週の最後に、今週の注目ニュースをチェックしておきましょう。
24日(現地時間)、米テキサス州ユバルディのロブ小学校で、児童19人を含む21人が殺害されました。
単独犯とみられる地元出身の18歳、サルバドール・ラモス(事件現場で射殺)は、犯行現場である学校に行く直前、自らの祖母を撃ったとされています。また、襲撃の3日前、ラモスのものと思われるソーシャルメディアのアカウントには、「AR-15」モデルを含むライフル2丁の写真が投稿されていました。
2022年の144日目に発生した年内212件目の大量殺戮事件。非営利団体のパブリック・シチズンは銃乱射事件後、「銃による暴力は、公衆衛生の危機である」とツイートしています。
WHAT TO WATCH FOR
なにが議論されているか
銃乱射事件を受け、米上院議員クリス・マーフィーはこれからどうするべきか?と発言しています。
米国では、最も銃器に優しいとされるテキサス州の銃刀法をめぐり、国家的な議論が展開されるでしょう。グレッグ・アボット知事は「ユバルディで起きたことは、テキサス州では許されない恐ろしい悲劇だ」と述べていますが、銃所持の熱心な推進者である彼は昨年、テキサス州での銃の購入、携帯、保有が容易になる22の法案に署名していました(知事は今週末、ヒューストンで開かれる全米ライフル協会の年次総会で演説する予定)。
民主党は共和党に対して、行動を起こすよう強く求めています。一方、ユバルディの下院議員トニー・ゴンザレスは、かつて次のようにツイートして世間の反感を買っていました。「今日、下院で行われた2つの銃規制法案に反対票を投じた。わたしは憲法修正第2条の誇り高き支持者であり、極左による銃の強奪に反対するためにできる限りのことをするつもりだ」。銃乱射事件の後、彼は「家族のために祈ろう」と語っています。
その他、気になる数字を以下に挙げます。
- 27:2022年(まだ半ばも過ぎていない)に米国で起きた学校での銃乱射事件の件数
- :テキサス州のほとんどの場所での、銃の携帯に必要な訓練時間やライセンスの数
- 18歳:緊急保護命令下において、テキサス州民が拳銃を購入することができる年齢
- 60%:テキサス州民のうち、公共の場での無許可での銃の携帯に反対する人の割合(最近の調査による)
- 〜50%:銃刀法の厳格化に賛成するテキサス人の割合(同世論調査による)
We ordered the same gun
テキサスで銃を購入する
犯人が18歳になった数日後に購入した2丁のライフルのうちの1丁、「DDM4V7」を手に入れるのは、いったいどれほど困難なのでしょう。
答えは、「5クリック」。たった5回のクリックで、購入できるのです。
このAR-15シリーズのライフルは、ジョージア州に本社を置くダニエル・ディフェンス製。オンラインでは1,870ドル(プラス税)で販売されています。
「注文する」をクリックすると、購入を確認するメールが届き、銃が集荷場に向かう際に追跡番号が送られると記されていました。
ここまで、年齢証明や犯罪歴の有無など、銃の購入に必要な情報は一切求められませんでした。それらの情報は、現地の正規販売店で銃を受け取る際に必要になるのですが──それ以外は、Amazonでレゴを買ったり、Zapposで靴を買ったりするのと同じように“普通に”購入できたのです。
今回、ライフルを購入するにあたり、オースティンのメディア『Daily Dot』が公開していた犯人のレシートを参考にしたため、わたしたちはなにを買うべきかはっきりわかっていました。しかし、まだどれにするか決めかねている買い物客には、各ライフルの特徴を紹介したビデオが参考になります。DDM4V7の場合は、「重さは6ポンド強」で「非常に操作しやすく」「ご家庭の銃庫にも完璧に収まる」と説明されています。
また、ユーザーレビューも充実しています。DDM4V7は46件すべてが5つ星で、そのうちの1件は「すごい武器」と高評価です。
テキサス州の法律では、ライフル銃の購入者は18歳以上で、重罪や家庭内暴力の前科がないことが条件。連邦政府は身元調査を義務づけています。しかし、この点について、購入手続き中には何の通知も警告も表示されませんでした。
わたしたちが受け取りに選んだ地元の販売店、テキサス・ガン・エクスペリエンスでは、店員に対して身分証明書を提示し、用紙3枚への記入が求められました。
以上、購入完了です。もちろん、レゴやクツのように玄関先に届けられるわけではありません。ただ、そうした日用品の注文とさして違いを感じないという事実こそ、米国文化における銃の位置づけを物語っているといえるでしょう。
Gun and ammo stocks soar
株価上昇になにをみる
銃や弾薬の関連株は、それらが最も大きく取り上げられる銃乱射事件の後、上昇する傾向があります。そしてそれは、今回も例外ではありませんでした。事件の翌朝、銃・弾薬のトップ企業の株価が急騰しています。
実際のところ、銃乱射事件の後、銃の販売数は増加します。表向きの理由としては、「将来の銃撃犯から身を守るために武装する」という人が増えるから。あるいは、銃の販売規制が強化されることを見越して、急いで銃を購入する人もいるでしょう。
もっとも、例外もあります。
今月14日(現地時間)、ニューヨーク州バッファローで起きた人種差別的な銃乱射事件(黒人の多く済む地域の食料品店で10人が亡くなった)では、スミス&ウェッソンの株価はその日の終わりには下がっています。また、トランプ政権時代は、銃乱射事件後、銃・弾薬メーカーの株価・売上の上昇が少ない傾向にありました。それは、銃規制法案が可決することはないだろうという買い手心理が働いたのも一因でしょう。
今回のユバルディ銃乱射事件の後、銃関連の株価は大きく上昇しているのは、銃の買い手や投資家が、政策立案者たちがいよいよ動く可能性をより真剣に受け止めていることの表れなのかもしれません。
Google says…
検索からわかること
事件直後、Googleでは「gun control(銃規制)」「mass shooting(大量銃撃)」「protective gear(防護服)」といったフレーズの検索が急増しました。
Google検索のデータは事実の切り出しに過ぎませんが、銃乱射事件に対する関心がいかに早く薄れるかということも、このデータからわかります。銃乱射事件関連の検索は頻繁に行われているにもかかわらず、短時間で終了しているのです。
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