Africa:パンデミック下のM-Pesa

Africa Rising

躍動するアフリカ

Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週水曜日の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目してきた「アフリカ」の今をお届けしています。

REUTERS/NOOR KHAMIS
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アフリカの大手通信会社Safaricom(ケニア)とVodacom(南アフリカ)の2社が、アフリカ最大のモバイル送金サービスM-Pesaの買収手続きを完了したことを発表したのは今月6日のことでした。

M-Pesaは、2007年のサービス開始以来、英国の通信事業者Vodafoneの傘下にありました。

M-PesaのサービスのほとんどがSafaricomによって運営されており、Vodafoneはそれによるライセンス料を得てきました。しかし、今回の買収によって、SafaricomとVodacomの両社がM-Pesaの製品、ブランド、および将来の計画を完全に支配することになったのです。

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いまも「震源地」

アフリカの二大通信会社がM-Pesaを傘下におさめたということは、少なくとも当分の間、アフリカ大陸以外の新興市場をターゲットにする計画はないということを示唆しています(M-Pesaは、過去10年の間にインド、ルーマニア、アルバニアにサービスを拡大しようとしましたが、その試みはすべて失敗に終わっています)。

アフリカ大陸でのモバイル送金の市場の成長はとどまることを知りません。GSMAによる最新レポート(PDF)によると、サブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)では2019年、モバイル送金サービスのアカウント数が12%の伸びを記録しました。

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取引額も大きく、世界でモバイル送金サービスを通じて取引された6,900億ドルのうち、60%以上を占めています。アフリカ大陸はいまもって“モバイル送金サービスの震源地”なのです。

この成長の要因として、新規参入のしやすさも挙げられます。アフリカで最も人口の多い2国、ナイジェリアとエチオピアではモバイルサービスのオープン化が進んでいます。

アフリカ最大の通信事業者であるMTNは、2019年にナイジェリアでモバイル送金サービスを立ち上げ、隣国ガーナでもその規模を大幅に拡大させています。フランス語圏のアフリカで大成功を収めているOrange(Orange Money)も存在しています。

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送金と貧困

今世界を覆うCOVID-19による経済危機は、アフリカにおけるモバイル送金の市場にどんな影響を与えるのでしょうか。

世界銀行は、2020年のサブサハラ・アフリカへの送金流量は23.1%減の370億ドルになると予測しています。

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世界からアフリカ諸国への送金額の4分の1を、米国、フランス、イギリス、中国からの送金が占めています。それら富裕国に住むアフリカ系移民がパンデミックとロックダウンによって仕事を失い、あるいは給与をカットされることで、送金額は大きな影響を受けることになります。

この10年間でアフリカからの移民は大きく増加しました。フィンテックが発展し規制も緩和されました。結果、多くの開発途上国では、国家経済における海外からの送金の割合がますます大きくなっています。

世界銀行は2020年の国際送金額は前年比20%減の4兆450億ドルになると予想していますが、この20%の減少がさらなる貧困につながることは間違いないでしょう。

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「物理的に難しい」

海外送金による取引額が減少したところで、中〜低所得国の多くにとって海外からの送金が重要であることに変わりはありません。

渡航が制限され国際貿易はさらに混乱をきたし、多国籍企業の株価は下落するでしょう。海外からの直接投資は約35%減少し、新興国市場に割り当てられているプライベート・ポートフォリオ・フローは最大80%減少するともいわれています。

世界中に多くのディアスポラを抱えているナイジェリアは、2019年の送金額が238億ドルと、受取国として圧倒的に最大で、ガーナ(35億ドル)、ケニア(28億ドル)が続きます。南スーダンには13億ドルが送金され、GDPの34%を占めていました。

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そんななかで頼られるべき送金手続きのほとんどが現金を起点に行われているのは、皮肉な事実だといえるでしょう。今、送金業者は感染拡大を受け閉鎖されています。究極的に言うと、世界中の移民にとってサブサハラ・アフリカへの送金は「物理的に非常に困難」なのです。

(英語版〈参考〉:1, 2


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