Africa:Eコマースの新しい波

Africa:Eコマースの新しい波
I bought it on Whatsapp
Image: Quartz

アフリカのいまを知ることは、世界のビジネスの未来の可能性を知ること──火曜夜にお届けしている「Africa」ニュースレターでは、毎週ひとつのスタートアップを取り上げ、彼らが社会の何をどう解決しているかをレポートしています。

普段からテックに接している30歳以下の若者が人口の大半を占めるアフリカで、いまEコマース(EC)の成長が顕著なのは当然です。加えて、パンデミックによってECの利用はさらに加速しました。

なかでもECのジャンルのひとつ「ソーシャルコマース」(WhatsAppやTelegram、Instagramなどのソーシャルメディアを通じて流行の最先端の服などの商品が売買される)の成長も著しいですが、このジャンルに関わるスタートアップが、既存の小売業のあり方を一変させようとしています

ソーシャルコマース・スタートアップの多くはD2Cの業態に対してアルゴリズムを利用したターゲットマーケティングを推進していますが、二段構えのアプローチを取っている企業もあります。まず、大規模なサプライヤーと提携している代理店が大量の製品リストをソーシャルメディアに展開します。これらの代理店は在庫をもつ必要がなく、サプライヤーの製品カタログと自分のソーシャルメディアネットワークを使って製品を販売し、手数料を受け取るのです。

雇用の83%インフォーマルセクター(非公式部門)が占めるアフリカでは、同様の柔軟なかたちとしてソーシャルコマースが活用されています。また、アフリカの消費者はPCよりもスマートフォンを利用することが多いですが、ソーシャルコマースはそうしたトレンドとも合致しています。


CHEAT SHEET

ビジネスとしての可能性

💡 期待される理由:インターネット、とくにスマートフォンの普及が進むアフリカでは、コミュニケーションやネットワーキングにおけるソーシャルメディアへの依存度が高まっています。これは急成長を遂げているソーシャルコマース企業にとって大きなチャンスとなるでしょう。

🌍 これからのロードマップ:アフリカ市場のソーシャルコマース・スタートアップはFacebookやInstagram、Telegram、WhatsApp、Twitterなどのプラットフォームでより多くの人にリーチするためにソーシャルメディアエージェントを利用しています。こうしたエージェントは、関心をもちそうなエンドユーザーに商品に関する情報を直接届けるのです。

🤔 解決すべき課題:ソーシャルコマース/EC企業は、アフリカのインフォーマルセクター(非公式)の小売流通プラットフォームを公式なチャネルに組織化することにチャンスを見出しています。また人口の大半がサービスの行き届かない農村部にいるアフリカでは、インターネットの高額さと脆弱さも課題となっています。

💰 注目すべきステークホルダー:ソーシャルメディアセールスの代理店、Eコマースやソーシャルメディア関連スタートアップ、デジタルビジネス、開発金融機関、国際金融機関、フィンテック企業、消費者。


BY THE DIGITS

数字でみる

  • 92%:ケニアの中小企業のうち、ビジネスでソーシャルメディアを活用している会社の割合
  • 89億ドル(約1兆1,816億円):アフリカ・中東地域におけるソーシャルコマースの産業規模(~2022年)
  • 55.2%:アフリカと中東における2022年から2028年にかけてのソーシャルコマースの予想成長率。2028時点での市場規模は推定133億ドル(約1兆7,657億円)
  • 5億2,000万人:アフリカのオンラインショッピング利用者の推定数(~2025年)

THE CASE STUDY

ケーススタディ

企業名:Brimore

本社所在地:エジプト

創業者:Mohamed Abdulaziz, Ahmed Sheikah

2017年創業のBrimoreは、メーカーに変わってソーシャルメディアで商品を販売するエジプトのソーシャルコマース・スタートアップです。提携先のほとんどは女性の再販業者(リセラー)で、現在同社は7万5,000人の女性と、エジプト国内の300のメーカーと提携しているといいます。

エジプトではテックスタートアップのエコシステムが花開き、ベンチャーファイナンスも増加していますが、アフリカ全体の資金調達状況にはいまだに男女差があります(2021年にアフリカのスタートアップへ投資された資金のうち、最高経営責任者(CEO)が女性である企業に投資されたのはわずか6.5%でした)。こうした見過ごされている起業家のグループに焦点を当てることで、Brimoreは国際金融公社(IFC)やAlgebra Ventures、Endure Capitalといったグローバルな企業からの資金調達に成功しました。

