Africa:次の金脈。アフリカ・スタートアップ7選

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Africa Rising

躍動するアフリカ

毎週水曜の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目する「アフリカ」の今、と主要ニュースを伝えていきます。英語版(参考)はこちら

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Image: QUARTZ/ALICIA GEARTY

アフリカのスタートアップが今年、新たな記録を打ち立てようとしている。

実は2018年も、アフリカのスタートアップは、史上最大の7億2,500万ドル(約800億円)という巨額を集めていた。しかし今年は、トップ企業たちの調達額だけで、すでに6億9,900万ドル(約770億円)に上るのだ。(※アフリカにおける100万ドル以上のVC取引をトラックするGreenTec Capital Partnersによるもの)

Quartzでは、アフリカの起業家と投資家たちによるスタートアップのネットワーク網を分析するとともに、今知るべきスタートアップ7選を紹介していく。

African 4 countries

アフリカの「BIG4」

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アフリカのスタートアップ事情を知るためにまず注目すべきは4カ国だ。

  1. ケニア
  2. ナイジェリア
  3. 南アフリカ
  4. エジプト

今年のスタートアップディールのうち、1億円を超えるレベルのものは、これら4カ国での取り引きが73%を占めた。さらに資金調達のうち71%を構成している。

つまり、アフリカのスタートアップシーンにおいては、ケニア、ナイジェリア、南アメリカ、エジプトの4カ国が主要国だということである。実は、2018年はケニア、ナイジェリア、南アフリカの3カ国だけで、アフリカのVC調達の78%を占めるほどだったので、去年よりは主要国への集中傾向は緩まっているといえる。

一方、起業家への支援網は、まだまだエリアごとの組織に集中している。アフリカのイノベーターに資金提供や、施設の貸し出し、その他サポートをする643のハブのうち、42%がケニア、ナイジェリア、南アフリカ、エジプトの4カ国を拠点としている。

カイロ、ケープタウン、ヨハネスブルグ、ラゴス、ナイロビにはそれぞれ20からそれ以上のハブがある。

Francophone Africa(フランス語圏の躍進)

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これまで、フランス語圏のアフリカ諸国は、英語圏に遅れを取ってきた。

言語のバリアや、そもそもの経済規模の小ささが、西アフリカや中央アフリカにとっては、大きな課題だった。しかし、2019年、セネガル、コートジボワール、マリ、トーゴ、さらに北アフリカのモロッコ、チュニジアといった国々が経済成長と、スタートアップの躍進を遂げている。以下が3つのキーナンバーだ。

  • 4.2%:2012〜2017年のサブサハラ(サハラ砂漠以南)のフランス語圏諸国の経済成長率。他の地域の3%とという数字と比べると、その成長率の高さが分かる。
  • 5000万ドル(55億円):セネガルが、女性や若手の起業家につぎ込んだ金額
  • 21分の11:フランス語のイノベーションハブを10個以上持つ国の数。全体では212個のハブがある。

African Fintech(フィンテックの躍進)

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アフリカのフィンテックの伸びは凄まじい。

2018年、アフリカのVC投資の中で、フィンテックは40%を占め、フィンテックはダントツの存在感を示した。

特に、モバイルバンキングは、これまで銀行で利用できなかった層にも金融インフラを提供できるようになり、アフリカ諸国でとてつもない成功を収めている。フィンテックの資金調達の沸騰は、この勢いを受けたものだ。

2019年もフィンテックが一番の牽引役ではあるが、スタートアップの資金は行く先は、エネルギー、物流、医療など多様化し始めた。今年はフィンテックへの大型投資は28%にとどまり、1億ドル(110億円)を超える資金を唯一調達したのは、教育ソフトウェアのAndelaだった。

Startups to watch

スタートアップ 7選

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Paga(ナイジェリア)

  • 創業者:Tayo Oviosu(CEO)
  • 創業年:2009年
  • 調達額:2億200万ドル(約220億円)
  • 投資家数:12人

Pagaは、モバイル決済のプラットフォームを提供するスタートアップ。送金や支払い、ほかの金融サービスを、消費者向けと企業向けの両方で展開している。ナイジェリアでは、すでに1200万人以上のユーザーを抱えており、他の新興市場でもサービスを展開していきたいとしている。社員は、すでに多国籍で、ほとんどのプラットホームの開発は、エチオピアのアディスアベバで行われている。

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Swvl(エジプト)

  • 設立者:Mostafa Kandil(CEO)、Ahmed Sabbah(CTO)、Mahmoud Nouh(COO)
  • 創業年:2017年
  • 調達額:6650万ドル(約72億円)
  • 投資家数:18

Swvlは、ライドシェアのプラットフォームで、バス運転手と乗客をマッチするもの。アフリカスタートアップシーンの目覚しい成長の代表格とされる。今やエジプトだけでなく、ケニアとパキスタンでも同様のサービスをスタート。今年は4,200万ドル(約46億円)の資金調達に成功している。

