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Africa Rising
躍動するアフリカ
Quartz 読者の皆さん、こんにちは。毎週水曜の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目する「アフリカ」の今と、主要ニュースを伝えていきます。今日は、拡大するアフリカのテックシーンとともに未だに透明性がなく見極める必要がある「市場の価値」についてレポートします。英語版(参考)はこちら。
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2019年、アフリカのスタートアップ企業たちは一体いくらの資金調達に成功したのだろうか? それは、答える相手によって異っているのが現状である。
過去10年間でアフリカのテックシーンは盛り上がり、投資家たちから数百万ドル単位の支援を受けてきた。しかし、毎年発表される投資内容を分析するレポートは、各社異なる結果を導き出している。
Partech Ventures、WeeTracker、そしてBriter Bridgesの3社が発表するスタートアップ企業についてのレポートはすべて、去年の調達資金の総額が10億ドル(約1,080億円)以上だったことを報告している一方で、調達金の合計額はそれぞれ異なる。
■2019年、アフリカのスタートアップはいくらの資金調達に成功したのか?
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ただし、下記3つの大きなトレンドは、すべてのレポートでも合致している。
- ナイジェリアとケニアが市場の中で優勢
- フィンテック産業の成長が著しい
- 中国企業の参入などがアフリカ市場の要となっている
more transparency
今はまだ不透明
資金の合計額は、調査チームが使用する方法によって違ってくる。たとえば、Partech Venturesは非公開の取引についてもレポートに含めているのに対し、WeeTrackerは値ではなく取引数を軸に、非公開のもののみを扱っている。
「資金総額の大半は、スタートアップをどのように定義するかによって左右され、データをどこまで含めらるのかも影響します」と、WeeTracker共同創設者のナヤンタラ・ジャー(Nayantara Jha)は話す。さらに、「定義が異なれば、数値も常に異なるのです」と、Quartzに述べた。
Partechアフリカ支部のゼネラルパートナーであるティジャネ・デメ(Tidjane Dème)いわく、資金調達を明確に分析するためには、「投資開示を透明にするという文化が根付くこと」が大切だという。
「アフリカの経済エコシステムはさらなる資金調達が必要ですが、そのためには投資家たちがどこに市場が存在するのかを、データをもとに見極めなければなりません。しかし、そのデータを入手するのが難しいこともあるのです。結局のところ、市場全体をより活性化させるために必要なのは透明性なのです」
State of play
次に来る市場
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分析方法はさまざまだが、投資人気の高い企業の上位5位までをナイジェリア、ケニア、エジプト、そして南アフリカが占めている点において、3社ともに報告している。
投資家たちが動き始めると予測されるなか、Briter Bridgesにデータを提供したベンチャー投資アナリストのマキシム・バイエン(Maxime Bayen)は、現在、投資市場を牽引している企業以外への投資の活性化に期待している。
「ガーナ、タンザニア、ウガンダに代表されるアングロフォンアフリカ(英語圏のアフリカ)や、セネガル、コートジボワール、カメルーンといったフランコフォンアフリカ(フランス語圏のアフリカ)の国々でも地域に根差したスタートアップが台頭してくるでしょう」と説明する。
「これらの市場はナイジェリアやケニアと比べて数年遅れをとっているので、現在はナイジェリアやケニアが4〜5年ほど前に経験していた成熟状態にあると言えます」
この予測が結実する可能性を秘めているのは、3年前と比べて、常に複数の取引を同時に進めているような「アフリカに注目している多くの投資家たちが存在する」からだ、と前述したDèmeは言う。「我々が初めてレポートを出したとき、220人の個人投資家がアフリカで参加していましたが、ひとつ以上の取引を行っていたのは12人だけでした。そのころはまだ、投資家たちの多くはアフリカの様子見をしていたのです」
投資家たちがアフリカのスタートアップを継続的に支援する姿を見て、新たな投資家たちも参戦してきている。2019年、アフリカに注力したファンドが20社以上開業した。
業界で見てみると、スタートアップ全体の資金調達を牽引しているのは引き続きフィンテック産業で、最大のシェアを有している。フィンテック企業が金融系サービスや商品をつくるだけでなく、インフラづくりにも乗り出している点が、シリコンバレーのベンチャーキャピタリストからグローバル決済会社までの注目を集めるきっかけとなっている。
