Coronavirus:ミラノから届いた日本人の声

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Need to Know: Coronavirus

今知っておくべきこと

Quartz読者のみなさん、こんばんは。イタリアでは企業活動がほぼ全面停止となったこの週末。特別版ニュースレターとして、拡大するこの感染症の「今」をお送りします。

Need to Know: Coronavirus

Quartzの「Need to Know: Coronavirus」と題したニュースレターでは、感染拡大による社会的・経済的なインパクトをお伝えしています。

今日は、イタリア・ミラノ在住の日本人からの現地レポートを含め、「COVID-19の名付けに至る経緯」「衛星データからわかるマスク増産」などの最新事情をお届けします。

Quartz JapanのTwitterFacebookでも、米ジョン・ホプキンス大学の統計に基づく感染者数、累計死者数、そして累計回復者数を日々アップデートしています。あわせてチェックしてみてください。

That which we call Corona

「コロナ」の正体

当初、このウイルスは「武漢ウイルス」と呼ばれていました。やがて「武漢コロナウイルス」「中国コロナウイルス」と呼ばれるようになり、最終的に2月11日、WHO(世界保健機関)は正式名称として「COVID-19」と名付けました

一方、国際ウイルス分類委員会(ICTV)は「SARS-CoV-2」と命名しています。これは、今回のウイルスが2003年のSARS流行の原因となったウイルスと遺伝的な関連性をもつことに言及するためです。

WHOではSARS-CoV-2の呼称はほとんど使用されず、「Covid-19 virus」 もしくは「the virus responsible for Covid-19」と表現しています。

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Image: Tedros Adhanom Ghebreyesus, REUTERS/DENIS BALIBOUSE

こうした分類・名付けにおいては、広範な論争が起きました。公衆衛生上の危機と地政学的な競争が混じり合うなか、“名前”には単に情報を伝える以上の役割があることが浮き彫りになりました。

ドナルド・トランプ米大統領は「Chinese Virus」(中国ウイルス)と表現すると主張し、ホワイトハウスは中国系アメリカ人ジャーナリストを前に、「kung-flu」(カンフーインフルエンザ)と呼称しています。こうした状況を考えると、中立的な国際機関であるWHOがこのウイルスをどのような名称で呼ぶかは非常に重い意味をもちます。

WHOは、SARS-CoV-2という呼称について、「SARSの名称を使うことで不必要な恐怖を生み出し、意図せぬ結果を招いてしまう恐れがある」との見解をウェブサイト上で示しています。

Quartzに対する声明によると、国際獣疫事務局ならびに国際連合食糧農業機関との合意のもと、名称に関しては「地理的な場所、動物、個人または集団を指すことなく、発音可能で病気に関連するもの」であるべきとしています。しかしながら、WHOが名付けてきたパンデミックや伝染病のなかには、明らか特定の地域に言及したものも存在します(「中東呼吸器症候群」〈MERS〉、ナイジェリアの街の名前を関した「ラッサ熱」、そして「クリミア・コンゴ出血熱」など)。

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Image: A healthcare worker, who volunteered in the Ebola response, REUTERS/ZOHRA BENSEMRA

一方、SARS-CoV-2という名称が混乱を引き起こすと主張する人もいます。医学雑誌Lancetに掲載された手記において、中国人の共著者6人(うち3人は中国疾病管理予防センターの職員)は、ウイルス学の専門知識がない人にとってこの名は「今回のウイルスがSARSやそれと似た症状を引き起こす印象を与える」理由で、「ミスリーディングである」と主張しています。

著者らはさらに、SARS-CoV-2という名称は、SARSのパンデミックを経験している国々の人々が当時を思い出してパニックを引き起こし、社会的安定および経済的成長に悪影響を及ぼす可能性があると指摘。彼らは、代替案として「human coronavirus 2019」もしくは「 HCoV-19」と呼ぶことを提唱していました。

この論文に反応するかたちで、米国・香港・中国の12名からなる科学者のグループは、SARS-CoV-2は新型のコロナウイルスの事実に即した適切な名前であると主張しています。その主張によれば、SARSという病気そのものの名前に由来するのではなく、SARSの感染拡大と同様の傾向があることを示しているというのです。

彼らはこのようにも主張しています。「この種のウイルスの名前にSARSを冠することで、一般の人々の警戒心を保ち、新しいウイルスの発生時に迅速に対応する準備をすることができるだろう」

Coronavirus Diaries: letter from Milan

ミラノの老人たち

私はミラノに住み始めてから10年になりますが、このような世界的危機に直面したのはこれが初めて。この状況のなかで改めて、イタリア人の個性豊かな国民性を感じています。

イタリアでは3月21日現在で感染者数は47,021人、死亡者数が4,032人、死者は中国を超えるレベルになってしまいました(編註:3月22日時点で感染者数は53,578人、死亡者数は4,825人にも上っている)。なぜこの国で、ここまでの感染者数と、高確率な死者数を生み出す結果となってしまったのでしょうか?