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SolarNow(ウガンダ)

  • 設立者:Willem Nolens
  • 創業年:2011年
  • 調達額:2000万ドル(約22億円)
  • 投資家数:7

SolarNowはオランダと東アフリカの会社で、ウガンダとケニアでおいて太陽光発電の製品を展開する。ソーラーを利用した商品が特別なものだという販売戦略をし、顧客が分割払いでも欲しいと思えるようなアプローチをしている。また、ソーラーエネルギーを使って収入を得ようとしているクライアントを優先しているという。

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mPharma(ガーナ)

  • 設立者:Gregory Rockson(CEO)
  • 創業年:2012年
  • 調達額:2510万ドル(約28億円)
  • 投資家数:16

mPharmaは、自社在庫から薬局へ直接薬を供給することで、患者に安価で安全な価格の薬を届けるサービス。薬局やサプライヤーのための在庫管理も提供している。特にシリコンバレーからの関心が大きく、Facebookの投資者であるJim Breyerは、アフリカでの初投資に同社を選んだ。今年3月には、ケニアで2番目に大きい薬局チェーン「Haltons」の買収もしている。

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Andela(ナイジェリア)

  • 設立者:Jeremy Johnson(CEO), Christina Sass(Chair)
  • 創業年:2014年
  • 調達額:1億7850万ドル(約190億円)
  • 投資家数:38

Andelaはアフリカにおける、ソフトエンジニアを欲しがる企業のために、エンジニアチームをリクルート&採用し、訓練する事業を展開している。すでに、IBMやViacomを含む135にもおよぶパートナー企業と提携。オフィスはエジプト、ルワンダ、ウガンダ、ケニア、そしてアメリカにある。

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Jumia(ナイジェリア)

  • 設立者:Sacha Poigonnec(co-CEO), Jeremy Hodara(co-CEO)
  • 創業年:2012年
  • 時価総額:4億9400万ドル(約530億円)
  • 投資家数:7

Jumiaは、Eコマースと物流を手掛けるスタートアップで、「アフリカのアマゾン」との異名を持つ。2019年3月にはニューヨーク証券取引所に上場した。現在、400万人の会員を持ち、アフリカの14カ国において展開しているほか、共同創業者がフランス人であり、ドイツに本社を持ち、中東や欧州に拠点を持つことから、議論を呼んでいる。共同創業者のうちアフリカ人の2人はすでに会社を去っている。

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Twiga Foods(ケニア)

  • 創業者:Peter Njono(CEO)、Grant Brooke (director)
  • 創業年:2014年
  • 調達額:5050万ドル(約55億円)
  • 投資家数:18

Twiga Foodsは、BtoB向けの流通プラットフォームを提供する、農業のスタートアップ。バナナやマンゴーはじめとする果物や野菜を取り扱う。現在、17,000の農家と18,000の販売会社が同サービスをケニアで使用。今後は、フランス領西アフリカを中心に、5カ国への事業拡大も見据えている。

This week’s top stories

今週のアフリカ6ニュース

  1. ケニアのセキュリティ強化。ケニアがEUで施行されていた新しいデータ保護法をヒントに、市民のデジタルセキュリティを強化する。これは、アフリカ全体で市民からのデータ保護に対する声が高まる中、ケニアが率先して行うことになったため。
  2. ギニア大統領3期目は。ギニアの大統領であるアルファ・コンデが、反政府抗議行動が拡大するにつれ、自身の3期目のリスクを覚悟している。また、政治的便宜のために憲法を改正しようとしていると言われている。
  3. 新紙幣のモバイルテスト。ジンバブエの新紙幣は、主要な電子マネーへの適用テストに直面している。ジンバブエには公式通貨紙幣があるが、 2009年以来初めて、2年間続いた現金不足の問題を解決することを期待して発行された。
  4. コートジボワールで洪水。コートジボワール最大の川の水位が上昇した結果、過去2か月間、ユネスコの世界遺産に登録されているグランバッサムにあるカルティエフランスの街や家で悲惨な洪水が発生している。
  5. 中国vs中国 in アフリカ。中国は、アフリカのオンライン決済市場を獲得するために自国と戦っている。アフリカでトップの携帯電話メーカーで、中国に本拠を置くTranssion Holdingsは、4,000万ドルの資金調達をした決済サービスであるPalmPayをスタートした。現在、ナイジェリアにある決済サービスであるOPayは、中国が所有するウェブブラウザOperaが5,000万ドルの資金で支援している。
  6. ナイジェリアで拘束中。今週、ナイジェリア・アブジャの警備員は、ナイジェリアの政治に焦点を当てたニューヨークの「サハラ・レポーターズ」の発行者であるOmoyele Soworeの拘束に抗議するジャーナリストと活動家に発砲した。Omoyeleは今年8月より拘束され、まだ釈放さていない。

【お知らせ】

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(翻訳・編集:福津くるみ、写真:Quartz)