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India Explosion
爆発するインディア
Quartz読者のみなさん、こんにちは。政治家のSNSはセンシティブで運用が難しいと思われますが、インドのモディ首相はテクノロジーを使いこなす手練れです。先日の「国際女性デー」でも発揮された、69歳の政治家のおそるべきパワーに迫ります。英語版(参考)はこちら。
ナレンドラ・モディ首相は、世界で最もテクノロジーに精通したリーダーの1人です。
与党インド人民党(BJP)のトップである彼は、マスコミとのやり取りを回避することで知られていますが、インターネットに場を移すと話は違ってきます。ソーシャルメディア(SNS)を介して熱心に、市民とのつながりを築いています。
モディがアカウントを有するのは、Facebook、Twitter、Instagram、YouTubeなどメジャーなSNSだけではありません。コンテンツディスカバリーサービスのStumbleupon(スタンブルアポン)、中国版ツイッターWeibo、ビジネス特化型SNSのLinkedInのほか、PinterestやTumblr、Flickr、そしてインド発のローカル言語特化型SNSのShareChatまで、手を広げています。
13億の人口を誇るインドですべての年齢層にアプローチしようと、インターネット上で可能な限りの策を講じています。
3月8日の世界女性デーでも、モディはそのSNSパワーを見せつけました。自分のTwitterアカウントを7人の女性にジャックさせ、その日、モディのアカウントを通じて多くのフォロワーに自らの考えを主張する機会を提供したのです。
選ばれたのは、起業家、農家、スポーツといった様々な分野で功績を残した女性たち。
モディは「この女性の日、人生と仕事に刺激を与える女性7人に私のアカウントを贈る。何百万人ものモチベーションを刺激することでしょう」とし、当日を迎えると実際に「中の人」が変わりました。
#SheInspiresUsのハッシュタグを付けた投稿が続々と発信され、貧困に立ち向かいボランティア活動を行う女性や社会活動家などが入れ替わりで、教育や社会問題の解決を訴えました。
結果、“プロモーション”は大成功を収めました。国内外問わず多くのメディアで取り上げられたのですから、SNSマスターとしての実力をアピールするには十分すぎるほどです。では、その影響力をチャートで見ていきましょう。
ツイッター
モディは政治家のアカウントとしては、アメリカのバラク・オバマ前大統領とドナルド・トランプ現大統領に次ぎ、世界で3番目に多いフォロワー数を誇ります。
●2020年3月時点のフォロワー数ランキング
モディは長年にわたって日々約2,000の投稿に返信、「いいね!」、リツイート、シェアすることでリーチを拡大してきました。
2019年1月10日にプラットフォームに参加して以来、地道にフォロワーを獲得し、今では、5,300万人に達しています。
●モディのTwitterフォロワー数推移
SNS分析ツールSocial Blade(ソーシャルブレード)によると、モディのツイートは平均1,584件のリツイートと8,019件の「いいね!」を獲得します。
引き続きカウントを運営すれば、今後5年間でさらに2,300万人のフォロワーが増えると予想されます。
フェイスブック
Facebookでも存在感を放っています。世界でも79番目に人気があり、62番目に話題になったアカウントでした(Social Bladeより)。
●モディのFacebookページ・フォロワー数推移
モディの支援者もプラットフォームを駆使して後押しします。昨年の下院総選挙に先立ち、BJP、モディ、そしてファンページは、2019年2月21日〜4月27日の2カ月間に108万ドル(約1億1,300万円)相当を費やし、1万8,454件のFacebook広告を出しました。
このデジタルキャンペーンは広範囲で効果が見られたようです。Facebookの広告ライブラリで検索すると、(選挙戦が本格化した)昨年4月から他のインドの政治家よりも頻繁に表示されたことが分かります。
インスタグラム
2014年11月に公式アカウントを開設してから、それほど目立った動きはありませんでした。
●モディのInstagramフォロワー数推移
しかし、時間の経過とともにその存在感を増し、今では、3,571万人ものフォロワーを獲得しています。
これはインドの国民的スポーツ、クリケットの人気選手ヴィラット・コーリ(Virat Kohli)とボリウッド女優のプリヤンカー・チョープラー(Priyanka Chopra)(それぞれ5,000万人以上のフォロワーをもつInstagramで最もフォローされているインド人)には劣りますが、政治家としてはトップです。
YOUTUBE
ユーチューブ
2007年10月に始まって以来、モディのYouTubeチャンネルは合計456万人のチャンネル登録者を獲得。これまで1万2,000件を超える動画をアップロードし計5億4,200万回の再生を記録しました。
2019年1月〜2020年2月にかけて、モディのチャンネルは毎月5万〜35万人のペースで新たなリスナーを獲得しました。これと同時に月間再生回数も増やし、どちらも昨年5月の選挙戦期間と8月の独立記念日にピークを迎えています。
●モディのYouTubeチャンネル登録者数推移
●再生回数の推移
YouTubeのモディ・チャンネル登録者数は、BJPのチャンネル(260万人)、首相官邸チャンネル(71万8,000人)を凌ぎます。
過去一番人気だったビデオはボリウッド俳優の「アクシャイ・クマール(Akshay Kumar)とモディの対話」で、1,660万回以上視聴されています。しかし、視聴者からは、これが有料のプロモーションで、モディのポジティブなイメージを押し付けるプロパガンダだとして批判を受けました。モディもBJPも釈明はせず、動画はまだ公開されています。
あなたがSNSを使っているなら、モディを愛そうが嫌おうが自由です。でも、あなたはモディの圧倒的なSNSパワーを無視することはできないのです。
This week’s top stories
インド注目ニュース4選
- 不謹慎でも関係ないYouTuber。恋路を邪魔する抑圧的な親など悪役を新型コロナウィルスに見立てたヒンディー語の際どい歌詞の楽曲がYouTubeで大量にリリースされています。このほかアジア人差別を煽る、悪意のある編集がされた動画が40万回再生されるなど、誤った情報拡散に加担しています。なお、12日時点でのインドの感染者数は73人。10日には国内で初めて、新型コロナウイルス感染による犠牲者が出ました。
- ミレニアルズ女性は不動産投資に興味津々。1980〜90年代に生まれたインドのミレニアル世代の女性たちは、ますます経済的自立を好む傾向があります。住宅ローン企業の調査によると、女性の回答者の57%近くが投資資産として不動産を望んでおり、株式28%、定期預金11%、ゴールド4%を上回りました。2ベッドルームの住宅が人気となっています。
- 陸空両用の「空飛ぶクルマ」がついに。10年以上前から商用販売が期待されていた「空飛ぶクルマ」の生産が現実味を帯びてきました。オランダ発のPal-V(パル・ヴィー)社が開発を手がけるこのクルマは、昨年12月に2021年のリリース予定を発表していました。今回の報道では、西部グジャラート州の工場建設計画の覚書が調印され、2021年までの操業開始を目指すとされました。
- 顔認識技術を使って1,100人を特定していた。2月25日、26日にデリーで発生した暴動の犯人を特定するため、政府発行の身分証明書(約10億人分)の顔写真が照合に提供されていたことが明らかになりました。これら個人情報の提供は、明確な法的権限なしに行われており、プライバシー侵害にあたると専門家は指摘します。
【今週の特集】
今週のQuartz(英語版)の特集は「AI’s power problem(AIの権力問題)」です。AIが人間が生み出した巨大なデータを基に開発されるなかで、人間の持つ「ステレオタイプ」が助長される問題が起きています。これを正すには、アルゴリズムだけではない、人間の関与が必要になる――。その最前線をQuartzがレポートします。
(翻訳・編集:鳥山愛恵)
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