Climate:#14 地球にやさしい昆虫食

Climate:#14 地球にやさしい昆虫食
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Image: ERIC HELGAS, STYLING BY ALEX CITRIN-SAFADI

月曜夜のニュースレター「Climate Economy」では、毎週ひとつのテーマについて、世界は気候変動をどう見ているのかどんな解決を見出そうとしているかをお伝えしていきます。

アフリカ、アジア、南米を中心に、世界では約200万人がすでに2,100種以上の昆虫を食べています。しかし、この“スーパーフード”は、世界ではまだそれほど注目されていません。アンジェリーナ・ジョリーの子どもたちはコオロギを「ドリトス」のように食べているようですが、欧州および北米において、昆虫はいまだそう多く食べられるものではないのです。

普及を妨げる要因としては、まず昆虫食に馴染みがないことが挙げられますが、代替タンパク源が高価であること、あるいは政府による規制も影響しています。

しかしながら、たしかな静かな熱の高まりを感じさせる昆虫食。アデレード大学の博士課程に在籍するIshka Nicole Blessは、「食用昆虫は栄養価が高く環境負荷が低いことから、その消費量は増えています」と指摘しています。


BY THE DIGIT

数字でみる

  • 19〜26グラム:牛肉100グラムあたりのタンパク質量
  • 35〜48グラム:バッタ100グラムあたりのタンパク質量
  • 75%:コオロギ飼育によるCO2排出量を養鶏と比較すると
  • 50%:コオロギ飼育による水の使用料を養鶏のそれと比較。食用昆虫は必要とする土地も少なく済む
  • 1〜10%:ミールワームの生産による温室効果ガス排出量を養豚と比較すると

ONE BIG NUMBER

注目の数字

6億800万ドル

Talis CapitalとDealroomが発表したレポートによると、2017〜21年の間に、食用昆虫を扱う企業6億800万ドルを調達しています。これは、植物ベースの代替肉(4億5,000万ドル)やその他のラボ由来の代替品(2億1,600万ドル)の調達額を上回っています。


Making insects affordable

企業努力もさまざま…

Roasted crickets by edible insect company Eat Grub, which are stocked at British supermarket chain Sainsbury's, are seen in this handout photo by Eat Grub. (NO ARCHIVE / NO SALES)
Roasted crickets by edible insect company Eat Grub, which are stocked at British supermarket chain Sainsbury’s, are seen in this handout photo by Eat Grub. (NO ARCHIVE / NO SALES)
Image: Reuters/handout photo by Eat Grub

米テキサス州のフードスタートアップAspire Foodは、カナダ・オンタリオ州に世界最大の商用コオロギ農場を設立。この新工場によって「コオロギをこれまでより50~75%のコストで養殖できるうえに、さらなるコスト削減も可能だ」と、同社の共同創業者兼CEO、Mohammed AshourはQuartzに語っています。

彼は、2013年以来、昆虫を養殖し食用としている世界の各地域を訪問しています。なかでもメキシコ・オアハカで訪れた小規模な昆虫農家での経験は、彼に大きな示唆を与えるものとなりました。

その農場では、段ボール箱で育てたコオロギを“収穫”する際、死骸や排泄物との選別に苦労をしていたと彼は語ります。Aspireでは、この大前提をもとに改良を加え、自動収穫機を開発しました。「垂直農法、ロボット工学、ビッグデータ、機械学習などの技術を駆使して、昆虫を中心とした『屋内型制御タンパク質生産システム』を考案した」と、彼は説明しています。


Quotable

こんなことばも

「テスラを見てください。彼らはベンツSクラスに相当する『モデルS』からスタートしました。同社の目標は、電気自動車を一般大衆の手に届けることですが、(より安価な)『モデル3』をつくるようになったのは、業界に参入して8年目のことです」──Aspireの共同創業者兼CEO、Mohammed Ashou


One 🐶 Thing

ちなみに……

Two small white dogs.
Anything for you.
Image: REUTERS/Lisa Marie David

米国人は推定で1億6,300万匹のペットとともに生活しているといわれています。そして、2017年に米国で実施されたある調査は、同国内のペットフード生産が、食肉生産による環境負荷のうち25〜30%を占めているとしています

昆虫食のトレンドには大手ペットフード企業も参入しており、最近も仏バイオテクノロジー企業InnovaFeedが食品加工大手Archer-Daniels-Midlandと提携し、ハエの一種「ブラックソルジャーフライ」を原料とするドッグフードを製造すると発表しています

欧州で昆虫食人気が加熱する背景には、食品にどんな昆虫を取り入れられるかに関する規制が緩和されたことがありますが、この規制緩和がペットフードにも適用されているわけです。市場調査会社Future Market Insightsのデータによると、昆虫ベースのペットフードの世界売上は2021年に70億ドルに達する予測されています。ちなみに、調査会社Euromonitorによると、世界のペットフード市場全体は2021年に1,100億ドルに達し、2016年と比較すると実に39%増の成長が期待されています。


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