robotics)の技術が、世界中の施設において、本来何十億ドルもの価値がありながら従来は埋立地に捨てられていた貴重な素材をより分け、再利用する手助けをしているのか、説明してくれました。
handle dangerous warehouse tasks
危険な作業をする
ABBは、1988年にスイスで創業したロボットメーカーです。そのロボティクス部門を率いるマーク・セグラ(Marc Segura)が紹介してくれたのは、世界中の倉庫において、事故が多く、また人間にとって長期的な健康被害が懸念される仕事をロボットが担っているという現状でした。
そこでは、片腕で1トンのクルマを持ち上げられるほどの強靱なロボットをはじめ、繊細なコンピューターチップをつくるロボット(その作業は、人にとって視力障害を起こす危険性があるのです)など、たくさんのマシンが人間には適さない仕事をこなしています。
help nurses on the frontlines
現場で看護師を助ける
COVID-19の大流行によって、医療従事者の過重労働に多くの人の目が注がれることになりました。しかし、そのずっと以前から、ディリゲント・ロボット(Diligent Robots)のアンドレア・トーマス(Andrea Thomas)はこの問題に気づいていました。彼らが設計した看護師用ヘルパーロボット「Moxi」は現在、例えば米国のダラスの病院でも使われています。
そこではロボットが備品補充などの日常的なタスクを自動的に処理することで、看護師からはストレスレベルが下がったという報告もされています。Moxiはその持ち前の愛嬌で、患者さんの毎日を少し明るくしてくれてもいるようです。
run indoor farms
屋内農園を運営する
収穫物の摘み取り・選別は、農場経営において、最も時間的拘束が大きく、手間のかかる作業です。そして、これを正しく行えるかどうかで、作物の収穫量に大きな差が生まれます。Appハーベスト(AppHarvest)のジョシュ・レッシング(Josh Lessing)は、あらゆる種類の農産物の収穫方法を学習した世界初の“クロスクロップAI”である「Virgo」を開発したメンバーのひとりです。
Virgoは、形状、密度、成長シナリオが大きく異なる農作物を──ある日はトマトを、次の日はキュウリを、その次はイチゴを、というように──収穫できるよう切り替えられるロボットです。Virgoは現在、米ケンタッキー州にあるAppHarvestの温室で、非遺伝子組み換え、無化学肥料の農産物を栽培しています。
The robot future has already begun
未来は、いま
このように、「ソフトウェアで動く同僚」とのコラボレーションは、もはや未来ではなく、現在のビジョンだといえるでしょう。今回はそのいくつかの例をご覧いただきましたが、今後10年間で、わたしたちはさらに多くの事例を目にすることになるでしょう。
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