India:「デモよりセックス」のリアル

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India Explosion

爆発するインディア

Quartz読者のみなさん、こんにちは。3連休前の金曜日、今週もお疲れ様でした。新型コロナウィルスの対応をめぐる国会での議論が続いていますが、皆さんはどうお考えでしょう。日本の若者は政治への意見を持つ人が少ないとされる一方、インドは違います。政治的思想と恋愛がどう影響を及ぼすのか──。今週は次なる巨大市場「インド」の若者たちの愛と政治の関係についてリポートします。英語版(参考)はこちら

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Image: REUTERS/ADAN ABIDI

デーティング・プラットフォームOkCupidが集計したデータから、インドの若者の実に90%以上が、政治問題や時事問題についてリアルタイムで情報を得ることが大切だと考えていることが明らかになりました。

インドでは10日に近隣3カ国からの不法移民に市民権を与える「インド市民権改正法(CAA)」が施行されましたが、イスラム教徒を対象にしないこの法案に対し、可決された昨年12月から全国的な抗議デモやハンガーストライキが今も続いています。そんな世論を受け、11日に投開票されたデリー首都圏の議会選は、CAAを推し進めたモディ首相率いる与党インド人民党(BJP)は大敗を喫しました。

インドの若者にとって、政治に対し自分の考えを主張する行為はごく自然なことなのです。OkCupidの調査で回答した25〜35歳の彼・彼女らは、投票という責任を全うすること、デモに参加することを重要だと考えています。

■投票しない人々は罰せられるべきだと考えますか?
正当な理由をもってデモに参加しますか?

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OkCupidでは最近、インドのミレニアル世代とZ世代が、政治的思想を同じくする人同士の出会いをサポートする目的で、注目を集めるCAAとNRCNRC=国民登録簿:「インド国民」と認められた市民の名前を掲載したリスト。「不法滞在者の一掃のため」に制作されたというこの名簿は事実上、イスラム教徒を排斥するための新たな弾圧の手段と批難が続いている)について3つの新しい質問を追加しました。

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Image: in Kolkata, India, December 27, 2019. REUTERS/RUPAK DE CHOWDHURI

DATING RULES

デートのルール

質問に答えたのは約3万5,000人。NRCとCAAへのデモの正当性を認める割合は、男女で差が認められました。インドでは、歴史的に差別されてきた経緯から自分の市民権を証明する書類をもつ女性は少なく、識字率にも性差での不平等があります。

社会的弱者である女性たちは、この新たな登録制度によって迫害されるのが自分たちであることを恐れているのです。NRCもCAAも弱者を糾弾する制度だとして、デリー近郊では2カ月以上座り込みが続いており、女性たちに共感が広まっていることが伺えます。

■CAAとNRCに対する抗議は正当化されると考えますか?

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また女性は、同じまたは同様の政治的思想をもつパートナーとのマッチングをより意識しているようでした。男性はわずか21%だったのに対し、女性の54%は懸念事項でした。女性の方が、「誰と一緒にいたいのか」について、より明確であることを示しています。

そう、男性は女性ほど気にしていないのです。多くの男性は、NRCとCAAの問題について対立する見解をもつ相手でも、気にせずデートするという回答が半数以上を占めました。

■CAAとNRCについて意見が対立する人とデートしますか?

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政府への不満拡大の火種となった、昨年12月15日と今年1月5日にジャワハルラール・ネルー大学(JNU)で発生した警察によるデモ参加者への襲撃事件については、冷静に受け止めている印象です。大学の学生団体と対立関係にある保守派学生(与党BJPとの繋がりもある)のメンバーが、このグループのうち2人が襲撃に参加していたと告白する証言も出るなど、情報が錯綜していました。

■抗議活動の参加者に対する州の措置を支持しますか?

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LOVE TRUMPS ALL

愛はすべてを凌駕する

インドのミレニアル世代は、政治参加への責任感が強く、自分の意思を持つ傾向がみられますが、恋愛となると話が変わってきます。プラットフォームでパートナーを見つけるチャンスを無駄にするくらいなら、政治に関する話題はほぼ皆無。沈黙を選びます。

回答者の60%以上が、デートやディナー、寝室で自分の政治的思想について話すことは好まないと答えました。

■「パートナーシップ」において重要なことは何ですか?

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「これは、70%が政治的意見の相違を呑み込めない条件とするアメリカ人ユーザーとは対照的」な結果であると、OkCupidのメリッサ・ホブレーCMOはQuartzに語りました。

OkCupidによる2つの調査によると、アメリカでは同様の政治的思想をもつパートナーという条件を優先した人は、2016年の27%から70%に急拡大したのです。

■出会ったばかりの人との会話のネタは?

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ではインド人は、デート相手との会話に何を求めるのか。調査によると、男女ともに「政治ネタよりも安全」な会話を選ぶようです。デート中は、音楽、スポーツ、映画などの安全で一般的なトピックにこだわることを好むと答えました。

ジャーナリストやメディア関係者はこれまで、インドのミレニアル世代は“覚醒しているのに、そうでないふりをしていると主張してきました。しかし今回の調査で、こうした言説は半分真実で、半分嘘だったことが示唆されました。彼らは政治参加に強い責任感をもっていますが、人生を決めるとまでは考えていません。政治よりも、目の前にした相手と、よいセックスをすることに集中した方が人生は豊かになるのか……。

This week’s top stories

インド注目ニュース4選

  1. グリーンカード、半数以上がインド人。アメリカでの半永久的な滞在と自由な就労が保証される永住権(グリーンカード)を獲得するインド人が急増しています。昨年の申請を拒否されたインド人は1,352人で、過去10年で最も少ない数字となりました。5万6,608枚がインド人に承認され、これは2019年に発行されたグリーンカードのほぼ半数に相当します。
  2. ヒンドゥーの神のために鉄道会社がしたこと。2月16日に運行を開始した、バラナシ〜インドール・ウジャインを結ぶKashi Mahakal Expressの一番列車に、シヴァ神のための座席が予約され、SNSで話題になりました。ヒンドゥー教は、月経中の婦人の触れたものを不浄とみなしますが、乗り合わせた乗客からは「この座席は月経中の女性に禁止されている」と皮肉を込めた投稿も……。
  3. インドの漁師に広がる生活苦。昨年のモンスーン季以降、全くと言っていいほど魚が獲れない地域に住む漁師たちは、返済の見通しもないまま借金を重ねる苦しい状況に追い込まれています。不漁の理由は2つ。気候変動によって、イワシの餌となる海洋プランクトンの生態に影響が出たこと。そして持続性を考慮しないめちゃくちゃな漁法を続けた結果です。
  4. トランプとモディは大して仲良くない。来週に迫ったドナルド・トランプ米大統領の初めての訪印。握手で微笑む両国のトップ、世界最大のクリケットスタジアム訪問、インド中の歓迎の様子など、両国の蜜月ぶりを誇示する報道が目立つことになるわけですが、2国の関係は実はそこまで順調ではありません。アメリカは貿易赤字を減らすためのプレッシャーをインドにかけ続けてきましたが、インドは強気です。カシミールの自治権はく奪に関するインドの強硬な態度はアメリカからインドへの影響力が弱まったことを示唆します。

今週の特集

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今週のQuartz(英語版)の特集は、「The purpose of B Corps(Bコーポレーションの目的)」です。日本ではあまり知られていませんが、環境やガバナンスなどの「よい会社」の基準として、世界で何千社もが認証を得ている「B Corp」。その真相をQuartzがレポートしていきます。

(翻訳・編集:鳥山愛恵)

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