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週に一度、夜にお届けする日本版ニュースレター「Obsessions」では、グローバル版の人気シリーズ「Obsessions」の翻訳をはじめとするレポート、インサイトをお送りしていきます。
社会保障番号(Social Security number、SSN)は、米国人の人生の──文字通り生まれてから死ぬまでの──あらゆる節目に登場します。書類が存在するところにSSNあり。この9ケタの数字は、“必須”ではない場合もあるかもしれませんが、たいていの場合、要求されます。
その名が示す通り、SSNは社会保障給付金を支払うために国民の収入を追跡する手段として導入されました。そして時が経ち、SNNは銀行口座や医療記録、ローンなど実に多岐にわたる情報を解除する、“パスワード”に進化したのです。
他のどんなパスワードもそうであるように、SSNもまた、それを確認する側とされる側の2者が知っていなければ機能しません。いま問題となっているのは、その当事者が劇的に増えたことで、社会保障番号が容易に盗まれ、悪用されるようになったことです。
情報漏えいの規模は日増しに大きくなっており、その見直しを求める声が高まっています。しかし、SSNがすぐに別の何かに置き換わるかというと、それは簡単なことではなさそうです。
by the digit
数字でみる
- 055-09-0001:最初のSSN。ニューヨーク州ニューロシェルのJohn D. Sweeney, Jr.のもの
- 3,000万件:SSNの発行が開始されて6カ月間で処理された申請件数
- 50以上:ソーシャル・セキュリティ・カードのデザイン数
- 4億5,370万件:米国でこれまでに発行されたSSNの件数
- 6~34ドル:ソーシャル・セキュリティー・カードの発行費
- 2億9,390万人:2021年の個人情報漏えい被害者数(のべ)
- 83%:2021年に米国で発生したデータ漏洩のうち、SSNなどの機密情報に関わるものの割合
- 240億ドル:2021年の個人情報漏えいの被害額
- 161:国民IDとして生体データを収集している国の数
a dime a dozen
いまそこにある危機
SNNの盗難は、もはや日常茶飯事の出来事です。非営利団体のIdentity Theft Resource Center(ITRC)によれば、情報漏えいの事案において、SNNは氏名に次いで多く流出する情報だとされています。
いまハッカーが標的とするのは、主に個人ではなく企業です。ITRCによると、最近のハッカーは企業ネットワークに侵入しサイバー攻撃を仕掛けることで、より多くの利益を得られるようになっているといいます。
ゆえに、情報漏えいの件数は増加しているものの、被害者の数そのものは減少傾向にあります。とはいえ、米国人は自身のSSNを注意深く管理する必要があります。ITRCは2021年の報告書で、「年に何度もデータが漏えいする消費者の数は、依然として過剰に多い」と指摘しています。
quotable
けだし名言
SSNは、史上最悪のパスワードだ。そしてそれは、法律が生み出した。
──Daniel J. SoloveとWoodrow Hartzogの著書「Why Data Security Law Fails and How to Improve It」より
brief history
SSN小史
1935:フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領(当時)が社会保障法に署名
1936:最初のソーシャル・セキュリティー・カードが発行される
1943:連邦機関がSSNの収集を開始
1962:内国歳入庁(IRS、米国国税庁)が確定申告の際にSSNを求めるように
1970:銀行に対し、全顧客のSSNを収集することが要求される
1981:ロナルド・レーガン大統領(当時)が、不法移民を抑制するための国民IDカードの提案を却下。「すべての新生児に焼印を押すべきかもしれない」と発言
1996:結婚証明書や離婚証明書、運転免許証など、あらゆる公的書類においてSSNが必須に
2011:なりすましを防ぐため、社会保障庁はSNSをランダムに割り当てるように(それ以前は、最初の3桁はSSNが発行された州に基づいていた)
2017:ハッカーが信用調査会社Equifaxから1億4,550万件のSNSを盗み出す事件が発生
How do other countries do ID?
世界の国民ID事情
- 🧒 ベルギー:12歳以下の子どもに特別なIDカードを発行。図書館での本の貸し出し、学校の登録、旅行などに利用できる
- 🔟➕ インドネシア、日本、カザフスタンなど10カ国以上: 12桁以上の国民IDが発行されている
- 👁️ フィリピン:国民IDシステムのために虹彩データと指紋を収集している
- 📱 ナイジェリア:国民IDカードは、スマホにダウンロードできるアプリに
- 🌐 エストニア:ウェブ上で身分を証明できるデジタルIDが運用されている
本日のメールは、Ana Campoyが執筆、Susan Howsonが編集、Jordan Weinstock(番号ではありません)が制作を担当しました。日本版の編集は年吉聡太が担当しています。
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