Weekend:シェリルの14年とこれから

Weekend:シェリルの14年とこれから
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週の最後に、今週の注目ニュースをチェックしておきましょう。Quartzで配信し、世界の読者が話題にした5本のニュースのサマリーもお届けします。

世界最大のソーシャルメディア企業、メタ(旧フェイスブック)で14年間にわたり最高執行責任者(COO)として君臨したシェリル・サンドバーグ。CEOのマーク・ザッカーバーグに次ぐ幹部である彼女が先週1日(現地時間)に同社を去る意向を明らかにして以降、メディア各誌は彼女の退社は「来るべきときが来た」と報じるとともに、メタにもたらす影響を伝えています。

2016年の米大統領選後の数年間、メタもサンドバーグも大きな論争に巻き込まれました。特にサンドバーグは、英データ分析会社、ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)にFBから最大8,700万人の個人情報が流出したスキャンダル、そして、誤情報の拡散をめぐる逆風にさらされてきました。

こうした論争をきっかけに、これまでサンドバーグに任せていた業務をザッカーバーグが引き受けるなど、社内のパワーバランスは変化していったと言われています。サンドバーグのスポットライトの下からの退きようは、特に、2010年代前半から半ばにかけての彼女の活躍と比較すると顕著なものでした。

サンドバーグは、当面の計画として、自身の財団と慈善活動(特に女性問題に関するもの)に専念し、新たに増える家族と過ごす時間を増やすと語っています。しかし、将来的には政界に転身するのではないか、あるいは他の大企業のCEOに就任するのではないか、というウワサは絶えません。

それらのウワサは、世界のジェンダーに対する認識の現在形はもちろん、テック企業とそれを経営する人びとをどう見ているかを示しているともいえるでしょう。

デューク大学フュークア経営大学院で経営者教育を行っている戦略コンサルタントのDorie Clarkは、「数年前、テック大手は『よいことのための自由な力』として広く愛されていたため、彼女にとってビッグ大手との関わりは大きなプラスだった」と言います。しかし、シリコンバレー全般、なかでもメタに対する人びとの感情が変化するにつれ、「彼女にとって、フェイスブックとのつながりは、ちょっとした頭痛の種になっていった」というのです。

彼女が政界進出を模索するとして、果たして有権者は、「米国で最も信頼されていないブランドの一つの経営に関わっていたこと」を経歴上のアピールポイントとする候補者を求めるでしょうか? さらに興味深いのは、その経歴を企業側はどう見ているのか、ということです。確かにかつては、シリコンバレーでの経験こそが、あらゆる企業に必要とされると考えられていた時代がありましたが、いまでもそうなのでしょうか?

メタの株価は、2012年の上場以来、さまざまな問題を抱えながらも、市場で見事なパフォーマンスを見せてきました。当時の同社はまだ若く、実績もありませんでしたが、大胆なイノベーターとの評価を受けており、それは経営者についても同様でした。しかし、いまは状況が逆転しています。サンドバーグがビジネスを成功に導いたことを否定する人は誰もいないでしょう。しかし、メタにおける彼女のレガシーは、もっと複雑なのです


SHERYL SANDBERG’S CAREER

サンドバーグの足跡

1991:サンドバーグはハーバード大学で経済学の学士号を取得し、卒業

1991〜1993:ハーバード大学時代の恩師で、当時、世界銀行のチーフエコノミストを務めていたローレンス・サマーズのもとで働く

1995:MBAを取得し、ハーバード・ビジネス・スクールを卒業

1995〜1996:米コンサルティング大手、マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)で勤務

1996〜2001:ビル・クリントン政権下で財務副長官、財務長官を務めたサマーズの首席補佐官を務める

2001-2008:グーグルに入社し、最終的にグローバルセールスおよびグローバルオペレーション担当副社長に就任

2008:フェイスブック(現在のメタ)にCOOとして参画

2010:「なぜ女性のリーダーは少ないのか」と題したTEDトークで話題をさらう

2012:フェイスブックが株式市場デビューを果たす。当初のパフォーマンスは期待外れなものだった

2013:著書『Lean In──女性、仕事、リーダーへの意欲』が出版され、1年以上にわたって、「The New York Times」のベストセラーリストに掲載される

2017:心理学者、アダム・グラントとの共著『Option B──逆境、レジリエンス、そして喜び』で、夫の死から立ち直るまでの体験を綴る

2018ケンブリッジ・アナリティカのスキャンダルや、FBを利用したロシアの米大統領選介入疑惑を受けて、サンドバーグに対する世間の批判が高まる

2022:サンドバーグがメタのCOO退任を発表


WHAT TO WATCH FOR NEXT

注目すべき4つの動き

  1. メタの財務的な未来は不透明。マーク・ザッカーバーグはVR(仮想現実)に全力を注いでいるが、メタバースどれだけ利益を上げられるかは不明です。
  2. ザッカーバーグは権力基盤を固めている。内部関係者によれば、ザッカーバーグは新たな「右腕」を任命するのではなく、自らを会社の唯一のリーダーとして位置づけているそうです。
  3. 従業員の士気は低下している。従業員の満足度は下がっており、最近、いくつかのチームで採用が凍結されたため、レイオフの可能性を心配している従業員もいます。
  4. サンドバーグに対する社内調査。サンドバーグが『The Daily Mail』に自分の元交際相手に関する記事を消すよう圧力をかけたという報道(メタによれば解決済み)に関する会社の調査に加えて、『The Wall Street Journal』によれば、同社はサンドバーグが近々予定されている挙式のために会社のリソースを使ったという疑惑についても調査していたと報じています。メタは、どちらの疑惑についても、サンドバーグの退任の決定とは関係ないとしています。

今日のニュースレターは、QuartzのSarah Toddがお届けしました。


5 GREAT STORIES FROM Quartz

注目のニュース5選

Elon Musk looking unhappy
Elon Musk is in a bind.
Image: Reuters/Brendan McDermid
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  2. 🇦🇺 しわ寄せは、オーストラリアに。オーストラリアは、液化天然ガス(LNG)の世界最大の輸出国として知られています。そのオーストラリアが、いま、国内のガス危機に直面。電力とガスの価格が急騰しています。その要因として、政府によるLNGへの投資不足や輸出過多が指摘されています
  3. 👩‍🎓 バイデン、学生ローンを帳消しに? 米国における「学生ローン」は1.6兆ドルに上っており、長年にわたって大きな議論を巻き起こしてきました。そんななか、ジョー・バイデン米大統領がこの夏、学生ローン免除計画を発表する可能性が高まっていると『Wall Street Journal』が報じています。関係者によると、年収が12万5,000ドル以下であれば、学生ローンの残高から1万ドルを帳消しにすることができるようになるとも。
  4. 🇨🇳 検査のコストとGDP。上海でのロックダウンが徐々に解除されている中国では、この半年間で、数千万件におよぶ無料のPCR検査が実施してきました。このコストをめぐって、野村證券のエコノミストが興味深いレポートを発表しています。PCR検査1回にかかるコストは通常16~20元ですが、中国の人口の70%を2日ごとに検査した場合、中国の財政支出の8.4%に相当するようです。レポートは、この検査が中国のGDPの1.8%に相当していること、そして経済の低迷をさらに悪化させることになると指摘しています。
  5. 🇺🇸 買わなきゃよかった…。米国では、住宅市場が急激に減速しています。住宅ローンの平均金利は、年初の3%前後から5%以上に急上昇。不動産プラットフォーム「Zillow」の最新調査によると、住宅価格が低下したことで、米国で住宅を購入した人の約半数が涙を呑んでいるとのことです。

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