■2019年、アフリカの投資先として人気の業界ランキング(各調査会社調べ)
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2019年のトレンドで忘れてはならないのが、中国の投資家たちの影響。彼らは去年の下半期だけで、総額約4億ドル(約480億円)の融資をした。
2020年は、シリコンバレーに追随するように、中国のベンチャーキャピタルや投資家たちからの投資額が総額10億ドル(約1,080億円)まで届くのではないかとの憶測もある。
Exit signs
これからの10年
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年間投資総額10億ドル(約1,080億円)という大台を超えたことにより、スタートアップ企業たちは、期待を背負っている。Partechが指摘するように、ローカル企業や経済エコシステムへの注目は今後、投資額が増えるにつれて「価値創造と投資家たちへの還元」にシフトしていく。
2019年4月、アフリカ大陸のeコマース最大手「Jumia(ジュミア)」がニューヨーク証券取引所でIPOを行った。アフリカ初のユニコーン企業である「Interswitch(インタースイッチ)」も、今年株式公開を行うと予測されている。
しかし、大々的に注目されるようなイグジット手法が取られるのは稀で、必ずしも簡単なことではない。 Dèmeは「統計的に見てもめったに起こらないIPOはまぐれ当たりで、皆が夢見ることではあるが、今はその考えは脇に置いておくのがよいでしょう」と話す。
「ブロックバスター」級のIPOがめったに起こらないという現状があり、企業たちがスケール感を求める結果、企業合併が頻繁に起こるのではないか、との見方もある。
しかし多くの企業は、収益を出せる会社にするか、もしくは合併できる程度の会社まで成長させることで、投資家たちへ還元しなければならない。 Dèmeが言うように、アフリカのスタートアップは投資家にとって、まだまだ魅力的で大きな成長を見せるポテンシャルがあるという点は朗報だ。
当然ながら、経済エコシステム、市場、そして企業が成熟していくにつれて、これからはその約束を果たせるかどうかが精査される10年となる。
「これからの数年は、アフリカのスタートアップ企業の売買における市場流動性のテスト期間となるでしょう」と Dèmeは話す。「ここからが、アフリカの経済エコシステムにとって本当の勝負なのです」
This week’s top stories
今週のアフリカニュース4選
- トランプ政権がアフリカ人の入国制限。1月31日、ナイジェリアとエリトリアへの入国を制限すると発表しました。新しい規制により、両国の国民に永住権と移民ビザの発行を一時停止。また、タンザニアとスーダンは米国移民多様化プログラムから除外されることになりました。テック産業の中心地であるナイジェリアにも影響が出るかもしれません。
- Sendyが好調に資金調達。ケニアのオンデマンド配達サービスのスタートアップ「Sendy(センディ)」が、Atlantica Venturesなどから2,000万ドル(約21.7億円)をシリーズBで調達しました。トヨタの貿易投資部門である豊田通商も同ラウンドに参加しました。
- ラゴスに「Google Developer Space」が誕生。Googleは、先日、勢いのあるテックハブであるナイジェリア・ラゴスに「Google Developer Space」を立ち上げました。同所はアフリカのデベロッパー、起業家、スタートアップに開放されており、スタートアップアクセラレータープログラムのアフリカ版「Google Launchpad Accelerator Africa」もこちらで行われます。
- 運行を続けるエチオピア航空。新型コロナウィルスの影響で、世界中の空の便へも影響が出ていますが、エチオピア航空は声明で、中国(北京、上海、広州、成都、香港)への発着便をそのまま運行し続けると発表しています。市民のなかにはこの決定に対し不満をソーシャルメディアで投稿して訴える人もいます。
【Quartz Japan読者イベント開催】
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読者の皆さんとのミートアップイベント「Voice Up」を開催します。
日時:2020年2月14日19:00〜
場所:都内某所
参加をご希望の方はこちらのフォームよりご応募下さい。応募多数の場合は、抽選とさせていただきますこと、ご了承下さい。
【今週の特集】
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今週のQuartz(英語版)の特集は「The VC boom(VCブームの行方)」です。つい最近までニッチな産業に過ぎなかったベンチャーキャピタルが今や爆発し、特に大きなVCによる弊害や問題も生まれています。その最前線をQuartzがレポートしていきます。
(翻訳・編集:福津くるみ、写真:Quartz, ロイター)
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