イタリアを襲った新型コロナウイルス(COVID-19)は、若い世代にとっては風邪レベル、しかし、「高齢者」にとっては肺を直撃する「殺人ウイルス」の二面性をもちます。イタリアは、世界で日本に次ぐ高齢化社会。65歳以上の年齢は22.3%を占める(EU平均19.4%、2018年)。今回の新型コロナウイルスによって亡くなるのは、この65歳以上が大半であり、死亡平均年齢は80.3歳になっています。

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死亡率は70歳以上から12.3%と急激に上がり、90代になると22.9%に。なお、総死亡者の3分の2がロンバルディア州在住です。

今回の新型コロナウイルスでの悲劇の中心はミラノではく、そこから100kmも離れていない、そして決して大きくはない街であるベルガモ、ブレシア、クレモナ、ローディで起きています。ミラノも少なくはないのですが、人口比率で考えると決して多くありません。

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ミラノは大都市なので核家族だったり、病院も多いのでケアが届きやすいですが、周辺都市はミラノに比べて3世代家族も多く、高齢者と接する割合も増えます。

また、イタリアでの年金受給は、67歳から始まり、これは大部分の犠牲者と重なります。こういった余暇を楽しむ年金受給者は普段、どんな生活をしているのでしょうか?

イタリア人は、引退しても非常に社交的。みんなで朝からバーに集まり、おしゃべりやカードゲームを楽しみます。日曜日にコーヒーを飲みに行くと、その声の大きさや明るさには驚かされます。そして、夜になると家族みんなで食事をします。そういった日常生活は、政府が注意喚起を始めた3月上旬になっても、決して変わることはありませんでした。

少し危機感をもったのか、マスクをし始める高齢者ですが、それでも国民性は変わらない様子。ゴム手袋をしながらマスクを顎までおろし、タバコ吸いながら電話をするおじいさんたち、ゴホゴホしながらお互い大声で話すおばあさんたち…。

学校は早々に休校になりましたが、3月12日に全土の店舗閉鎖(食料品店と薬局以外)になる最後の最後まで、バーは営業され続け、お年寄りの社交場になっていました。

今回のウイルスは、高齢者のキーワードにプラスして、家族の絆がもたらす「多世代間の交流」が鍵になっているのでしょう。イタリアの家族の絆は、日本人が思っている以上にとても強いのです。毎週金曜日になると、多くの生徒が大きなかばんをもって登校し、学校が終わり次第、数時間かけてミラノから地方にある実家に戻ります。

イタリアで家を出て一人暮らしする平均年齢は、30.1歳。結婚し、家族ができれば家を出ることなりますが、頻繁に実家を訪れる習慣は変わりません。子どもや孫にとっては風邪並であるウイルスが、彼らの文化であるハグやキスによって感染が広がっていく可能性は非常に高いのです。そして、そこから感染した状態でバーへ行き、友人に移してしまうというような流れが起こってしまっていたのです。

似たような文化をもつスペインも日に日に感染者数と死者が増えていますが、国民性と文化がもたらす「パンデミック」は、あまりにも皮肉で、そしてこの状況をどう耐え抜いていくのか、その「国民一人ひとりの意識」が問われるのかもしれません。(松村崇弘/イタリア・ミラノ在住)

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GRAVITY

宇宙から見たコロナ

コロナウイルスのグローバル経済に対する影響は、取引所だけでなく、宇宙からも観察できます

軌道上の衛星が収集し、地球上で増強されたデータは、Orbital Insightのような企業が運用する機械学習装置にとって重要な役割を果たします。アナリストは、コロナウイルスが世界中の人流や物流にどのような影響をもたらしているかを知るためのエビデンスを集めています。

米コングロマリット3Mは、空気感染のまん延を防ぐマスクを生産しています。マスクへの需要が急上昇するなかで、同社は生産を拡大していると述べています。センサーが記録した3Mの製造ラインで働く従業員の足取りから、それが確かであることが確認できます。

■3Mの「個人安全部門」での徒歩交通量が急増

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ウイルス拡散を防ぐためは、間違いなく手の消毒剤が必要です。Orbital Insightは、特定の地域におけるモバイル端末数を示す匿名データを分析し、その場にいる人数を測定します。

ジェル状手指殺菌剤Purellを製造しているGojoは、より多くの労働力を工場に投下すると述べていますが、データもまた、2月の週末に労働力が増えていることを示しています。

■Gojoでの週末の稼働率が増加

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DEATH BECOMES HEARD

咳をしても一人

登場人物が咳をするようになる、最初は静かに。そして次第に激しくなり、いつの間にか死んでしまう——。サイト「TV Tropes」によれば、「不治の死の咳」が、コロナウイルスの大流行中における主な不安のもととなっているようです。

“死の咳”のたとえは、数百年も前から一般的です。その起源は正確ではありませんが、「プライドと偏見」「ジェーン・エア」「レ・ミゼラブル」「ラ・ボエーム」などが顕著な例でしょう。

あらゆる要素が、初めはどんなに小さく見えても、最終的はとても重要になる。それが物語の原則です。時代を超えて同じ特徴をもつ映画やテレビドラマを一部、紹介します。

  • フレンズ(1994〜2004)
  • LOST(2004〜2010)
  • バッフィ/ザ・バンパイア・キラー(1992)
  • ムーラン・ルージュ(2001)
  • ブレイブハート(1995)
  • コンテイジョン(2011)
  • マン・オン・ザ・ムーン(1999)
  • キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2014)
  • ことの終わり(1999)
  • ブライアンズ・ソング(1970)
  • インセプション(2010)
  • スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還(1983)
  • ザ・ロード(2009)
  • グレムリン2 新・種・誕・生(1984)

ESSENTIAL READING

知るべき最新状況


英語版(参考)はこちら

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