7日、グーグルが食料廃棄問題に取り組むNGOのReFEDに100万ドルを寄付したことが発表されています。
グーグルは先だって、従業員1人当たりの食品廃棄物を50%削減するという目標を発表し、食品調達プロセスや厨房での廃棄物監視システムを改善し、食品廃棄物を可能な限り再利用する計画を立てています。
先進国のみならず「世界」の問題として取り組むべきフードロス(food loss)/フードウェイスト(food waste)。解決の糸口のひとつとして家庭からの食品廃棄物に目を向ける必要がありますが、いま、スーパーの冷凍食品売り場前の通路が、米国でも“アツい”場所のひとつになっています。
2020年前後からすでに加熱していた米国での冷凍食品の売上は、パンデミック以降急上昇。オフィスや学校、レストランが再開され「COVID-19との共存」があたりまえになっても、米国人はその冷凍庫を満たし続けています。2022年1月の冷凍食品の売上は、前年同月と比較して26%増加しています(ただし、これはインフレによる価格上昇も影響しています)。
その理由は、やはりCOVID-19の影響が大きいといえます。購買習慣が変化し、嗜好も変わり、さらに業界のイノベーションが加わったことで、米国での冷凍食品人気が加速したといえるでしょう。
A pre-pandemic sales surge
パンデミック前から……
冷凍食品の最初のブームが起きたのは、1950年代のことでした。冷凍食品はナトリウム量(塩分量)が多く、「健康的」という印象からはほど遠い存在でした。ベビーブーマー世代にとって冷凍食品といえば、やたら塩の効いた「TVディナー」(ワンプレートの冷凍食品)や、逆に味気ない冷凍ピザ、というのがあたりまえでした。
しかし、ミレニアル世代およびZ世代は、冷凍食品をヘルシーで便利なものとして捉えています。例えば、デロイトが2021年に行った調査によると、18~34歳の57%が「冷凍肉は生鮮肉と同じようにおいしい」と思っていることがわかっています(一方の55歳以上では39%)。
食品業界専門の市場調査会社210 Analyticsの代表を務めるアンヌ=マリー・ローリンクは、次のように語っています。
「業界では新鮮なのか、そうでなければ冷凍なのかと対比して考えられている。が、消費者は、冷凍食品を生鮮食品と同じようにとらえている。冷凍ピザから始まったこの業界には、いまやマッシュルームをはじめとする新鮮な食材がラインナップされている」
パンデミック前の数年間、世界では(特に米国では)、高まるミレニアル世代の購買力が消費の変化を促しました。一方の冷凍食品メーカーも積極的な販売活動を展開。低糖質・植物性食品のトレンドに応えた「カリフラワーライス」などの製品はいまやあたりまえに目にしますが、これらはまず、冷凍食品売り場で販売されました。
パンデミックが始まった初期には、冷凍食品の購入が一気に進みました。スーパーマーケットなどの購買状況を追跡するデータ会社IRIによると、2020年3月の売上は前年比で50%以上急増したとされています。
人びとは、何よりも利便性を求めていました。子どもたちが家にいて、レストランはまだテイクアウト/デリバリーに対応していない、となると冷凍食品が「ロックダウンの勝者」になるのに時間はかからなかったと、前出のローリンクは説明します。
先に挙げたデロイトの調査によると、パンデミック以前は〈週に一度以上〉買い物をしていた人が、いまでは買い物のペースが〈10日〜2週間おきに一度〉にスローダウン。デロイトのバーブ・レナー(副会長兼消費財部門の米国リーダー)は、「長年調査を行ってきたが、2020年に初めて、この種の『安全性』が消費行動を決める要因として話題に上がった」と述べています。
多くの人が食料品をオンラインで買うようになりましたが、これも冷凍食品にとって追い風となりました。消費者にとってすれば、生のトマトよりも冷凍の豆の方がずっと安心で、さらに玄関先まで配達してくれる人がいれば買いだめするのも簡単です。
パンデミック初期にはパニック買いやサプライチェーンの不具合が頻発し、一部の生鮮食品は品切れに。スーパーマーケットを訪れた買い物客は、手に入る食品を求めてこれまで見渡していたのとは違う棚を見るようになったのです。
Consumers focus on lower prices
人は安さを重視する
冷凍食品のもうひとつの大きなメリットは、その価格です。生鮮食品よりも安価で、かつ食べられないまま腐ってしまう心配がありません。
「消費者の観点からすると、生鮮食品と比較して冷凍食品は『コスト効率の高いソリューション』であるということだ」と、ローリンクは語っています。
さらに最近では、急激に進むインフレが購買行動を決める重要な要素になっています。IRIのデータによると2021年、すべての食品・飲料カテゴリーの平均単価が5.3%上昇したのに対し、冷凍部門の上昇は4.3%に留まっています(米国内)。
A global trend
アメリカだけじゃない
パンデミックで冷凍庫のストックを増やし始めたのは、米国人だけではありません。
「冷凍食品のカテゴリーは、(米国と)まったく同じ理由で、世界中でとてつもなくうまくいっている」と、ローリンクは言います。Birds Eyeによる2021年7月の調査によると、英国では買い物客の40%が、パンデミック前よりも冷凍食品を購入する可能性が高くなっています。
英国における冷凍食品の売上は2017年、18年と2年連続で約4~5%増加していましたが、2020年に至っては、前年比売上増加率は16%に迫る勢いでした。
pandemic staying power
パンデミック時のまま
2020年3月に前代未聞の高騰を見せた米国の冷凍食品は、すぐに落ち着きを見せ始め、同年4、5月は前年比30%前後で推移、12月には16.5%まで鈍化しました。
しかし、翌21年の冷凍食品の総売上額は前年比1%増の660億ドル。インフレの影響もあってさらに上昇しています。一方で売上総量(顧客が実際に購入した商品点数)は前年比3%減となっており、「高い商品を少なく買う」というトレンドにあるようです。
学校やレストランが再開されているにもかかわらず冷凍食品人気が続いている理由としては、ホワイトカラー労働者が依然としてリモートワークをしていることが挙げられます。「通勤途中に朝食をとったり、オフィスの近くで昼食をとったりする代わりに、自炊を続けている」のだと、デロイトのレナーは説明しています。
The future of frozen food
冷凍食品の未来
多くの人が冷凍食品を買い足すようになれば、その置き場所も必要になります。ローリンクの調査によると、パンデミック時、調査対象の30%が冷凍庫の容量を増やしたとされています。
「ニューヨークの消費者を対象にしたフォーカスグループの中で、寝室に置いてある小さなリーチイン冷凍庫について話してくれた人がいます」と、ローリンクは言います。「かつて、都市部に住むコストコ利用者に話を聞くと、彼らはペーパータオルやトイレットペーパーをベッドの下にしまっているのを見せてくれたものです。それがいまでは、小型の冷凍庫に姿を変え、そこに食料を常備できるように拡張しているのです」
同じ傾向は英国でもみられ、同じく一度冷凍庫のスペースを確保すると、それを使い続ける可能性が高いといいます。
また、スーパーマーケットも、買い物客の関心に応えています。「小売業者は冷凍食品に力を入れており、店内のさまざまな場所で冷凍庫を増設しているのを目にします」(ローリンク)
2021年第2四半期、多くの人が外に出かけるようになり、同時に冷凍食品の売上は多少落ち込みました。しかし、それでも19年同期に比べればはるかに高い数字を記録しています。
今後、消費者はかつての購買習慣にある程度戻っていくことでしょう。しかし、専門家によると冷凍食品の売上は高水準を維持するとの見通しが強いようです。
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