同社は2022年、IFCからの500万ドル(約6億7,476万円)を含む2,500万ドル(約33億7,381万円)を調達し、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達総額は4,000万ドル(約53億9,811万円)に達しました。2月にはエジプトの物流・ラストマイル配送スタートアップであるMilezmoreにも500万ドルを投資し、現在はケニアとモロッコへの進出を準備中です。


IN CONVERSATION WITH

だれもが「商売」できる

Brimoreの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のアハメド・シェイカAhmed Sheikha)は、アフリカの女性たちが収入を得る機会を増やすことが重要だと考えています。以下、シェイカとのインタビューから、興味深い発言を紹介します。

──Brimoreの仕組みは?

まずサプライヤー側が商品をBrimoreに出品します。次に、当社がそれらの商品を市場や戦略、価格、競合といった要件に合うかたちでモバイルアプリに掲載します。商品が掲載されると、再販業者たちには通知が送られます。業者は新商品をチェックし、商品の素材や写真、詳細、価格などをソーシャルメディア上で友人や家族、ネットワークと共有するのです。販売は主にソーシャルメディアを通じて行われます。

──創業のきっかけを教えてください。

誰も知らない新しいブランドを創業する場合、通常はまずマーケティングや販売、流通に多額の費用をかけて消費者に届ける準備をする必要があります。その後ようやく販売を始められるわけですが、これは大変なプロセスです。そこでわたしたちはソーシャルメディアを通じて友人や家族、親しい人たちに販売できるマイクロセラーのネットワークをつくろうと考えたのです。

──個人的なモチベーションはどこにありますか?

Brimoreのようなビジネスがあらゆるステークホルダーにもたらす機会や貯蓄、収入に興味をもちました。人びとが十分な収入を得たり、より多くのスキルを身につけたり、ソーシャルメディアを通じた製品の再販を通じて周りに影響を与えたりするのを手助けするのです。また、テクノロジーの利用は組織化されていなかった小売市場をまとめる当社ならではの方法でした。


SOCIAL COMMERCE DEALS TO 👀

ECの注目ディール

  • ケニアを拠点とするB2BのECスタートアップであるWasoko(旧Sokowatch)は、2022年にシリーズBラウンドで1億2,500万ドル(約161億3,553万円)を調達しました。WasokoはBuy Now Pay Later(BNPL、後払い販売)でインフォーマルセクターの小売業者が携帯電話を使って物資を補充できるようにしています。Wasokoは今回の資金調達を通じてナイジェリアや南部アフリカの他の国々へ進出し、アフリカ全土でのプレゼンスを高めようとしています。
  • ケニアのソーシャルコマース・スタートアップであるTushopは、2022年4月にプレシードラウンドで300万ドル(約4億328万円)を調達しました。同社はこの資金で組織を拡大し、引き続きスケールアップに務めるということです。2021年創業のTushopは各コミュニティーにリーダーを立てて食料品などの注文を募り、それを配達する代わりに手数料を得ています。
  • ケニア市場に特化した米国のソーシャル&Eコマース・スタートアップであるElloeは、プレシード資金調達ラウンドで100万ドル(約1億3,495万円)を調達しました。同社はAIを活用したソーシャルメッセージングプラットフォームでのEコマース業務に注力しており、この資金で東南アジア市場への進出を進める予定です。
  • ナイジェリア発のソーシャルコマース・スタートアップであるRabawaは、2020年に163,000ドル(約219万円)を調達しました。資金はソーシャルコマースとビデオコマースのプラットフォームを活用したEC事業を強化するために使われる予定です。同社は再販業者が生産者に代わりソーシャルメディア・プラットフォームでエンドユーザー向けに商品を宣伝・販売できる仕組みをつくっています。

🎵 今週の「Weekly Africa」は、Sona Jobarteh(ガンビア)の「Gambia」と「Jarabi」を聴きながら、ジンバブエのハラレ在住のコントリビューターのTawanda Karombogがお届けしました。日本版の翻訳は川鍋明日香、編集は年吉聡太が担当しています。


ONE 😃 THING

ちなみに……

中部アフリカはアフリカのほかの地域に比べてインターネットの普及率が低い一方、ソーシャルコマースの利用率は比較的高い水準にあります。カメルーンで実施されたある調査では、回答者の68%がFacebookを通じて商品を購入したことがあり、88%がフェイスブック傘下のWhatsAppを通じて買い物をしたことがあると回答しました。


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